東大駒場キャンパス第900番教室における
三島由紀夫と1000人以上の学生たちとの
伝説の論会を描いたドキュメンタリー
ナレーターに東出昌大を起用しているのは
名前に東大が入っているから(たぶん 笑)
程度の知識しかなくて
エキセントリックで過激な思考の持ち主だと思っていたのですが
確かにそういう一面も伺わせるものの
実に穏やかで、品と育ちの良さは隠し切れない
東大全共闘に単身で、ある意味命がけで挑んだ討論会だけれど
彼の学生たちを見る眼差しは暖かく、「敵」というより可愛い「後輩」
新しい時代の流れ、ムーブメントを決してけなすことはなく
自分の主義主張をユーモアや時にエロを交えながら
若者に「おじさん」の古い考えを率直に伝えます
そんな三島氏を論破しようとするのが、全共闘の芥正彦氏
今でいう「ひろゆき」さんタイプというのでしょうか
にこやかで、飄々としながら
相手の言葉の帳尻をとり、確実に窮地に追い込む術を知っている
友だちにはなれないタイプだけど、赤ちゃん(女の子)は可愛い
母親と離れて、あんな場所に連れ出されても泣かないのは
普段から面倒を見ていて、子煩悩な証拠
彼も見た目や言動じゃわからない、本当はやさしい男なのだろう
ただ討論そのものは一般論とはかけ離れた
超インテリ特有の知識をひけらかした屁理屈(失礼)の掛け合いで
哲学、文学、学術、それぞれの解釈を引用しているので
理解不能(私だけ?笑)
「三島はこういうことを言っているんだ」など
わかりやすい解説のおかげで助かった(笑)
右翼も左翼も、保守派も改革派も
進む道や行きかたは違うけど、目的地は同じ
世界中の若者が「国をよくしたい」という信念のもと戦った
それを無意味で馬鹿な行動にしか見えなくしたのは
マスコミが作り上げた虚構かも知れない
その証拠に、数年のうちに卒業して社会の一員となった
ゲバ棒にヘルメットに火炎瓶、コロナでもないのにマスク姿の
彼らの多くは立派な大人になってるんだから(笑)
この論会の翌年、1970年11月25日
三島氏は楯の会隊員4名と自衛隊市ヶ谷駐屯地(現防衛省本省)で総監を監禁
バルコニーで自衛隊の決起(クーデター)を促す演説したあと
割腹(享年45歳)
これには国と天皇を愛するあまりクーデターを起こししてしまう
「日本のいちばん長い日」を思い出すのですが
偶然にもこの3日前、「日本の・・」の原作者でジャーナリスト
大宅 壮一(おおや そういち)氏も亡くなっているのですね
なにか関連があるのではないかと思ってしまいます
(調べる気力はない 笑)
どこまでカットするか、編集されているかが
ドキュメンタリーの見せどころですが
(そこのうまさはNHKにかなわない)
ひとつの昭和史として面白かったです
ただ芥氏には東大の頃の寝起きスタイルでいてほしかった
なんで妙にカッコつけているんだよ(笑)
【解説】allcinema より
1969年5月13日。天皇主義者を自任する天才作家・三島由紀夫は、血気盛んな東大全共闘の若者が待ち受ける駒場キャンパスの900番教室に単身乗り込み、1000人を超える学生を前に真摯かつ白熱の討論を繰り広げた。本作は、当時唯一取材を許されたTBSに残されていた貴重な映像をもとに、芥正彦をはじめとするその場にいた参加者へのインタビューと平野啓一郎や内田樹ら識者の解説を織り交ぜ、伝説の討論会の全貌を明らかにしたドキュメンタリー。