アウトフィット(2022)

原題は「The Outfit」

アウトフィットとは(出かける際に必要な)「衣装ひとそろい」のことで

アル・カポネがボディーガード達のことを

「アウトフィットのひとつ」とマスコミに話したことから

シカゴ・マフィアをそう呼ぶようになったそうです

「衣装」とマフィアの「アウトフィット」をかけたタイトル

シカゴでマフィアを得意先にしている

マーク・ライランス演じる英国人の紳士服テーラー

自称「裁断師」のレナード・バーリングが

マフィア同士の抗争と殺人事件に巻き込まれてしまうという

戯曲風の密室サスペンス

使い古された技法ではありますが

マーク・ライランスが安定の巧さ

いかにも英国的紳士、いかにも熟練した職人

女はこういう仕事が出来る男を見るのが好きなもの(笑)

さらに上等なスーツが欲しくなります

レナードはロンドンにあるサヴィル・ロウという

オーダーメイドの紳士服店通りでハサミひとつで修業し

ビスポーク(お客様とじっくりと話し合いながら

お客様にとってベストなモノをつくり上げること)として店を持ったものの

(既製品の)ジーンズに仕事を奪われてしまったと

シカゴにたどり着いた理由を自嘲します

しかもシカゴで高級スーツをオーダーできるのはマフィアくらいのもの

レナードの店にはアイリッシュマフィアの

ドロップボックス(ここでは汚金などの一時保管場所)が置かれ

レナードが(死んだ)娘のように可愛がっている

受付嬢マーブル(ゾーイ・ドゥイッチ)は

マフィアのボス、ボイル(サー・サイモン・ラッセル・ビール)の馬鹿息子

リッチー(ディラン・オブライエン)と付き合っています


ニューヨークを五大ファミリーが支配しているのと違い

シカゴを支配しているのはアウトフィットひとつだけ

 

ここでは、アウトフィットの下部に

ボイル率いるアイリッシュ系マフィアと

「ラ・フォンテーヌ」率いるフランス系マフィアの2大組織があり

縄張りを巡り抗争が行われていました

ある夜、 フォンテーヌ一家との銃撃戦で撃たれたリッチーを

ボイルの片腕フランシス(ジョニー・フリン)が店に運び込んできます

フランシスはレナードにリッチーの傷口を縫い手当てするよう指示すると

FBIによりアウトフィットの作戦が録音された

カセットテープが入ったブリーフケースを隠すよう渡し、出かけてしまいます

(この時代にカセットテープが発明されていたかどうかは謎 笑)

目が覚めたリッチーは

組織にはFBIやフォンテーヌ一家に通じる情報屋「ラット(ねずみ)」がいて

カセットテープにはラットの正体が明らかになる証拠が録音され

ラットはフランシスに違いないと打ち明けます

レナードは「実はラットの正体は私です」と

(冗談に見えず一瞬本気になる)ジョークを言い

やがてフランシスが戻ってくると、リッチーはお前がラットだと

フランシスと口論になります

レナードが失血のための妄想だと言い訳するものの

リッチーは親父が死んだらボスになるのは俺だと

「お前の父親はトマト売り、何者にもなれないまま死んだ」 と

(マフィアの世界では血縁が最も重要)

フランシスに銃を向けると、フランシスはリッチーを殺してしまいます

そこにボイルがボディガードのモンクとともに到着し

リッチーの遺体を隠すようレナードに命令するフランシス

遺体をベンチ型ボックス(蓋つき収納)に入れると

何食わぬ顔でボイルとモンクを迎え

リッチーがテープを持って出て行ったと

リッチーを探しに行くと出かけます

ヒッチコックの「ロープ」では

このベンチ型ボックスからロープが垂れていましたが(笑)

ロイドはリッチーの冬物のコートがハンガーにかかったままなのに気付きます

いくら息子が馬鹿でも、この寒空にコートなしで出て行く奴がいるか?

