海洋天堂(2010)



自閉症は自分の世界で生きてるからいい」

「自分の感情を表現するのがヘタなだけ
 あなたも分かってるはず」


善い映画でした。
人の支え、助け合い、思いやり。

物語は父子の入水自殺をしようとする場面から始まります。
見てすぐ障害があるとわかる青年。
きっと希望を絶たれた親子なのでしょう。
重りを付けたロープを足に結び海に飛び込む・・・
しかし助かってしまいました。

息子のターフーは21歳、泳ぐことを得意としています。
父親のワンの働く水族館ではまるでイルカやアザラシとも話ができるよう。
人魚のように水槽のなかで戯れます。

そんな父子を気に掛け世話をする雑貨屋の女主人。
「かわいそう」
始めはそんなただの同情だったのかもしれない。
でも気にかけているいちに、かかわっていくうちに
それが本物の愛情に変わることも、きっとあると思います。
彼女はワンのことを好いています。

だけれどワンは彼女の気持ちに応えてあげられない。
自閉症の子と暮らす苦労は相当なもの。
そのうえ自分は末期ガンに侵されているのです。

余命3カ月・・・

死ぬまでにターフーの受け入れ先を探す。
着替える、食事を作る、玄関のカギを閉める、バスに乗る、掃除する・・
少しでも自立できるようにワンはターフーに教え込みます。
だけど思い通りにならないターフーにキレてしまうことも。
激しく叱られ涙を流してしまうターフー・・

ああ、子育てってこうだよな。
健康な子でも相当な苦労があるというのに
自閉症の子であったらどれほどの根気がいることでしょう。
ましてやその子を残して先立たなければいけないなんて。

「亀は長生きなんだよ。亀は父さんなんだよ。ずっと一緒だよ」
ターフーに自分は海亀なんだと伝えるワン。
自分がいなくなっても寂しくないように。

やはり最後は泣いてしまいましたね。
それでも哀しいだけでなく、爽やかなラストでした。

「平凡にして偉大な全ての父と母に贈る」

たくさんの父と母に見てほしいなと思います。



【解説】allcinemaより
 「HERO」「エクスペンダブルズ」の世界的アクション・スター、ジェット・リーがアクションを封印し、わが子を想うごく普通の父親を好演した感動のヒューマン・ドラマ。自閉症の息子を男手ひとつで育ててきた父親が、自分の余命がわずかと知り、残される息子にひとりで生きる術を教えていく姿をユーモアを織り交ぜ、優しいまなざしで描き出していく。監督は、「北京ヴァイオリン」などの脚本を手がけ、長年自閉症施設で行ってきたボランティア活動での経験を基に書き上げた脚本で監督デビューを飾ったシュエ・シャオルー。
 中国、チンタオ。水族館で働くシンチョンは、妻に先立たれて以来、自閉症の息子ターフーを男手ひとつで育ててきた。ところがシンチョンに癌が見つかり余命がわずかと判明してしまう。これまではターフーの面倒をつきっきりで見てきたシンチョン。しかし、息子の将来を案じた彼は、ターフーがひとりで生きていけるよう、食事の作り方やバスの乗り方、買い物の仕方を一つひとつ教え込んでいく。そんな中、ターフーは水族館に巡業に来たサーカス団の女ピエロ、リンリンと仲良くなっていくのだが…。