「誰も演奏なんか聴いていないんだ まるで暴動だった ショウじゃない
ステージから降りると、まるで戦闘地帯をくぐり抜けたような状態で
まさに戦争だと思うよ
いつも何かをぶつけられながら歌い続けたり
微笑み続けたりするなんて 無理な話だ」(ジョン)
原題も「The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years 」
「エイト・デイズ・ア・ウィーク」(週に8日はビートルズ)とは
ビートルズ4枚目のアルバム「ビートルズ・フォー・セール」(1964)の
(レノン=マッカートニー名義の)B面1曲目
本作ではエンディング曲としても使用されています
今まで数々のビートルズのドキュメンタリー作品が作られていますが
アップル・コア(ビートルズによって設立された会社組織)の
公式作品として認められたのは「ザ・ビートルズ・アンソロジー」以来
約21年ぶりということ
確かに他の作品といえばジョンとポールの確執や
オノ・ヨーコを交えてのメンバーの不和に重点を置いて描いたものばかり
1962年のキャヴァーン・クラブ公演から
1964年の人気絶頂期を経て
1965年以降の曲作りや、私生活の変化
思いがけないバッシング、アンチ・ビートルズ
やがて傑作
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」 (1967)
が誕生するまでが描かれ
ロンドンのアップル・コアの屋上で行われた
事実上ビートルズの最後のライヴ・パフォーマンス
「ルーフトップ・コンサート 」(1969)で幕を閉じます
ロン・ハワードだけあって、見せ方もうまい
コメンテーターも、ビートルズと関わり合いのあった
どこかの音楽関係者が列を連ねるものではなく(笑)
実際のビートルズのメンバーの音声が使用され
ゲストも自称ビートルズファンである、エルヴィス・コステロ
ウーピー・ゴールドバーグ 、シガニー・ウィーバー という豪華さ
日本からは1966年のビートルズ来日時に密着撮影した浅井慎平が登場
来日時のメンバーのリラックスした姿をとらえた
貴重なショットが紹介されます
一方で武道館がコンサートに使われることへの批判や
ビートルズを歓迎しない人々も多くいたことがわかります
アメリカでは、ジョンの「キリストより人気がある」という
イギリスでのインタビューでの、誰が聞いてもただの軽いジョークが
大問題となり批判され、レコードは集められ焼かれるという事態に陥ります
リヴァプールで偶然巡り会った、サッカーより音楽が好きな4人の青年が
巨大なモンスターに飲み込まれそうになる
それでも彼らは、お互い助け合い荒波を乗り越えていきます
やがて大人になり
家庭を持ち、守るべきものが変わっていくのは当然だし
クリエーターとして新しい音楽のスタイルを目指すのも当然
だけど多くのファンが求めていたのは、年月が過ぎても
「ラヴ・ミー・ドゥ」や「抱きしめたい」の頃のビートルズでした
過酷なツアー、度重なるレコーディング
彼らの疲労は想像できません
そしてほんの数年で、かってのアイドルの面影は消えてなくなり
実際、悟りを開いたかのように老けてしまった
これを見たら、ほかのビートルズのドキュメンタリー作品が
全部ニセモノに見えてしまう(笑)
私たちがいつまでも高校時代の親友とつるんでいないのと同じに
ジョン、ポール、ジョージ、リンゴが、それぞれの道を歩んでいったのは
あたりまえのこと
そんなビートルズのメンバーひとりひとりを個人として認め
やんちゃで天真爛漫だった若き日々をやさしく見つめる
ファンにとっての特別な「あの日」を思い出させることに成功している
誰もが知ってるビートルズだからこそ
ロン・ハワードの力量が試された1作だと思います
【解説】映画.comより
ポール・マッカートニーやリンゴ・スターという存命のメンバーや、ヨーコ・オノ・レノン、ジョージ・ハリスンの未亡人オリビア・ハリスンら関係者の全面協力のもと製作された「ザ・ビートルズ」の公式ドキュメンタリー映画。監督をロン・ハワードが務めた。初期のリバプール時代から、1963年に始まった15カ国90都市166公演におよぶツアー、そして観客の前での最後の演奏となった66年のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パーク公演までのライブ映像を中心に、関係者などのインタビューを織り交ぜながら、ビートルズの曲の変遷、半世紀以上も愛され続ける彼らの人気の理由を探る。日本公開版は、66年の来日時のエピソードが長めに収めらた特別版となっており、日本武道館でのライブシーンや、来日時のビートルズの撮影を担当したカメラマン・浅井慎平のインタビューも盛り込まれている。