狼たちの午後(1975)

 
 
シドニー・ルメット監督といえば
人物描写が秀逸であることで有名ですが
この作品などはまさにその極みではないでしょうか。
70年代のマンハッタンを映したオープニングも非常に良い。
 
銀行に強盗に押し入った3人組。
とたんに仲間のひとりがビビって逃げ出してしまいます。
その後もモタモタと金を奪っていくソニーアル・パチーノ)と
見張り役のサル(ジョン・カザール)。
あっという間に警察に包囲され
「モタモタしてるからだ」「ちゃんと計画は立てたの?」「さっさとしてくれ」と
従業員からまでダメ出しされてしまう始末。
 
無計画で頭が悪くすぐキレてしまうけれど、少しお人好しなソニー
パートナーの性転換手術のために銀行を襲ったソニー
家族を愛しているけれど、何かを憎んでいるわけではないけれど
何にも満足できない
何をやってもうまくいかない
そんな自分にイラついているのです。
 
だけれどギラギラしている。
そんなソニーに集まった野次馬は共感します。
そして自分たちの鬱憤さえも吐き出すように騒ぎ出します。
 
不器用に生きる人々。
だけれどとても人間臭い。
リアリティ。
 
誰が見ても、最初からうまくいくはずがないと分かる。
強盗に向いていない人間が強盗し行きつく結末。
 
しかしそれぞれの人物の真剣なバカさ加減がコメディ風となり
暗くなることなくラストまで鑑賞することができます。
 
これも実話なのですね。
人質がひとりも死ななかったのは良かったと思います。
 
ゲイの妻役のクリス・サランドンは当時スーザン・サランドンの夫だったとか
今となってはトリビアな話題も知ることもできました。
どうでもいいんですけれど。笑
 

 
【解説】allcinemaより
 無計画に銀行を襲った結果、篭城せざるを得なくなった二人の強盗。警官隊に包囲される中、やがて強盗と人質の間に奇妙な連帯感が芽生え始める。'72年に起きた実話を元に製作。それぞれのキャラクターと演ずる役者が良く、ある種良質の舞台劇をも思わせるルメットの演出がアメリカ社会の構図を浮き彫りにしていく様は見事。傑作。フランク・ピアソンの脚本はアカデミー賞受賞。