ツレがうつになりまして。(2011)




このタイトルだけでも「それは大変だ!」と思ってしまいます

女性の場合は、マタニティブルーなどといえば聞こえがいいですが(笑)
お子さんのいる方なら、鬱体験をした方は多くいると思います
過剰なホルモン量、急激な身体の変化、お産の苦痛、子育ての大変さ
心も肉体もついていかずそうなってしまうのは
自然現象ということらしいのですけれど

でも幸せが待っていると思っていたのに、やってきたのは虚無
産まれたばかりの赤ちゃんを可愛いとも思えない
こんな自分は間違った存在
悪い母親なんだと落ち込む、深く

そして鬱と、普段の落ち込みや悩みと最大の違い
それは鬱の場合「どこか誰も知らない場所に消えてしまいたい」
そして本気で「死んでしまいたい」と思うことです

何が本気かというと
どうしたら有効的にうまく死ねるかと
その手段を、場所を
死んだあとの自分や家族の姿まで
具体的にどうなのかと考えるのです

でもやがて、霧が晴れたように
夜だと思っていたのが、カーテンを開けたら明るい朝だったように
目が・・・いいえ、心が覚める時がきます
ハッピーな自分が戻ってくるのです

今まで「モノ」にしか見えなかった赤ちゃんが
イキナリ愛おしくなり
モデルにしたいくらい、カワイク見え
なんでも買ってあげたくなる(笑)

このような産後の躁鬱は、数か月で収まるでしょうし
ほとんどは専業主婦か、働いていても産休中だったり、里帰りしたり
どうにかなる場合が多いでしょう

しかし一家の主が、しかも無期限に
鬱になったら、無職になったら、死にたがったら、どうします?

ヒロインのように「会社を辞めて」なんて、正直言えない
健康保険も、福利厚生も、あるだけの有給も
許されるだけの欠勤も使って、治療してもらう

病気のせいで職場に損害を与えてしまい
クビになってしまったなら、それはしょうがない

だけど鬼嫁と思われてもいい
ご立派なことは言えない

でも、このヒロインは本当に立派だと思います
時には八つ当たりしてしまったこともあるだろうけれど
自分が主となり、夫と家庭を守ったのです

かけがえのない言葉を
ひとつづつ伝えながら

鬱と一言で言っても、症状も、期間も、それぞれでしょう
だけれど、いまは良い薬もあるでしょうし
周囲の人間の理解や環境で
いつかは闇の扉が開くのです
だから焦らないで構えてほしいと思います

まあ本人は、鬱の時は自分のことだけで周りの苦労なんか知らず
治ってから「あれが鬱だ」と気が付くのですけど(笑)



【解説】allcinemaより
漫画家・細川貂々のベストセラー・コミック・エッセイを、TV「篤姫」での共演に続いての顔合わせとなる宮崎あおい堺雅人の主演で映画化したハートフル・ドラマ。夫がうつ病になったのをきっかけに、2人で困難と向き合い、少しずつ前へと進んでいく夫婦愛の物語を、明るく温かなタッチでユーモラスに綴ってゆく。監督は「半落ち」「日輪の遺産」の佐々部清
 マイペースなハルさんは売れない漫画家。そのツレ(夫)は生真面目で仕事熱心なスーパーサラリーマン。ところが結婚5年目のある日、ツレが突然“死にたい”とつぶやいた。診断の結果は、うつ病。ツレの変化にまったく気づかなかったハルさん。ツレのことを心配した彼女は、“会社を辞めないなら、離婚する”と迫り退職を決意させる。ツレが主夫となったことで自分が稼がなければならなくなったハルさんは、一大決心の末に編集部で“ツレがうつになりまして、仕事ください”と切り出す。