切腹(1962)

 
 
仲代達也さんの主演作は
まだ10本足らずしか見ていません
そのなかで特に面白かったと思うのはこの作品
2度目の鑑賞ですがやはりよかった
 
時代劇ですがホラーに近いのです
主人公の語りによって
少しずつ真相が明らかになっていく展開は
まさにスリリング
 
しかも撮影当時、仲代さんはまだ29歳だったとのこと
なんという貫禄(笑)
仲代さんも自身の一番の代表作と言っているそうです
 
江戸時代、封建の武士社会
ひとりの浪人の復讐と幕府批判の物語
 
当時はお金に困った浪人が
屋敷に行って切腹すると言えば
金銭をもらい帰されるということが本当にあったそうです
 
だけどやって来たのは誰が見ても
切腹などできないような気弱な男
金をもらえるどころか
本当に切腹するようにと家老から命じられます
 
しかも切れない刀で腹を刺させたうえ
首を落とす時間も遅らせ苦しませ
残忍な死に方をさせてしまいます
 
やがて、その死んだ浪人の義理の父親を名乗る
半四郎という老侍が屋敷にやってきます
 
半四郎が3人の介錯切腹の時、首を切り落とす役目の人)の
髷を投げ捨てるシーンがいいですね
それだけで、いかに剣の達人なのかが伝わります
切り落とされた髷が、武士にとって
いかに恐ろしく気味が悪いものなのかもわかります
 
しかしこのことが世間に知れたら井伊家の名誉は損なわれ
幕府からどんなおとがめを受けるかわかりません
家老は半四郎を斬るよう家来たちに命令するのです
 
よく練られた脚本が素晴らしい
三國連太郎さんの冷淡さも光ります
 
ただ主人公には復讐ではなく
切腹だけで死んでほしかった
 
そのほうが立派な武士らしく
美しい最後になったような気がするのです
 

 
【解説】allcinemaより
滝口康彦の『異聞浪人記』を橋本忍が脚色し小林正樹が監督。時代劇でありながら武士道を批判的に取り上げ、完成度の高いシナリオと隙のないカメラワークも手伝って、高い評価を得た。カンヌ国際映画祭では審査員特別賞を受賞している。彦根藩井伊家の上屋敷に津雲半四郎と名乗る浪人が現れ「切腹のためお庭拝借」と申し出た。生活に困窮した浪人が「切腹する」と言っては、庭や玄関を汚されたくない人々から金品を巻き上げることが流行っており、家老の斎藤勘解由は数ヶ月前にやってきた千々岩求女という浪人の話を始めた。家老が切腹の場を設けてやると言い出すと、求女は狼狽したあげく、竹光で腹を切った上に舌を噛んで絶命した、と。話を聞いた半四郎は、求女は自分の娘婿であることを告げた。