野火(1959)




第二次大戦末期のフィリピン戦線での日本兵たちの末路。

兵士たちは暑さと空腹のため
ただダラダラと過ごしています。
敵の銃弾から逃げるだけで
戦う気力などまったくないようです。

そして襲う極限の飢え
それは理性を失い狂気を生み出すのでしょう。
彼らは戦友を殺し、「サルの肉」と偽って食べます。

次に食われるのは自分かも知れない
弱ってしまうわけにはいかない
食わなければ食われてしまう。

私がまだ子どもの頃、田舎の農家などでは
自分で家畜を解体して食べている家庭もありました。
昔は動物の血を抜いたり、皮を剥いだりすることが
できる人も多くいたのでしょう。

生きるためには仲間も殺す
これが戦争なんだな。

汚く、だらしがなく、みっともない
そして残忍。
他の戦争映画とは日本兵の描かれ方が全く違う
異質な作品だと思います。

知られざる戦争映画の傑作ということですが
塚本晋也監督・主演でリメイク版も制作されたそうですね。

リメイク版でも狂った将校は汚物を食べるのだろうか・・



【解説】allcinemaより
大岡昇平の同名小説を、和田夏十が脚色し市川崑が監督した反戦映画。
 病院にも部隊にも見放された田村は、フィリピン戦線のレイテ島をさまよっていた。同じように敗走している仲間と病院の前で合流するが、その病院が砲撃を受けたため、田村は一人で逃げ出す。食べるものもなく、仲間を失った田村は、草を食べて生き延びていた。やがて生き別れたかつての仲間である永松と安田と再会。二人は殺した味方の兵士を“猿”と称し、その肉を食べていた…。