ロード・オブ・ドッグタウン(2005)




1970年代、カリフォルニア州ベニスから
スケートボード・ムーブメントを世界中に広げた「Z-Boys」の伝説的メンバー
ジェイ・アダムス、トニー・アルバ、ステイシー・ペラルタの物語

プロでもアマでも、スケートボーダーにとっては
憧れのレジェンドの若かりし日の姿に感動するでしょうし
私のようにスケートボーディングの競技を全く知らない人間にとっては
いまのスタイルに至るまでのその歴史を学ぶことができる作品でした


10代半ばのジェイ、トニー、ステイシー、シドは
サーフィンとスケボーに明け暮れる日々
スケートボードの神的存在が、同じ時代、同じ場所で親友として育つ
それは奇跡としかいいようがない偶然

海岸でサーフィンをするためにはサーフショップ「ゼファー」の店主
スキップに認めてもらわないと波に乗れません
そんな彼らのスケートボードの才能を見出したスキップは
金儲けのためにスケートボード大会に出そうと思いつきます

だけど病気がちなシドは馬鹿にされ相手にされず
真面目なステイシーは「海賊じゃない」と
最後まで仲間に入れてもらうことはできませんでした

そんな様々な確執が生まれながらも
彼らのストリートな滑りは若者から大いなる支持を受け
スキップの店も計画通り大繁盛します

ジェイたちは、パーティに女の子とやりたい放題
やがて雑誌にも載り人気は更にアップ
仲間と留守中の金持ちの家のプールへと忍び込み
次々と新しい滑りへと挑戦します
ついには大手のスポンサーからの引き抜きもやってきます





トニーがまずチームを抜け、名声と富を手に入れます
次に、ジェイに彼女を寝取られてしまったのを機に
ステイシーが去りG&S(スケートボードメーカー)の傘下となり
人気ドラマにも出演して国民的アイドルとなっていきます

ジェイだけがドッグタウンに残り、CMの依頼も断り
ストリートなままの生き方を続けるのです
どうしようもない母親を捨てて町を出れなかった
違う生き方を選べなかった、粋がるしかない不器用な青年
誰よりも才能はあったというのに

かっては、寝ても覚めても一緒、何もかもわかりあえるはずだった親友
その3人が共にいれるのは、選手権で競い合う会場の中だけとなってしまう

だけど、自分たちは大人に利用されてきただけではないのか
そんな疑問を持ち始めたとき
優しかったシドが脳腫瘍で余命わずかだと知らされるのです
誰が言うでなく、また空のプールに戻り、一緒に滑り出すようになる


これは、天才スケートー・ボーダーのサクセス・ストリーというよりは
失敗や挫折を繰り返したあとの若者の「再出発」
そして友情への「赦し」の物語なのです


トニーは(彼らが練習した空のプールでのスケーティングから)
ドッグボウルやヴァート・ランプというスタイルを確立した創設者のひとりとなり
自らの名前「Alva」を題したスケボー・カンパニーを19歳にして設立します

ステイシーはボードチームや一流選手の育成に貢献
のちには映像製作に専念、映画監督やプロデューサーとして活躍し
この作品では脚本も手がけました

ジェイは、ハードコアなルックスがアウトローからも支持をうけ
サーフボード業界では屈指の人気を誇ったそうですが
ドラッグを絶てず、2014年に53歳と言う若さで急性の心臓発作で死去
最後まで自分の生き方は捨てなかったようです





現在のスポーツ界ではいくら才能と実力があっても
品行方正でないと完全に干されてしまいますが
70年代は堕ちたヒーローにもスポットライトがあたる
やり直すチャンスがある、そんなおおらかさのある
時代だったのではないでしょうか

彼らに勝手にプールを使用されて、当時は怒っていたカリフォルニアの住民も
今では「これがジェイとトニーとステイシーを育てたプールだ」と
きっと自慢しているのではないかと思います(笑)



【解説】allcinemaより
 スケートボードの枠を越え、70年代若者文化に革命をもたらしたと言われる“Z-BOYS”のオリジナルメンバー3人の栄光と戸惑い、瑞々しくも切ない友情の日々を綴った青春ドラマ。オリジナルメンバーの一人で、“Z-BOYS”をフィーチャーしたドキュメンタリー「DOGTOWN & Z-BOYS」の監督も務めたステイシー・ペラルタが脚本を手掛け、「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと」のキャサリン・ハードウィックがメガフォンをとる。
 アメリカ西海岸ヴェニスビーチ周辺の通称ドッグタウンと呼ばれる地区。この街に暮らす3人の少年、トニー、ステイシー、ジェイはスケートボードに明け暮れる毎日。やがて、彼らの兄貴分でサーフショップ“ゼファー”を経営するスキップの提案によりチーム“Z-BOYS”が結成され、いつしか水が空っぽのプールが彼らの聖域となる。そして、その革新的なスケーティング・スタイルに若者たちが熱狂、雑誌にも取り上げられた3人は瞬く間に注目の的となった。だが、これを機に彼らの方向性は分かれ、成り上がりの派手さを嫌って地道に取り組むジェイをよそに、トニーとステイシーはスーパースターへの階段を駆け上っていくのだったが…。