つぐない(2007)

原題はAtonement」(贖罪)

原作はイアン・マキューアンの同名小説(2001)で

年老いた女流作家の、少女期に犯した罪の追憶

評価の高い作品ですが

(映画評論家はどうしてイギリスの上流社会を描いた作品が好きなのでしょう)

特筆すべきは当時13歳だったシアーシャ・ローナンの圧倒的な存在感

思春期の浅はかさと、残虐さを見事に演じ切っています

おかげで妙な後味の悪さが残る作品

1935年、イングランド

裕福なタリス家の末娘ブライオニー(シアーシャ・ローナン)は

劇作家になることを夢見ている13歳

その夏、15歳になる従妹のローラジュノー・テンプルと弟の双子がやってきて

兄のリーヨンが帰ってくるため

ブライオニーの脚本で芝居をお披露目しようと稽古をはじめます

しかしローラはお高くとまり

双子は言うことを聞かず遊びにいってしまう

苛立ったブライオニーが窓から外を見ると

姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)と

家政婦の息子のロビー(ジェームズ・マカヴォイ)が口論していて

突然セシーリアが服を脱いで半裸の状態で噴水に飛び込み

ブライオニーはふたりの関係を誤解します

(実際はロビーが割って噴水に落ちた花瓶のかけらを取りにいっただけ)

セシーリアとロビーはケンブリッジ大学の同期でしたが

(医師を目指すロビーに姉妹の父親が学費を出していた)

卒業するとセシーリアは一方的にロビーを避けるようになり

ロビーはふたりの関係を修復したいと思っていました

兄のリーヨンが実業家(チョコレート王)の御曹司で

友人のポール(ベネディクト・カンバーバッチ と共に屋敷へやってくると

リーヨンはセシーリアにロビーも夕食に招くと言います

ポールは双子の弟に手を焼いているローラを見つけると

彼女をたいそう気に入ったようで

アーミ・アモ”という軍需用チョコを食べるよう勧めます

その頃ロビーはセシーリアに謝罪の手紙を書いていて

妄想で彼女の陰部を愛撫する文章をタイプすると

(謝罪の手紙ではなく)誤ってそちらの紙を封筒に入れてしまい

母親にパーティに出かけると挨拶をし、途中ブライオニーに会うと

あろうことかセシーリアに手紙を渡してほしいと頼むのです

ブライオニーは封筒を開けると、卑猥な内容にショックを受け

嫌悪感が燃え上がります

何も知らないふりをしてセシーリアに手紙を渡すと

双子に乱暴されたとやって来たローラ

卑猥だ、変態だと、手紙の内容をバラしてしまいます

警察に相談すべきだと言うローラ

セシーリアはロビーの手紙に感動していました

冷たい態度とは裏腹に彼女はロビーを求めていたのです

屋敷を訪れたロビーを迎えたセシーリアは彼を書斎に招くと

堪えきれず本棚の前で愛し合ってしまいます

ブライオニーが夕食に向かおうとすると

廊下にセシーリアの髪飾りが落ちているのを発見します

人のいる気配がする書斎を覗くと抱き合うふたりの姿

思わず「セシーリア!」 とブライオニーが叫ぶと

ふたりは何事もなかったように書斎を後にし

何事もなかったように夕食会に出席します

汚い、汚い、なんて汚い

しかもロビーを奪った姉を許せない

自分の気持ちを裏切ったロビーも許せない

 

そんなとき、食事の途中で双子が家出し行方不明になり

全員で捜索することになります

ブライオニーもひとり、真っ暗な庭を探していると

ローラが強姦されているところを目撃してしまいます

犯人はすぐ逃げましたが、「顔は見ていない」というローラに

私は見た、犯人はロビー、ロビーに間違いないと言います

セシーリアの部屋からロビーの手紙を探し出すと両親に見せ

やって来た警察にもロビーだったと評言します

明け方、双子を見つけて戻ってきたロビーはわけもわからず逮捕され

彼の無実を信じるのはセシーリアただひとりだけでした

4年後、第二次世界大戦中の北フランス

ロビーは(釈放を条件に)入隊しますが部隊から逸れてしまい

仲間とともにダンケルクを目指していました

思い出すのは看護師になったセシーリアのこと

ロビーは休暇中のロンドンでセシーリアと再会すると

セシーリアは17歳になったブライオニーから

ケンブリッジ大学には進学せず(姉と同じ)看護師になることを目指している

「会いたい」という手紙をもらったといいます

それはロビーの逮捕への謝罪だとわかっていましたが

セシーリアは許すことができませんでした

ふたりは別れ際に熱いキスをし

「戻って来たら、海辺添いのコテージで暮らそう」と 約束します

出征したロビーはセシーリアとの文通だけが励みでした

どうにかダンケルクに到着したものの、海岸は敵に囲まれ

救援を待つ兵士で溢れかえっています

(撃たれて倒れる馬のシーンは、CGでなくサーカスの馬の演技だそう)

その頃にはロビーの体力も精神状態も限界を越えてしまい

母親の幻影を見はじめ

仲間が分け与えてくれた食料さえ喉を通らなくなっていました

やがて目を閉じてしまうロビー

ブライオニーはローラとポールが結婚したという

しかもエリザベス女王の祝福まで受けたというニュースを見て

あの夜ローラを襲っていた(あるいは同意のうえ)のが

ポールだったことをはっきり思い出します

ブライオニーはふたりの結婚式に参列しますが

ローラは彼女に気付きながら目をあわせることさえしませんでした

ブライオニーは証言を訂正するため、セシーリアのアパートを尋ねますが

いくら謝っても(ローラが夫をかばうため罪は問えない)

姉の態度は辛辣なものでした

極度のPTSDにより帰還したロビーは、ブライオニーに怒りつつも

発言が偽りだったことを母親に話してくれと頼みます

約束するブライオニー

その後セシーリアとロビーは、念願の海辺のコテージを手に入れ

平和に暮らします

しかしそれはブライオニーの願望で、彼女の書いた小説の内容でした

実際のふたりは二度と巡り会うことなく

ロビーはダンケルクで敗血病になり

セシーリアは空爆による防空壕の水没で死んでいました

自分の嘘により引き裂いてしまったふたりを

今度は創作という嘘によって結びあわせる

でもいくら償っても、後悔も罪も消えることはありませんでした

 

【解説】映画.COMより

1935年イギリス。ある夏の日、タリス家の末娘ブライオニーは、姉セシーリアと使用人の息子ロビー・ターナーの些細ないさかいを目撃し……。ひとりの無垢な少女の嘘によって人生を狂わされてしまった一組のカップルの運命を描く、現代英国文学界を代表するイアン・マキューアンによる傑作小説「贖罪」(新潮社刊)を、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督&キーラ・ナイトレイ主演で映画化。共演にジェームズ・マカボイ、ロモーラ・ガライ、バネッサ・レッドグレイブら。

2007年製作/123分/イギリス・フランス合作
原題:Atonement
配給:東宝東和
劇場公開日:2008年4月12日