グッバイ、リチャード!(2018)

原題は「THE PROFESSOR」(教授)

末期ガンの宣告を受けた大学教授の余生の過ごしかた

死期の迫った主人公が、どう生きるべきか

多くの映画で扱われるテーマのひとつですね

市役所の課長が、胃癌で余命わずかと知り

市民公園の整備に注ぐ姿が描かれた黒澤明の「生きる」

 

産まれてくる我が子のために自分の姿をビデオに撮り

遺言”を通して、妻との絆を取り戻していく「マイ・ライフ」

 

余命2か月の宣告を受けた23歳の人妻が

「死ぬまでにしたいこと」をノートに書き出し

ひとつずつ実行してゆく「死ぬまでにしたい10のこと」

 

自分の美しい姿だけを覚えていて欲しいと

1ヶ月ごとに恋人を変える 「スウィート・ノベンバー

 

脳腫瘍で余命わずかな少女と、日本兵の霊が親友少年の

儚い恋を描いた「永遠の僕たち」

 

偶然同じ病室になった初老の男ふたりが冒険の旅に出る

最高の人生の見つけ方

すぐに思い出せるだけでも、たくさんの名作がありますが

 

本作のリチャード(ジョニデ)は、なにかを成し遂げるわけではない

家族とともに過ごす感涙なラストでもない

 

医師から宣告されたのは余命半年、延命治療して1年か1年半

家族に打ち明けようとしたその日、娘は自分がレズだとカミングアウト

妻(ローズマリー・デウィット)は上司の学長と不倫していると告白

なんだ、そんなことか

死ぬより悩むことか?よっぽどマシじゃねえか

勝手にやってくれ

だけど不倫相手がいけすかない学長とは、妻の趣味を疑う

 

それからというもの健康第一にオサラバ

理想的な夫とも父親とも、尊敬される大学教授ともオサラバ

精一杯無駄で適当な時間を過ごします

吸いたい時にタバコを吸い、飲みたい時に酒を飲む

やりたい授業だけやり、生徒からマリファナを買う

パブでウェイトレスとトイレでヤッてみる

ゲイの男子学生も試してみるコンビニエンスなセックス

パーティの席ではタマ3つの学長に毒を吐き、学長の妻にキスをします

それらの行為は浅はかで、自暴自棄なのだけど

リチャードにとっては、たぶん「けじめ」なんですね

 

そんな中、リチャードの同僚で長年の親友

ピーター(ダニー・ヒューストン)だけは別れを悲しみ

本人以上にメソメソしてしまいます

ピーターの熱い思いにリチャードも自分が考えている以上に

悲しくなってしまう

恋人(女の子)と破局した娘を慰め、恥ずかしながらハグをする

「お前はそのままでいい、信じた道を行け 愛してる」

もしかしたら、これが父親らしい愛情を注いだ最初かも知れない

今までの人生は全て嘘つき

なんて無関心だったのだろう

段々と弱っていく身体、やがて死期を感じたリチャードは

愛犬を連れ(道連れではないと願いたい)

右でも左でもない、道のない死後への旅に向かうのでした

 

映画的な評価は中、それなり

もうすこし皮肉を効かせて欲しかったところですが

90分にテンポよく収まっているのは見やすいし

ジョニデは素顔がやっぱりいい

50代になってからはちょっと、サム・ペキンパーを意識してるか

目指しているようにも見えますけど(笑)

 

 

【解説】allcinema より

ジョニー・デップがガンで余命半年の宣告を受けた大学教授を演じるコメディ・ドラマ。突然の余命宣告に戸惑いながらも、何にも縛られずに生き始めたことで自分にも周囲にも様々な気づきをもたらしていく姿をユーモラスな筆致で描き出す。共演はローズマリー・デウィット、ダニー・ヒューストン、ゾーイ・ドゥイッチ。監督はデビュー作となる前作「グッバイ、ケイティ」が高い評価を受けた新鋭、ウェイン・ロバーツ。
 愛する妻と娘と何不自由ない生活を送る真面目な大学教授のリチャード。幸せな人生だと思い込んでいたところ、突然ガンの宣告を受け余命6ヵ月と告げられてしまう。その気持ちの整理も付かぬうちに、今度は妻から不倫の事実を打ち明けられてしまう。動揺しつつも、もはや失うものは何もないと開き直り、これからはやりたいように生きると決意するリチャードだったが…。