ララミーから来た男(1955)


 
 
何から何までクラッシックシネマファンの
心をくすぐるようなそんな西部劇。
大西部の広大な風景に、それぞれの登場人物の描き方がとにかくいい。
アンソニー・マン監督のロングショットは
やっぱりどれも素晴らしい。
 
アパッチへ売られた銃によって、騎兵隊の弟を亡くしてしまったロックハート
銃を密売した人物を突き止め、復讐を果たすために
ニューメキシココロラドへとやってきます。
そこではアレックス・ワゴマンとケイトという
かっては恋人同士だったふたりの牧場主が対立していました。
 
町を牛耳っているほうの牧場主、ワゴマンは公平で良い男でしたが
甘やかして育てたひとり息子のデイブは身勝手で暴力的な青年でした。
そして彼は銃の密売の張本人でした。
 
弟を殺したアパッチ族にではなく
アパッチに銃を売った相手への復讐というのが
サスペンス調な展開になっていて面白いですね。
 
馬車を燃やされたり、ロバを殺されたり
無実の殺人罪で保安官に連行されたり
デイヴの嫌がらせにとことん耐えるロックハート
さすがのジミー様、やさしそうで実に温厚な外見だけれど
頑固で意志の強い男をうまく演じています。
 
ワゴマンに牧場をまかせられていたヴィックもまた
デイヴの悪行に手を焼いていました。
そして大量のウィンチェスター銃をアパッチに渡そうとしたデイヴを
思わず殺してしまいます。
そこから本当は善人であったはずのヴィックの人生は狂い始めてしまいます。
 
可哀相なヴィック。
ワゴマンに認めてもらうためずっと頑張ってきたのに。
理不尽な思いに堪え、馬鹿息子の面倒もずっと見てきたのに・・・
哀れな最期を遂げてしまいます。
 
気丈な女牧場主のケイトが良かったですね、何ともカッコイイ。
違う女性と結婚したワゴマンと対立しながらも
何十年もずっと愛情を抱いていたのです。
今まで溜めていた愛情を、失明してしまったワゴマンに注いでいくのでしょう。
 
主人公は誰一人殺さない。
にもかかわらず、ここまで見応えたっぷりなのは
さすがとしか言いようがありません。
なかなかの秀作に巡り合えたと思います。
 

 
【解説】allcinemaより
マン監督とスチュワートの黄金コンビの西部劇の面白さは、人間的なジミーが暴力の価値に最後まで否定的なのに、それが活劇自体の面白さと違和感なく結ばれていることで、ロケーションの工夫も常にあり視覚的驚きにも事欠かない。本作はD・クリスプ親子の確執に、流れ者のジミーが絡む形で、話の焦点がうまく絞られきらない弱味があるが、大地主のクリスプに反抗する女性牧場主の描き方など、場面にすれば僅かでも、非常にリアルで感心する。ララミーからやって来た元騎兵隊大尉ロックハート運送業の配達で、アパッチによって弟が命を落とした土地に近い、地主ワグマン支配下の町にやってくる。その老人はかなり強引にのしてきた暴君ではあったが、目を病んで病気になり引退を考えていた。東部出身の妻の虚栄のうちに育てられた息子デイヴはわがままで乱暴で手に負えず、実子のように目をかけているヴィク(ケネディ)が頼みの綱だが、いざとなると息子が可愛い。デイヴに襲われ馬車を焼かれ、ラバを何頭も撃たれ廃業やむなしとなったロックハートは、ヴィクの恋人でデイヴとは従姉妹同士のバーバラに魅かれたこともあり、しばし当地に留まることにした。そのうち、密偵に雇った老人からの情報で、アパッチに通じる者の姿が浮かびあがってくる。彼はデイヴの度重なる嫌がらせに耐え、ワグマンに譲らず自分の小さな牧場を守り続ける老女ケイトを手伝いながら、真相解明の機会を待つが……。アクション場面として面白いのは牛の群れの中でのジミーVSケネディの殴り合い。それから目の効かないクリスプが馬に乗ってジミーと対決しようとする、馬上からのショットにはハッとさせられる。彼とケイト役のA・マクマホン、二老優がとにかく健闘。単なる勧善徴悪でなく、陰々滅々でもない、見応えのあるウェスタンだ。