心と体と(2017)

原題は「TESTROL ES LELEKROL」(身体と魂について)

ベルリン国際映画祭金熊賞

国際批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞のトリプル受賞

アカデミー賞では外国語映画賞にノミネート

(受賞はセバスティアン・レリオ監督の「ナチュラルウーマン」)

冒頭、冬の森に佇む美しい鹿のつがいの姿と

対称的な食肉工場(屠殺場)の映像

運ばれてきた牛が首を切られて吊るされていく

本物の工場で撮影したしたのでしょうか、リアルですね

そこの財務部長で左腕が不自由なバツイチの中年男性と

新任で軽度自閉症サヴァン症候群か)の若い女性が

愛を見つけていく物語

他人から見て、あたりまえのことができない

本人が普通と思っていることが普通じゃない

わかりあえない

そういう人間が他人とうまくコミュニケーションを取る

ましてや恋愛関係を築くのは困難なこと

でも誰かを好きになることはあるんですね

財務部長のエンドレは、職員たちが休憩している裏庭で

ひとり佇む女性を気になってしょうがありません

ランチタイムに人事部長のバーリに彼女が誰か尋ねると

産休に入った品質検査官の代理職員としてやってきたマーリアだと答え

かなりの堅物だから気をつけたほうがいい

決して「マリカ」という愛称では呼ぶなと忠告します

エンドレはマーリアに挨拶に行き、お勧めのメニュー(煮込み料理)を教えると

「腕が不自由だと食べやすいからですね」

「マリカ愛称で呼んでも?」と聞くと「不愉快です」 とキッパリ

マーリアに振られたと思ったその1

マーリアが高級牛肉全てに「Bランク」を付けたことで

加工担当者がエンドレに苦情を言うと

エンドレはマーリアに理由を聞くことにします

「脂肪が2ミリ厚かった」「見てわかるのです」

「規定です」の一点張りで埒があかない

エンドレは諦めるしかありませんでした

翌日、工場の薬品棚から牛の「交尾薬」が盗まれていたことがわかり

警察の捜査が入ります

マーリアが入ったことにより、なあなあだった管理が厳しくなったのです

捜査官は犯人を割り出すため

職員のメンタルヘルス検診精神分析)をするようエンドレに提案します

ただし警察が用意した分析医で

分析医のクラーラは魅力的な女性でしたが

性的でプライベートに関する質問ばかりで

普段はおとなしいエンドレもさすがに半ギレしてしまいます

最後に「昨日見た夢」について聞かれると、「鹿の夢」を見たと

牡鹿森の中をうろつき、小川の水を飲んだりしていたと答えます

性的なことはない、「鼻と鼻が触れただけ」

職員の間では「昨日見た夢」が話題になり(笑)

マーリアの順番になると彼女も同じ質問を受けます

マーリアは森の中で雪中の葉っぱを雄鹿が鼻で探してくれて美味しかったこと

小川で水を飲み「鼻と鼻が触れた」ことを話します

クラーラはエンドレとマーリアのふたりを呼ぶと

(共謀して)からかっているのかと

マリーアにエンドレの「昨日見た夢」の話を聞かせます

マーリアは驚き、クラーラはふたりが嘘をついていないと感じます

精神科医なら彼女の発達障がいをすぐに見抜けるはず)

それからふたりは、毎日夢の話をするようになります

エンドレは思い切ってマーリアに連絡先を渡しますが

彼女は携帯を持っていないと言います

マーリアに振られたと思ったその2

マーリアはエンドレとの接し方に悩み、主治医に相談すると

携帯を買ってみては と、君は大学も出て頭がいい

そろそろ成人担当の医師に変えたほうがいいと助言します

早速スマホを購入したマーリアはエンドレに電話します

夢で逢いましょう」とエンドレ

翌朝エンドレはマーリアに「素晴らしかった」と告げ、ランチに誘います

一方で、交尾薬の窃盗犯を特定したと事務所にクラーラがやって来ます

犯人は人事部長のバーリである可能性が極めて高いというものでした

夢の話を再び聞くと「からかったんだ」と エンドレは話をはぐらかします

 

