リリーのすべて(2015)

 
原題は「The Danish Girl」(デンマークの娘)
 
世界で初めて性別適合手術を受けた
リリー・エルベ(1882~1931)の物語
 
リリーはトランスジェンダーということ
私には作中のリリーは二重人格に見えました
 
ちなみにゲイよりもトランスのほうが
異形視されるのだそうです
 
 
風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)と
子どもにはなかなか恵まれませんでしたが
誰もが認める仲の良い夫婦
幸せな生活を送っていました
 
ある日、ゲルダに頼まれ女性モデルの代役を務めたアイナー
その日をきっかけに、自分の中にあった女性に目覚めてしまいます
やがてアイナーの人格でいるときよりも
リリーいう女性として生活していく比率が増していきます
 
当時はLGBTであることは理解されず、精神病扱いでした
しかし運命なのか「男性器を摘出できる」という教授に
リリーは巡り合うことができます
 
 


実際の夫婦は40代で、リリーは男性器の摘出だけでなく
卵巣や子宮の移植手術を受けているそうです
臓器移植のノウハウが成立するより遥か昔であり
当然、拒絶反応でリリーは落命してしまったそうです
 
妻のゲルダバイセクシャルだったという説もあり
それなら最後までリリーと暮らしたことも納得がいきます
ゲルダの悩みは、リリーは他の男性とデートしたり
アイナーの時ように自分だけを愛してくれないということでしょうか
 
 


ハンスがふたりを支える理由は
私の妄想力を持ってきても、よくわかりませんでした(笑)
彼はゲルダとアイナーのどちらが好きなのでしょう
実は彼もトランスジェンダーで、こういう世界の人は
特定のパートナーとだけで恋愛するわけではない
(と、私は思う)のでしょうか
 
 
エディ・レッドメインの両性的な容姿は特筆すべきところで
演技も素晴らしいのですが、なぜかしっくりはきませんでした
ボーイズ・ドント・クライ」(1999)を見た時ような
悲しみや苦しみに、あまり共感できなかったのです
 
 
それはやはり「ボーイズ・・・」では
監督がレズビアンだからかも知れませんが)
性同一性障害者を、ひとりの人間として描いているのに対し
 
英国王のスピーチ」(2010)も手掛けた
本作のトム・フーパー監督の視線は
トランスジェンダーをまるで何かの病気か
障がい者のように捉えているように感じたからです
そうです、病気の夫を支える妻の物語なのです
 
 
 
事実、アメリカのトランスジェンダーの人たちからも
「あまりにも商業的だ」と批判を受けたということです
 
そのかわりといってはなんですが、LGBTものは苦手という方でも
ビジュアル的にも、夫婦の愛情物語としても
見やすい作品に仕上がっているのではないでしょうか
 
そしてエディ・レッドメインのような華奢で女性的な男性を
好きだという女性も結構いるのではと思います
 

 
【解説】allcinemaより
世界で初めて性別適合手術を受けたデンマーク人、リリー・エルベの実話を基に、ふとしたきっかけから男性であることに違和感を抱き始めた主人公の苦悩と、そんな夫を献身的に支え続けた妻の葛藤と感動の愛の物語を描いたドラマ。主演は「レ・ミゼラブル」「博士と彼女のセオリー」のエディ・レッドメイン。共演に本作の演技でみごとアカデミー助演女優賞に輝いた「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」「コードネーム U.N.C.L.E.」のアリシア・ヴィカンダー。監督は「英国王のスピーチ」「レ・ミゼラブル」のトム・フーパー
 1926年、デンマークコペンハーゲン。風景画家のアイナー・ヴェイナーは結婚して6年目になる肖像画家の妻ゲルダと仲睦まじい日々を送っていた。ある日、ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を引き受けたのがきっかけとなり、自分の中に潜んでいた女性の存在を自覚するようになる。最初は遊びのつもりでアイナーに女装をさせ、“リリー”として外に連れ出し楽しんでいたゲルダも、次第にアイナーが本気だと気づき激しく動揺するが…。