ジョーカー(2019)

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このレビューは

この作品のファンのみなさま

および高評価をしている方は

私個人の意見のせいで、場合によっては気分を害するかも知れないので

決して読まないでください

 

原題も「JOKER

ヴェネツィア映画祭で金獅子賞

ホアキン・フェニックスはアカデミー主演男優賞受賞

ずいぶん話題にもなりました

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が、前評判がよくあまりにも期待しすぎたせいか

私の評価は「普通」

ホアキン・フェニックスアカデミー賞

とっくに取っていていい俳優だったのでむしろあたりまえ

(今まで受賞していなかったほうが不思議)

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重い、苦しい、鬱になる・・という批評も

北欧や東欧映画に比べたら、普通にエンタメ

ピエロというキャラクターもジョン・ゲイシーをモデルにした

IT(1990)などの作品に使い古されていているのでインパクトが弱いし

時計じかけのオレンジ(1971)や「悪魔のいけにえ(1974)

はじめて見た時のような暴力に対する衝撃もない

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しかもDCコミックスをはじめ、「バットマン」シリーズの「ジョーカー」と

映画、ドラマ、いずれとも世界観を共有しない

完全に独立したキャラクターとして誕生させたというなら

ブルース・ウェイン(バッドマン)の子ども時代なんか登場させるなよ(笑)

無用なファンサービスかえって白ける

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ジョーカーの生い立ちが、アメリカの格差社会を現わすとしたなら

私のもつジョーカーの生い立ちのイメージは

「捨てられ、虐待され、障害者で、貧乏で、可哀そうなワタシ」という

この作品とは真逆的格差の発想

 

大富豪の家に生まれジョーカーは、自分の富と欲のためには

人間の命を何とも思わない悪魔のような少年に育ち

オーメン(1976)のダミアンを更に悪くした

無差別大量殺人鬼にしたら申し分ない

あくまで私個人の勝手な想像なのだけど(笑)

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1981年のゴッサムシティ

ピエロの姿でセールの看板持ちのバイトをするアーサー(ホワキン)は

不良少年にからかわれ暴行を受けるような気弱中年男

私生活認知症の母の介護をしながら

突然笑いだしてしまう病気(トゥレット障害)のため

行政の福祉サービスでカウンセリングを受けています

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唯一の楽しむは、マレー・フランクリン(デ・ニーロ)が司会する

テレビのトークショーを見ること

いつか大物コメディアンになった自分、彼の番組に呼ばれ

インタビューを受ける姿を想像する

 

不良に襲われたアーサーに同情した同僚のランドル

護身用にとアーサーに拳銃を渡します

しかしその拳銃を、小児病棟での慰問中に落としてしまったことで

子どもたちは恐怖に怯え、当然事務所からはクビを宣告されます

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その帰り道、地下鉄の中で若い女性をからかう

酔っぱらいの3人の男を見たアーサーは、突然笑いの発作に襲われます

(行政の福祉に対する予算カットで薬がもらえなくなった)

そして今度はアーサーに絡んできた男たちを反射的に撃ち殺してしまうのです

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そのことは大々的にニュースになり

殺された3人男は「ウェイン産業」という大企業に勤めるエリートでした

そして「ウェイン産業」の社長、トーマス・ウェインは

昔、母が家政婦として働き世話になった男で

今でも施しを受けようとして手紙を送り続けていました(返事はない)

 

一方世間では、女性を助けるためエリートを撃ち殺したピエロは

英雄視扱いされ、街ではピエロの仮面を被った者たちが

デモを行うようになります

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ある日、母からトーマス・ウェインに出してほしいという手紙を

アーサーが盗み読みすると、そこに書かれていた内容は

アーサーはウェインとの間に出来た子であり

援助してほしいというものでした

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ウェインに会うため、彼の屋敷に向かうアーサー

ウェインの幼いブルースに声をかけると、警備員に見つかり追い出されてしまします

そこで直接ウェインを待ち伏せするわけですが

息子というのは母の妄想障害だと否定され、その証拠にアーサーは養子で

母は精神病でアッサム州立病院に入院していたと教えられ

 