その後すぐに「犯人は誰だ」とバーリがやって来ます

「君の予想通り、シャーンドルだった」「事件は解決だ」とエンドレ

エンドレは軽薄そうに見えたシャーンドルを面接で不採用にしますが

人手不足のためバーリが採用

しかしバーリは自分の妻がシャーンドルと寝ているという噂を聞き

シャーンドルに濡れ衣をきせようとしていました

交尾薬を盗んだのも(EDなのだろう)妻を取り戻したいだけだったのです

エンドレに罪を告白するバーリ

 

エンドレはバーリに警察に訴えはしないと

シャーンドルには素直に謝罪し、これからは友人になろうと

飲みに誘うのでした

ランチの日、エンドレはマーリアに

夢の中で一層近づけるよう、一緒に眠ることを提案します

マーリアはエンドレの部屋に行き

(床に寝ている)エンドレと並んでベッドに入りますが

お互い意識し過ぎて眠れません

寝るのを諦めて、カードゲームをすることにすると

エンドレはマーリアの驚異的な記憶力を知ります

エンドレとの会話も全て覚えていて

好意を持たれていると感じたエンドレマーリアの腕に触れようとすると

マーリア反射的に拒絶してしまいます

マーリアに振られたと思ったその3

エンドレは一人芝居のピエロにはなりたくないと言い

ふたりの距離は再び離れてしまいます

さらにエンドレは憂さ晴らしに(同僚で元恋人らしい)女性を呼び

セックスが終わると深夜にかかわらず女性に帰れという外道ぶり(笑)

エンドレ冷たい態度混乱したマーリアに主治医は

彼に好意をもっているなら

彼を知り触れる努力もしなくてはとアドバイスします

マーリアは公園でカップルを観察したり、ポルノ映画を見たり

ぬいぐるみを使ったり、工場の牛で「触れる」練習(笑)

CDショップで「恋をしたときに聴く」を探すため

大量のアルバムを試聴し(結局店員おススメのCDを買う)

掃除のおばちゃんから「男にモテるコツ」を伝授され(笑)

レゴを使って会話のシュミレーションとイメージトレーニン

ランチタイム、マーリアはエンドレのところに行き

マーリアの「今夜は泊まれます」の突然の告白に、エンドレは「???」

(バーリの手前もあり)「理解できない」の答えに

マーリアはパニックになりその場を去ります

その夜マーリアは、浴室のガラスを割ると手首を切り自殺をはかります

しばらくすると携帯が鳴り携帯の番号を知ってるのはエンドレだけ)

慌ててバスタブを飛び出すマーリア

 

(昼間の言動を後悔した)エンドレは他愛のない挨拶をすると

思わず「あなたを愛している」と口走ってしまいます

するとマーリアも「私もあなたを愛しています」と

今から会いに行ます、でもちょっと待って

自ら傷の応急処置をし(こういう対処は早い)病院で手当てを受けます

医師から入院するよう言われますが

エンドレの部屋に行き(こうと決めたときの行動も早い)

ふたり愛し合うと、深い眠りにつくのです

 

翌朝、ふたりは一緒に朝食を食べ

マーリアは今まで見せたことのない笑顔を見せます

そしてふたりはお互い夢を見なかったことに気付きます

動物が生きていくため絶対的必要な、性・食・睡眠というテーマと

誰もがもっている何かしらの欠点

これから先もふたりには、様々な壁が待ち受けていることでしょうが

いつまでも助け合い、認め合ってほしいですね

 

それは障がい者だけでなく

どんなパートーナーにも言えることですけど



 

【解説】映.COMより

長編デビュー作「私の20世紀」でカンヌ国際映画祭カメラドール(最優秀新人監督賞)を受賞したハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディが18年ぶりに長編映画のメガホンをとり、「鹿の夢」によって結びつけられた孤独な男女の恋を描いたラブストーリー。ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働く若い女性マーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいた。片手が不自由な上司の中年男性エンドレはマーリアのことを何かと気にかけていたが、うまく噛み合わない。そんな不器用な2人が、偶然にも同じ夢を見たことから急接近していく。2017年・第67回ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞をはじめ4部門に輝いた。

2017年製作/116分/PG12/ハンガリー
原題:Testrol es lelekrol
配給:サンリス
劇場公開日:2018年4月14日