ブラック・レイン(1989)

 
 
 
高倉健さんを偲ぶ】
 
日本映画界最高の銀幕のスター。
高倉健さんを嫌いな日本人なんているのでしょうか?
静かで、強く、やさしく、そして孤独。
彼の「男の美学」そのものの姿は、演技は
溜息がつくほど。
 
彼の主演作のなかで一番好きなのは「遥かなる山の呼び声」。
ラストシーンは涙なしでは見れません。
もちろん健さんと言えば「網走番外地」「仁義なき戦い」などの
任侠ものは気持ちが盛り上がりますし最高です。
サスペンス映画では「新幹線大爆破」は傑作だと思いました。
 
 
 
今回のレビューは「ブラックレイン」
松田優作さんの遺作として有名な作品です。
 
ブレードランナー」の少し現代風にして舞台を大阪した・・
リドリー・スコット監督の映像の世界が
好きな人は好き、そんな洋風Vシネマ
 
外国映画で登場する日本人や日本の習慣には
この当時でもまだ、かなりカンチガイは多いです。
その分、異国情緒いっぱいなOsaka cityが味わえます。
チャイナタウンに見えてしまう場面もありましたけど。
 
ニューヨーク市警の刑事ニックとチャーリーは
殺人事件の犯人の一人でヤクザの組員の佐藤を日本へ護送する任務に就きます。
しかし大阪空港で佐藤に逃げられてしまい
大阪府警の警部補松本の協力のもと、佐藤を追うことになります。
 
日本人を蔑視し小馬鹿にしているニックと
アメリカ人刑事を部外者だアメ公だと受けつけない日本の警察。
しかし松本の誠実な人柄と仕事ぶりに、ニックは心を開いていきます。
 
健さんは武骨で相変わらず魅力的ですが
存在感は控えめでマイケル・ダグラスを立てている感じ。
残念な役回りだなと思っていたのですが、でも自分が大人になった今は
前面に出てこないで、ひっそり脇役に徹している健さん
また渋くていいなあと思うようになりました。
 
当時は笑ってしまった健さんアンディ・ガルシア
カラオケでのデュエットも、今思えば本当に貴重なシーンですよね。笑
 
優作さんは「ブレードランナー」でのルトガー・ハウアー的な存在。
スコット監督は悪役を美しく撮ります。
その存在感は主役を食うほど。
 
ヤン・デ・ボンの撮影もカッコイイし
ハンス・ジマーの音楽もカッコイイ。
そしてカッコイ健さんと優作さん。
 
たとえB級アクション刑事ものでも
見る価値のある一本だと思います。
 
 
 
多くの作品でムービーファンを魅了してきた健さん・・・
主演作は205本とのこと。
銀幕でその姿を見れなくなってしまったのは残念でしかたないけれど
でもきっと天国でも渋くてカッコイイままでしょう。
 
心よりご冥福をお祈りします。
 

 
【解説】allcinemaより
レストランで偶然にヤクザの殺人に出くわしたニック(ダグラス)とチャーリー(ガルシア)両刑事は、その犯人佐藤(松田)を日本に護送するが、大阪空港で逃げられてしまう。府警の松本(高倉)の監視下、警官としての権限の無いまま捜査を見守る彼らだったが、佐藤はそれを嘲笑うかの如く、自ら刺客となって二人の前に現れるのだった。ロケ地日本の対応の悪さなどプロダクションの混乱でその腕を思う存分に振えなかったのか、意外や「ブレードランナー」の故郷を舞台にしながらスコット色の薄い作品となった。しかし、何を語るより前に、日本人にとっては、松田優作の(映画での)遺作として記憶されてしまった。ハリウッド製のフィルムの中、ビリング(クレジットの順)などあって無いが如く、彼は映画を自分のスタンスに引き寄せ、存在感を見せつけるのである。謗りを恐れず言うなら、これは彼の映画である。その雄姿に無限の可能性を再確認した者は納得するはずだ。だからこそ、その喪失感は大きい。我々は、偉大な一歩、あまりにも大きな才能を喪なってしまったのだと。グレッグ・オールマンのエンディングテーマが熱く哀しい。まるで、彼の死を予感していたかの如く。追悼のための歌の如く。