青春群像(1953)




「労働者階級の諸君!」

寅さんを思い浮かべますね
この作品が元ネタなのでしょうか。

原題は「のらくらな者たち」という意味なのだそう。

今でいうニート、大人になっても働かず
実家に住み親に養ってもらっている、30男の物語。

現在のようにゲームやネットがある時代ではありません。
退屈しのぎに仲間で集まり、なけなしの金で遊ぶ
劇作家志望のレオポルド、女好きのファウスト、真面目なモラルド
不倫中の姉から金をせびるアルベルト、歌が得意なだけのリカルド
仲良し5人組。

そんななか、ファウストはモラルドの美人な妹
サンドラに手をだして妊娠させてしまいます。
ファウストの父親もモラルドの父親も真面目で堅い人間でした。
サンドラから逃げようとしたファウストを叱咤し結婚させます。
だけど彼の女好きは治りません。

過酷な労働をするなんて馬鹿らしい。
偉そうなことばかり宣う、上から目線の俺様たち。

だけどモラルドだけは、朝3時からから駅員として働く
少年グイド(15歳くらいでしょうか)との出逢いで
自らの不甲斐なさを知ります。

そして、旅立つモラルドを見送ったのは
この幼くして働くグイトひとりだけだけでした。

いつの時代も、世の中を舐めている人は多くいるのでしょう。
だけど、彼らもまた苦しんでいるのです、悩んでいるのです。

フェリーニ作品にはこんな遊んで暮らし
まともに働かない男が多い。

フェリーニ監督もまた、そういう人間だったのかも知れませんね。

好きなことしかできない
でもいる、そんな天才。



【解説】allcinemaより
「アマルコルド」でもおなじみ、フェリーニが育った北イタリアの港町リミニを舞台とした邦題通りの青春映画で、全体にネオ・レアリズモの感覚が息づく中、フェリーニ特有の夢にまどろむような詩的なタッチがすでに見受けられる。主人公レオポルドは劇作家を志す青年だが、向いの女中に気もそぞろ。彼を取り巻く連中はいずれも、未だ親や兄弟から自立できない甘えん坊のぐうたらばかり(原題には“乳離れしない仔牛”の意があり、のらくら青年を表すリミニの方言だそうだ)。不倫の恋に苦悩する心中を知ってか知らずか、そんな姉に小遣いをせびり続けるアルベルト。妊娠させた相手と結婚する破目になっても女遊びをやめないフランコ。唄がうまいだけが取り柄のリカルド。怠惰な生活から抜け出すことを切望するモラルドだけは唯一まともであった……。誰の胸にもある、絶望の滲む青春の郷愁を思いっきりくすぐる感傷的な秀作。