ピアノマニア(2009)


 
 
ピアノメーカーの老舗、ブランド・スタンウェイ社の
実在する調律師、シュテファン・クニュップファー。
彼が現代音楽の巨匠と言われるピアニストピエール=ローラン・エマールと
バッハの未完の名作、「フーガの技法」をレコーディングまでの
一年を追ったドキュメンタリー。
 
ある分野において完璧な仕事をする、決して妥協はしない。
だけれど頑固ではない、他人の要望や意見も聞き入れる。
そういう職人技とか専門職的な仕事をする人って尊敬しますね。
 
裏方で決して表に出ることはないけれど
彼らのような職人がいなければ、喝采される人間も現れないのです。
 
ピアニストの頭に描いた、まるで夢のように語る音を作り出す。
音の高さ、まるみ、延び、ひろがり・・
会場の作り、広さ、湿度・・すべての環境でも音は変わってくる。
それは天才と天才の駆け引き。
ピアニストの作ったイメージに合わせ
ピアノ選びから調教までシュテファンはたったひとりでこなしていきます。
最高の音色を求めるための苦闘。
 
そのかわり理想の音が生み出された時の感動は
とてもとても大きなものなのでしょう。
今までの苦労がすべて消えるくらいに。
 
彼の作った音は巨匠によって演奏され録音され
その美しい音は、音楽は、永遠に残るのです。
 
格闘技?とピアノ演奏のコラボや
奥さんの焼いたチーズケーキの差し入れのエピソードなど
固い仕事ぶりだけでなく、おちゃめな部分も垣間見れて良かったですね。
信頼とは仕事が出来ることだけでなく
人間性も重要なのだということがわかります。
 
作品の中で2度ほどシュテファンが日本人について語るシーンがありました。
シュテファンと同じように(海外で)活躍している
日本人の調教師がいるというのを以前テレビで見たことがあるので
その方のことなのかなと思いました。
 
邦画でもこのようなドキュメンタリーをもっと撮影して欲しいですよね。
後世に残していく記録映画も、また必要だと思うのです。
 


 
【あらすじ】ウィキペディアより
主人公シュテファン・クニュップファーは実在するピアノ調律師でその仕事ぶりを一年がかりで撮影したドキュメンタリー映画。 一般家庭における通常のピアノ調律とは環境が異なり、コンサートやスタジオ録音など、ピアニストの要求に答えるため、さまざまな方法で音作りに挑戦していく。 主にフランスのピアニストピエール=ローラン・エマールとの問答が軸で物語はすすんでいく。 芸術家特有の表現を受け、それを楽器の音で実際に表現するためピアノの部品を解体したり、調整したり、時にはピアノそのものを入れ替えて要求に答えていく。