アーサーが病院に過去の資料を調べにいくと

母と当時の母の恋人によって、自分は虐待されていたことを知る

家に帰ると容体の悪化した母が救急車に乗せられていました

搬送された病院でアーサーは母を枕で窒息死させます

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アーサーを心配してやってきた元同僚のランドルと小人症のゲイリー

そこでもアーサーはランドルを刺し殺し

ゲイリーには「やさしくしてくれたのは君だけだった」という

 

そして同じアパートに住むシングルマザーのソフィー

彼女感性が似ていて、自分のコメディセンスもわかってくれる

しかも美人でやさしくて楽しいし癒される

だけど彼女にとって、アーサーは顔を知ってるだけの隣人

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そんな時、テレビ局から取材の電話がかかってきます

突然笑いだすという芸がとてもウケたので

マレー・フランクリントークショーに出演して欲しいと

 

主演したアーサーに「なにかネタを披露してほしい」とマレー

そこでアーサーは「ジョーカーと呼んでくれ」と言い

ネタ帳を取り出し、地下鉄殺人の犯人であることを告白するのです

そして「病院に行ったほうがいい」と批判するマレーの頭を撃ち抜く

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確かにショッキングなシーンではあるけど、派手な見せ場だけで

ディア・ハンター(1978)ロシアンルーレット賭博のように

見る側とも駆け引きするような抑揚感はなし

 

アーサーは逮捕されるものの、街では暴動が起こりパトカーが激突

パトカーから脱出したアーサーは暴徒たちから歓喜で迎えられます

家族で舞台を見に来ていたウェインは、暴動を避け路地に逃げ込むと

追いかけてきた暴徒に、息子の前で妻と共に射殺されてしまう

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これって、いかにも続編ありき(笑)

 

「ジョーカー2」では、次にバットマンの生い立ちが描かれるのでしょうか

アーサーが養子だという書類は、実はウェインの権力によって偽造されたもので

アーサーとブルースは異母兄弟だった

「ジョーカー3」ではキャット・ウーマンの生い立ちが明かされ、妹だった

「ジョーカー4」では、お互い親を失い、心に傷を持った兄妹同士が

やがてわかちあい、アベンジャーズ

ネタ切れのハリウッド、シリーズ化で最初のストーリーが崩壊していくあるある(笑)

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アーサーが冷蔵庫に入るシーンは

1970年代まで、自閉症アスペルガー症候群などの子どもは

(生まれつきではなく)母親が子どもを冷たく突き放したり

厳しく教育する不適切な養育(=虐待)が原因と信じられていて

そのような母親が「冷蔵庫マザー」と呼ばれていたことからの引用

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ラスト、精神病院に入院させられるアーサー

マレーの決め台詞「That's life(それが人生)」と同じ

アーサーが口ずさむ(フランク・シナトラのヒット曲)「That's life

結局はこの曲の歌詞にすべてが込められていたのかな

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もちろん酷い作品ではないし、数々の名作に対するリスペクトも感じられる

ただ自分が、皆が言うほどの傑作だと思えなかっただけ

 

 

【解説】allcinema より

 いわゆるアメコミが原作の作品としては史上初となるヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞の快挙を果たした衝撃のサスペンス・ドラマ。DCコミックスのバットマンに登場する最強最悪の悪役“ジョーカー”に焦点を当て、コメディアンを夢みる心優しい男アーサー・フレックが、いかにして社会から切り捨てられ、狂気の怪物へと変貌を遂げていったのか、その哀しくも恐ろしい心の軌跡を重厚な筆致で描き出す。主演は本作の演技が各方面から絶賛された「ザ・マスター」「her/世界でひとつの彼女」のホアキン・フェニックス。共演にロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ。監督は「ハングオーバー」シリーズのトッド・フィリップス
 大都会の片隅で、体の弱い母と2人でつつましく暮らしている心優しいアーサー・フレック。コメディアンとしての成功を夢みながら、ピエロのメイクで大道芸人をして日銭を稼ぐ彼だったが、行政の支援を打ち切られたり、メンタルの病が原因でたびたびトラブルを招いてしまうなど、どん底の生活から抜け出せずに辛い日々を送っていた。そんな中、同じアパートに住むシングルマザーのソフィーに心惹かれていくアーサーだったが…。