鳥(1963)

 
 
まず、音楽がない。
効果音が鳥の鳴き声に羽ばたく音だけ
それが鳥に対する恐怖心をさらにあおります。
 
エンドマークもない、途中でプツッと終わってしまいます。
集団になって襲い掛かってくる鳥になすすべもない。
ただ逃げるしかない結末。
 
ペットショップに九官鳥を買いに来たメラニー(ティッピー・ヘドレン)を
店員だと間違ったふりをして
ラブバード(インコのつがい)はいないかと尋ねるミッチ(ロッド・テイラー)。
なるほど、こういうナンパの方法もあるのかと感心してしまいましたが。笑
翌日メラニーはミッチにラブバードを届けにボデガ湾の家まで行きます。
そこで一羽のカモメにメラニーが襲われてから
町は鳥の大群に襲われるようになっていきます。
 
暖炉から鳥の大群が飛び出すシーンは度肝を抜かれます。
目玉をくりぬいた殺人
家を壊す、車が爆発、鳥が集団になって暴れるとここまでやるのか。
いや、きっとできるのだろう・・・思わずそう信じてしまいます。
 
町の住民は鳥が襲うようになったのは
メラニーがやって来てからだ、メラニーを悪魔だと罵ります。
閉鎖的な小さな町でのよそ者に対する差別や偏見。
 
どうして突然に鳥は集団となり襲ってきたのか・・
家畜でありペットとしても飼われ、人間にとって害のなかったはずの鳥。
そのことを作品のなかでは一切触れていません。
 
「鳥」は「黒人」なのです、その考えが一番しっくりきます。
時代は公民権運動、白人たちは団結した黒人に恐怖したのです。
恋愛も姑も元カノもこの作品の重要な部分ではないのです。
黒人が自分たちと同じ権利や同じ力をもつことへの恐ろしさ
そのことを描いているように思えます。
 
確かに傑作でしょう。
この作品を見れば、間違いなく鳥が苦手になってしまいます。
しばらくは唐揚げも焼き鳥も食べられない、そんな気分。笑
 

 
【解説】allcinemaより
ある日、何の理由もなしに、鳥たちが人間を襲い始めた……。たった一つのシチュエーションをもとにあらゆる恐怖を引き出した、ヒッチコックのサスペンス・ドラマの傑作。一羽のカモメに額を傷つけられる予兆から、群れをなして襲い来るラストまで、恐怖映画のお手本のような演出が素晴らしい。93年にTVムービーで続編「新・鳥」が製作された。