ユージュアル・サスペクツ(1995)




「ソゼが凄いところは "自分を謎" にしたところだ
 それが終わると "フッ"と消えた」


ユージュアル・サスペクツ(usual suspect)とは
「常連の容疑者」「札付き」という意のこと

これは、私が今まで見たサスペンス映画の中でも上位ランキング
本当に見事な、素晴らしい脚本です

ラストのどんでん返し
完璧な辻褄合わせ
もう、どこまでが真実なのか、嘘なのか
誰にもわからない

銃器強奪事件で警察署に集められた前科者5人組
華麗なる犯罪歴のある4人の有名人に混じった
その中のひとり、ヴァーバルは片方の手足が不自由で、人も好さそう
チンケな罪で刑を喰らったこともある詐欺師
そんな彼の語り手で物語は進行します

麻薬密輸と思われる船の炎上と多数の死者
それを、マフィアと対立組織の抗争とみた関税局捜査官は
事件の生き残りで目撃者であるヴァーバルに聞き取り調査を行います

いかに5人が宝石強盗事件に
麻薬密輸船の事故に巻き込まれていったのか

彼によって明らかにされる黒幕
弁護士コバヤシと
伝説の殺人鬼、カイザー・ソゼ

関税局捜査官の尋問の前に
新聞の切り抜きが張り巡らされた壁を
じっと見つめていたヴァーバル

そして、割れたコーヒーカップの文字から
引きのカメラ





心を読ませない(けど想像させる)演技をする俳優では
彼の右に出る名優はいないかも知れません

元ネタはクリスティの「アクロイド殺し」ということ
古典的な部分もあるかも知れませんが
サスペンス・ミステリーファンには
やはり、楽しく、たまらない刺激

私の好みでは、もちろん
お気に入りに決まっています


【解説】allcinemaより
 銃器強奪事件の面通しで集められた五人の前科者(これがタイトルの指す“常連の容疑者”)を主人公に、歯車の狂い始めた犯罪計画を卓越した構成で描いたサスペンス・ミステリー。
 カリフォルニア、サン・ペドロ港でアルゼンチン・マフィアの所有する船舶の炎上事故が発生。それはコカインを奪おうとした犯罪者一味とマフィアの闘いの結果であった。一味の生き残りであるヴァーバル(K・スペイシー)を尋問していた関税特別捜査官クインラン(C・パルミンテリ)は、6週間前、銃器強奪事件の容疑者として集められた5人の男たちの身にふりかかった奇妙な話を聞く事になる。元汚職警官のキートン(G・バーン)、マクナマス(S・ボールドウィン)とフェンスター(B・デル・トロ)の強盗コンビ、爆破の専門家ホックニー(K・ポラック)、そして詐欺師のヴァーバルら5人は、釈放後、協力して宝石強奪を決行。ブツをさばくためにLAの故買屋と接触した5人は、そこで新たなヤマを依頼されるが、宝石と聞かされていた獲物は麻薬で、トラブルから相手を射殺してしまう。そして恐慌状態の彼らの前に、伝説のギャング“カイザー・ソゼ”の右腕と名乗る弁護士が現れたというのだ……。
 この映画ほどストーリーを文章化する事の無意味さを感じるものはないだろう。込み入ってるはずの構成がいとも容易に頭に入るのは、とにもかくにも脚本が達者な事に尽きる。パズルの最後の断片が綺麗に埋まる事の快感と例えればいいだろうか。だがこの映画はそれがパズルであった事も忘れさせてくれる力を持っている。この隙のない仕事が、まだ新人と呼んでもいいキャリアの二人組(監督シンガー&脚本マッカリー)から生まれた事には驚嘆せざるをえない。バーン、スペイシーを筆頭に、男優たちは皆いい面構えをしており、それがこの作品を一見で終わらせない魅力にもなっている。