天才スピヴェット(2013)

 
 
 
109シネマズMM横浜で鑑賞。
 
ホーム・アローン」の悪役をいなくして、ちょっとセンチメンタルした
ロードムービー。そういう感じ。
テンポもよく、コメディタッチで家族で楽しめますね。
 
アメリカの銃社会に対する深いメッセージもあります。
だけれどほかの国の文化をあからさまには批判しない
フランス流大人の対応を感じます。
 
モンタナの牧場に住む10歳のT.S.スピヴェットは
論文がディスカバリー誌に載っちゃうような科学の天才少年。
ある日T.S.の発明した磁気車輪が
最も優れた発明に贈られるベアード賞を受賞したという知らせが入ります。
授賞式に出席するためにT.S.は家出。
ワシントンのスミソニアン博物館まで行くために
貨物列車にこっそり乗り込みます。
 
誰でも天才や特別な才能のある人間を羨ましいと思いますよね。
誰も知らないことを理解したり発見したりする・・
だけどそれが権威ある大人ならともかく
もし子どもだったなら「変わり者」として扱われ
普通の生活の中で適応するのは難しいのでしょう。
 
T.S.も学校の先生からは理解してもらえないし
父親からの愛情も得られない。
そして双子の弟レイトンが銃の暴発で死んでしまったのは
一緒にいた自分の責任だと思い込み深い心の傷を持っています。
 
科学だけが彼を理解してくれる友達だったのかも知れません。
賞を与えてくれた大人なら、同じ科学者なら
分かり合えるそう信じていたのかもしれません。
しかし結局そんな天才少年を「10歳のダ・ヴィンチ」と
マスコミは利用しようとします。
 
ワシントンまで家出した息子を迎えに来た父親。
不器用で無口で古いタイプのカウボーイ男。
だけど子どもを愛さない親などいないのです。
自分は馬鹿な男なのです、天才に生まれた息子への
愛し方を、接し方を知らなかっただけ。
 
父親に抱かれて家に帰る・・
ジーンとして涙が出るシーン。
生まれた時から大人だったT.S.はやっと子どもに戻れたのです。
 
私も子どもの頃どうして両親は私より兄たちばかりを可愛がって
心配するのだろうと、正直兄をひがんだこともあります。
私のほうが勉強もできるのにとか。
(いま思うと自意識過剰だけど。笑)
女の子だったから単に手がかからなかっただけかもしれません。
でも子どものうちはそんな大人の事情はわからないのです。
 
切ない現実から逃げる旅。
誰にでもそうしたいと思うときがある、そういう物語。
でもそれも帰る家が、家族が、あればこそですよね。
 

 
 
【解説】allcinemaより
 「アメリ」「ミックマック」のジャン=ピエール・ジュネ監督がライフ・ラーセンの異色冒険小説『T・S・スピヴェット君 傑作集』を原作に、自身初の3D映画に挑戦したアドベンチャー・ドラマ。スミソニアン学術協会から由緒あるベアード賞を授与されることになった10歳の天才少年T・S・スピヴェットが、授賞式に出席すべく家を飛び出したった一人でアメリカ横断の大冒険を繰り広げる中で、様々な経験を重ね、家族との絆を見つめ直していく姿を3Dによるイマジネーションあふれる映像で描き出していく。主演はTV「ザ・フォロイング」のカイル・キャトレット、共演にヘレナ・ボナム=カーター、ジュディ・デイヴィス
10歳の天才少年T・S・スピヴェットの家族はみな変わり者。モンタナの田舎で広大な牧場を営む父テカムセは身も心もカウボーイ。小さな生きものに恋する昆虫博士の母クレアに、本気でアイドルを目指す姉のグレーシー。そして二卵性双生児の弟レイトンは、頭脳派のスピヴェットとは対照的に、活発で運動や銃の扱いに長けた父親自慢の息子。ところが、その弟がスピヴェットと遊んでいるときに銃の事故で亡くなってしまう。以来、家族は悲嘆に暮れ、スピヴェットは自分を責める続けていた。そんな時、スミソニアン博物館からスピヴェットの発明が栄えあるベアード賞を受賞したとの知らせが届く。一度は授賞式への招待を辞退するスピヴェットだったが、家にも学校にも居場所のない彼は、博物館の次長ジブセンの熱心な誘いを受けることに。こうして家族に置き手紙だけを残し、たった一人で遥かスミソニアン博物館めざして旅立ったスピヴェットだったが…。