にあんちゃん(1959)




10歳の女の子の書いた日記が原作だなんて驚きです
作中でも、にあんちゃんとその妹がとても素晴らしい

「オレ、人に頼るのやめたんや!」

昭和28年、九州佐賀の炭鉱町
日本人と朝鮮人鉱夫が共同生活しています

そこで親に先立たれた兄妹4人
どこの家も他人を助ける余裕がないほど貧しいからでしょうか
または、在日コリアンという理由からなのでしょうか
炭鉱の女たちは兄妹を住む家から追い出してしまいます

長男と長女は長崎に仕事を求め家を出ていきます
そして、まだ幼い次男の高一と末の妹の末子は親戚に預けられました

とはいえ、この親戚の家も貧しく、汚く、食べるものもろくにない
栄養失調に赤痢・・このままでは死ぬかもしれない
兄妹は逃げ出してしまいます

貧困描写があまりに痛々しい

なのに同情を求めないこの作り方は
さすが今村昌平監督の力量だなあと唸ってしまう

にあんちゃんは、どんなに苦しくても迷ったりはしないのです
生きよう、前に進もう、間違っていたらやり直す
妹を守るため、あちこちを巡り仕事を探し
そして、ついには東京へと向かいます

でも、やっぱり無垢な子どもなんだよな(笑)
にあんちゃんのすることが、可愛くてしょうがない

貧しさと、助けのほとんどない世の中を
逞しく生きた子どもたちの姿を描いた秀作でしょう

儚い「火垂るの墓」の刹那と、思わず比べてしまいます



【解説】allcinemaより
十歳の安本末子が書きベストセラーとなった同名の日記を、今村昌平池田一朗と脚色し映画化。昭和28年、佐賀県の小さな炭鉱で炭鉱夫が死んだ。残された四人の子供たちは自分たちで暮らしていくが、長男で二十歳の喜一が仕事を失ってしまう。次男の高一と次女の末子を知り合いの家に預け、喜一は長女の良子と長崎へ働きに出かけた。しかし二人を預かった辺見家も生活が苦しく、末子は栄養失調になってしまう。やがて、会社が炭鉱を廃坑にすると宣言した。