ボニーとクライド/俺たちに明日はない(1967)

 
 
 
疲れているときや気分の落ち込んだとき
コメディを見ても笑えないし
ホノボノとした物語は白けてしまう。
 
救いようのない残酷な幕切れで
もっと落ち込むのがいい。
(マゾなのでしょうね。笑)
そんなときはアメリカン・ニューシネマ。
 
性と暴力と犯罪。
有名すぎるラスト・シーンの「死のダンス」。
あそこまで撃たれたらすがすがしい。
 
フェイ・ダナウェイはこの作品のボニーが一番いいオンナ。
キツくて性格が悪くてファッショナブルでカッコいい。
対照的に家庭的な善人なんだけれども
ブスで勘に触るオンナ、ブランチ。
人は正義にだけ惹かれるわけではないのです。
 
ママの車を盗もうとしたクライド(ベイティ)とボニー(ダナウェイ)は
逢ったその日のうちに強盗をし、その日のうちに逃走
その日のうちにキスします。
ボニーとクライドは自動車整備士のC・W・モスと
兄のバック(ハックマン)とその妻のブランチと強盗団を組み
なんの計画もなく車を盗みコンビニや銀行を襲い人を殺します。
当然その無計画さのために、だんだんと逃げきれなくなっていきます。
 
とにかくフェイ・ダナウェイが良い。
つまらない日々の鬱積を晴らすためだけのように
小物の泥棒のクライドに付いて行ったボニー。
やがてアメリカ中の有名人となったふたり。
 
だけれどクライドの性的不能にボニーの欲求は満たされません。
バックの妻ブランチにもイラつくばかり。
突然ママに逢いたいとゴネる。
そこらへんの女性のこころの移り変わり、心理描写がとても巧い
もしほかの女優だったら、この作品に感情移入することなんて
出来なかったかも知れません。
 
実話なんですね。
昔、テレビでFBIが撮影したという
ボニーとクライドの本物の射殺シーンを見たことがあるのですが
映画とほとんど同じハチの巣状態でした。
 
当時は若者や貧困層だけでなく
警察官も心に鬱積を積もらせていたのでしょうか。
殺さずに逮捕することも出来たでしょうに。
 

 
【解説】allcinemaより
 不況時代のアメリカ30年代に実在した男女二人組の強盗、ボニーとクライドの凄絶な生きざまを描いた、アメリカン・ニューシネマの先駆け的作品でアカデミー二部門を受賞(助演女優賞エステル・パーソンズと撮影賞)。ケチな自動車泥棒だったクライドは、気の強いウェイトレスの娘ボニーと運命的に出会い、コンビを組んで強盗をやりはじめる。二人は順調に犯行を重ねていくが……。まるでスポーツを楽しむように犯罪を繰り返す二人の姿は、行いこそ異端であれ青春を謳歌する若者像そのままであり、犯罪者である事すら忘れ奇妙な共感を覚える。近年では、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」などに代表されるアンチ・ヒーロー物のオリジナルであり、他の追随を許さぬ一つの頂点を築いた傑作である。