悲しみが乾くまで(2008)




突然パートナーが死んだらどうなるだろう
全く想像がつきません

でも葬儀や、あらゆる事後処理に追われ
しばらくの間は、死んだという実感が
悲しみはわかないのではないでしょうか

ヒロインもそうでした
最初は冷静のつもりでした
しかし次第に情緒不安定になっていくのです


ブライアンの葬儀にやってきた親友ジェリー(デル・トロ)
趣味の悪いスーツに、人相も悪い
思わずブライアンを殺した犯人かと思わせるほど

オードリー(ハル・ベリー)は「あなたが憎かった」と言います
ジュリーは麻薬中毒で、廃人同様の暮らしをする男でした
なのにブライアンはオードリーの反対を押し切り
ジュリーを支えていたのです





面倒見の良い人だったのでしょう
彼の死んだ原因も、見知らぬ夫婦喧嘩の仲裁に入り
撃たれてしまったのです


自分より夫の素顔を知っているジュリー
オードリーはブライアンとの思い出を
ジュリーと共有したかったのかも知れません

それとも、自分よりダメな、自分より苦しんでいる人間を
支える事で喪失感を緩和したかったのかも知れません

ガレージ修理依頼を理由に、一緒に暮らそうと提案します
ジュリーに子どもたちも懐き
セラピーの女性からも気に入られます
隣に住む男性からは仕事の誘いまで受けます

ジュリーは誰にでも誠実で、やさしいでした
でも、その気の弱さで麻薬にハマり
手を切れなくなってしまったのでしょう


逆にオードリーの行動はエスカレートしていきます
子どもたちに八つ当たりしたり
ジュリーにも「お前が死ねば良かったのに」と叫んだりします

一方で不眠症だから、眠るまで隣にいてほしいと誘ったり
「麻薬って気持ちいいの?」と尋ねたり
挑発するような行為をしてきます





しかし親友の妻に手を出すわけがない
ブライアンを裏切るわけにはいかないのです

そしてついに麻薬を使ってしまうジュリーですが
その姿は本当に麻薬使ったんじゃないかというくらい(笑)
ラリったデル・トロの腐れ感が凄すぎます
本物の麻薬中毒患者は見たことありませんが
100%こうだと信じれます

こんな姿を見たら、誰でも更生させねばと思うでしょう
オードリーはジュリーに施設に入るよう提案します


ラストの集会での、麻薬を探し求めるリアルな夢の話
「触れない」という一言は、麻薬だけではなく
ジュリーに対する決心のようにも感じました





この作品、男性にはわかりにくいかも知れませんが
どこかで線引きすることが、女性独特の癒され方だということを
描いているのだと思います
(「女ってメンドクセエ」って声が聞こえてきそう)



【解説】allcinemaより
ある愛の風景」「アフター・ウェディング」のデンマークの俊英スサンネ・ビア監督がハリウッドに招かれ初めて英語で撮り上げた喪失と再生の物語。突然の悲劇で最愛の夫を失った女性が、夫の親友を心の支えに立ち直ろうとする過程で繰り広げられる葛藤と男女の心の機微を繊細に描き出す。主演は「チョコレート」のハル・ベリーと「トラフィック」のベニチオ・デル・トロ
 愛する夫ブライアンと2人の子どもに恵まれ幸せな結婚生活を送るオードリーだったが、ある日そのブライアンが路上で喧嘩に巻き込まれ射殺されてしまう。葬儀の当日、オードリーはブライアンの親友ジェリーの存在を思い出す。弁護士だったジェリーはヘロインに溺れて転落し、誰もが離れていく中、ブライアンだけは見放すことなく面倒を見てきた。そんなジェリーを疎ましく思っていたオードリーだったが、彼がブライアンのことを誰よりも理解していることを知り親近感を持ち始める。その後、喪失感に苛まれる日々に苦しむオードリーは、その日暮らしのジェリーに、しばらく自分の家で一緒に暮らしてほしいと申し出るのだった。