レナードは「リッチー様になにがあったかというと・・」

フランシスが撃ったのです」 と話します

 

その時フランシスがメイブルを連れて戻ってきて

メイブルのアパートにリッチーの血痕があったと嘘をつき

彼女はリッチーとデキていて、情報を得ていたに違いないと言います

ロイドはモンクにメイブルを拷問して吐かせるよう命じます

そこでレナードはシカゴに来た本当の理由はジーンズのせいじゃない

サヴィル・ロウにあった店舗兼自宅が火事になり

妻と娘が死んでしまったからだと話し始めます

 

レナードのあまりにもうまい語り口に聞きいってしまい

拷問を忘れてしまうロイド(笑)

そこに電話が鳴りレナードが出ると「わかりました」と答え

「リッチー様からです」と住所を書いたメモをロイドに渡します

すぐにリッチーを迎えに行こうとするロイドに

フランシスはここに残ると主張します

ロイドが出かけるとレナードは

「ラットの正体はメイブル」だと教え、フランシスに

ボスが戻って来て 息子の死体を見つける そして全員殺されるか」

それとも「ラ・フォンテーヌにボスの行き先を教え

ボスを殺させ 後継者になるか」 選択肢を与えます

フランシスは自分がボスになることを選ぶと

メイブルはラ・フォンテーヌに電話し、ロイドの居場所を教え

さらに証拠のテープを売ることを申し出ます

 

フランシスはお金を受け取ったらラ・フォンテーヌを殺すつもりで隠れます

合図は「全額ある」

1時間後(ロイドを殺した)ラ・フォンテーヌとボディガードが現われ

約束通りお金を差し出すと

レナードはフランシスに合図を送ろうとするメイブルを遮り

「私たちを騙す気ですか お金はどこです」と

ラ・フォンテーヌに奥に男が隠れていることを合図します

銃を構えて飛び出したフランシスはボディガードに撃たれ

テープを受け取ったラ・フォンテーヌは去っていきます

 

実はそのカセットテープもレナードが用意した偽物で

本物のテープはレナードが隠し持っていて

さらにフランシスやラ・フォンテーヌが有罪判決となる証拠の

全会話を録音していたのです

レナードはメイブルにFBIにテープを渡すよう託すと

(ラ・フォンテーヌから受け取ったお金で)どこかで夢を叶えるよう促します

 

メイブルが帰ると、身支度し愛する店に放火するレナード

するとフランシスがレナードを殺そうと発砲

(死んでいなかったあるある 笑)

レナードは炎の中、上着を脱ぎ袖をまくり淡々と語ります

(両腕に入れ墨がぎっしり 笑)

自分も若いころはフランシスと同じ殺し屋だったこと

やがて凶悪な犯罪に嫌気がさし、ギャングから逃げたこと

修業をして店を持ち、結婚し、娘を儲け、家族を始めたこと

だけどかつてのギャングに見つかり

店を焼き払われ、妻と娘が殺されたこと

そして弾切れになってナイフで襲いかかってた

フランシスの首をハサミで一突きします

(血を隠すための)黒いコートをを羽織ると

はじめてカメラは店から出るのでした

会話術だけでシカゴの2大マフィアを潰したこの男は誰なのか

男の話がどこまで嘘か本当かさえもわからない

彼が上等なスーツを仕立てることが出来るという真実以外は

 

 

【解説】Netflixより

アカデミー賞に輝いたマーク・ライランス主演、ゾーイ・ドゥイッチとジョニー・フリン共演。グレアム・ムーアが贈るサスペンス。

1950年代のシカゴ。仕立店を拠点にマフィア組織内の争いが展開。店主のイギリス人裁断師は、はからずも危険な状況に巻き込まれていくことに...。

出演:マーク・ライランス、ゾーイ・ドゥイッチ、ジョニー・フリン

2022 | 年齢制限:16+ | 1時間 45分 | ヒューマンドラマ