ソイレント・グリーン(1973)



原題も「SOYLENTGREEN

ソイレントとは「soybean」(大豆)と「lentirl」(レンズ豆)の合成語


1973年当時50年後である2022には

ニューヨークの人口が4000万人を超えるだろうと設定したSF映画

(ニューヨークの現在の人口は2000万人強)


今となってはツッコミどころも満載で

先も読めるチープな作りのB級映画ですが(笑)

私は面白かったです




人口過密により街中に人があふれ

建物の中には、足の踏み場もないくらいホームレスが横たわっている

食糧難により、食料は配給制

電気も水道もろくに使えず、インフラ自体が壊滅しています


一部の富裕層だけが、高級マンションに住み

本物の肉や野菜を食べることができるのです




実際のニューヨークは、こうはなっていませんが

南アフリカヨハネスブルグは「1%の富裕層と99%の貧困層

という究極の格差社会で、富裕層の住むエリアは高い塀に囲まれ

高圧電流に監視カメラ、さらに「侵入者は銃撃する」という看板が

あちこちに掲げられている、まさしく「未来都市」


そう思うとこの映画の伝えていることも

空想で済まされる問題ではありません




"ソイレント・グリーン"は海のプランクトンから作られた

人々にとって唯一の食料

そのソイレント会社の重役サイモン(ジョセフ・コットン)が殺され

刑事であるソーン(チャールトン・ヘストン)は捜査に乗りだします


といっても官憲の圧力が強大し、警察官も職権を乱用

サイモンの部屋からタオルから石鹸から食料に酒を盗み出し

家具”と呼ばれる、家事のお手伝い兼愛人の女性も頂き(笑)




ソル・ロス(エドワード・G・ロビンソン)はソーンの”本”で

事件の情報を集める担当で、ソーンが持ってきたソイレント会社の本から

重大な秘密を知ってしまうのです


エドワード・G・ロビンソンは公開を待たずに

撮影終了の10日後に亡くなったそうです

ロビンソンががんの末期であることを知っていたヘストンが

ホーム”(公営安楽死施設のシーンで見せた涙は

本当に泣き出してしまったそうです




またこの映画はMGMスタジオで撮影した最後の作品になってしまい

このあとスタジオは売却されてしまいます


それらを思っても、終盤のこのシーンがやはり一番の見せ場でしょう

ソル・ロスが自ら”ホーム”に向かったのは

ソーンに証拠を掴ませるためでもあったのでしょう


最後にバーボンも飲めたし、レタスや肉を食べることもできた

匙についた、わずかないちごジャム

この世にもう未練はない




古臭さはあるものの、食糧危機の末路の怖さや、格差社会

隠蔽体質の怖さはうまく描かれていて


もしほとんどの生物や植物が絶滅してしまったら

人間が生き延びるためには、死んだ人間のタンパク質を用いる以外に

方法がないのは事実であり




暴動でショベルカーでゴミ同然に処理される人々や

死施設で死んだ老人たちが食品に加工されるというのも

ありえない話ではないと思うのです


逆に例えると、美味しい食事ができることが

今の生活がどんなに幸せなのかをわからせてくれるし

地球への愛情が湧いてくる




B級だっていいじゃない

「お気に入り」にさせていただきます




【解説とあらすじ】KINENOTEより

2022年、今から約50年後のニューヨークには人口が膨大したことによって食糧難が起こっていた。人々は1週間に1度、政府が配給する「ソイレント・グリーン」と呼ばれるウェーフェース状の食料で命を継いでいたが……。原題のソイレント・グリーンとはSOY(大豆)とLENTIL(レンズ豆)を合成した言葉でアメリカのSF作家ハリー・ハリソンの小説の映画化。製作はウォルター・セルツァーとラッセル・サッチャー、監督は「センチュリアン」のリチャード・フライシャー、脚色はスタンリー・R・グリーンバーグ、撮影はリチャード・H・クライン、音楽はフレッド・マイロー、編集はサミュエル・E・ビートリーが各々担当。出演はチャールストン・ヘストン、リー・テイラー・ヤング、これが遺作となったエドワード・G・ロビンソンチャック・コナーズ、ジョセフ・コットン、ブロック・ピーターズ、スティーブン・ヤング、マイク・ヘンリーなど。

2022年のニューヨーク。ここも地球上の全ての土地と同様、人口過剰と食料不足にあえいでおり、ごく1部の裕福な人を除き、4000万市民の大部分は週1回配給される食品を食べて細々と生きている。この食料はソイレント会社が、海のプランクトンから作っていたがすでにそのプランクトンさえ激減していた。最近、同社は「ソイレント・グリーン」という新しい製品を発表したが、品不足から配給が思うようにいかず、仕事も家もない何百万市民の不平不満は、一発触発の暴動の危機をはらんでいた。彼らに比べれば、市警察殺人課の刑事ソーン(チャールトン・ヘストン)は、職があるだけによほどましな暮らしである。むさくるしいが2階屋のアパートに老人のソル・ロス(エドワード・G・ロビンソン)と住んでいる。ソルはいわばソーンの人間ブックで、事件の背景を調べ、ソーンの捜査を助けている。ソーンは、ソイレント会社の幹部の1人ウィリアム・サイモン(ジョセフ・コットン)が自宅で惨殺された事件を担当することになった。彼にはボディー・ガードのタブ(チャック・コナーズ)と、「ファーニチャー」と呼ばれ、家具の1つとして配置されている女たちの1人、シャール(リー・テイラー・ヤング)が付ききりだったが、あいにくその2人は買い物にでかけ留守だった。タブは物盗りの仕業というが周到な計画殺人であることが、ソーンにはすぐに判った。その後、何度かシャールと接するうちに2人は愛し合うようになった。一方、ソルの調査から事件の背後に大物の手が動いていることを知ったソーンが、捜査に本腰を入れようとした矢先、上司のハッチャー(ブロック・ピーターズ)から捜査を打ち切るよう圧力をかけられた。頑として拒否するが、たちまち臨時に狩りだされ、ソイレント・グリーン配給の警備に廻されてしまう。そこには、少ない配給量に対する市民の怒りに火をつけ、暴動のどさくさに紛れてソーンを消そうとする殺し屋が待ち受けていた。ソーンは足を射たれるが殺し屋も誤って暴動鎮圧用シャベルに押しつぶされてしまう。一方、ソルはブック仲間の集まりでサイモン殺人事件の動機となったソイレント社の秘密を知りショックを受ける。彼は現実のあまりの厳しさに絶望し、安楽死させてくれる「ホーム」に向かう。そのことを知ったソーンは「ホーム」に駆け込むが間に合わず、老人の孤独な臨終を痛恨の思いで見とるばかりあった。だが、息を引き取る直前にソイレント・グリーンの秘密を明かされ愕然とする。新製品のソイレント・グリーンが人肉だったとは・・・。その帰り道、タブと数名の男たちに襲撃され、激しい射ち合いになったが、折りよくハッチャーが部下と共に応援に駆けつけ、タブは射殺されるが、ソーンもまた重傷を負う。ソーンは担架で病院に運ばれる途中、ソイレント・グリーンの秘密を告発するよう、繰り返しサッチャーに訴え続けた・・・。