彼女が目覚めるその日まで(2016)

 

原題は「Brain on Fire」 (燃え上がる脳)

原作はスザンナ・キャハランのベストセラー自伝

Brain on Fire: My Month of Madness」(日本語題「脳に棲む魔物」)で

自己免疫疾患「抗NMDA受容体脳炎」という

原因不明の難病に侵された女性の

病名がわかり回復するまでを描いたもの

ストーリーは「世界仰天ニュース」的なもので

映画的な感動や、お涙頂戴はないのですが

 

リンダ・ブレア演じた「エクソシスト(1973)のヒロインが

この病気の患者をモデルにしていたといえば

(さすがに首は180度回りません 笑)

どんな病状に襲われ、怖いかがわかると思います

ニューヨーク・ポストで働く

新米記者スザンナ(クロエ・グレース・モレッツ)は

編集長に記事を認められ

近く上院議員のインタビューも任されることになります

ミュージシャンで恋人スティーブン(トーマス・マン)とはラブラブ

両親は離婚しどちらも再婚していましたが、良好な関係を続けています

ただ父親のトムはスティーブンのことを気に入っていませんでした

 

スザンナの誕生日、両親とスティーブンとパーティを祝っていると

スザンナは息をふいてもロウソクの火を消すことができず戸惑います

その日を境に、身体がだるくベッドから起き上がれない

手足の痺れ、めまい、幻聴、幻覚に悩まされ

娘の部屋を訪れたトムは、あまりの汚れに驚きます



職場でも奇怪な言動をおこすようになり

デスクが向かいで親友でもあるマーゴはスザンナを心配していましたが

案の定、上院議員のインタビューの日を忘れ議員を待たせたうえ

彼が何か言うたび笑いが込み上げてしまいます

ふざけたインタビューに議員は帰ってしまい

編集長は、議員を怒らせることは新聞社にとって

どれだけダメージがあるか説明しスザンナを厳しく𠮟ります

完全に自分をコントロールできなったスザンナ

ティーブンは彼女の部屋に泊まることにします

すると激しい痙攣を起こし、病院に運ばれるスザンナ

(クロエちゃんうますぎて、本物の痙攣にしか見えない)

しかし検査では何の異常も見つからず

スザンナは退院させられ

しばらく母親のローナの家で暮らすことにしました

 

しかしスザンナの、泣いたり、笑ったり、落ち込んだり、饒舌になったり

パニックになる姿に、ノイローゼ気味になってしまうローナ

再び検査するものの、やはり異常は見つからない

医者はストレス、夜遊び、飲酒のせいだといい

てんかん薬を処方

 

スザンナはそれを飲み、会社に復帰することにしますが

改善するどころか、ますます攻撃的になったスザンナを

編集長は帰宅させることにし

限界になったローナはトムにスザンナを預けることにします

娘の面倒も見れないのかと、ローナを責めたトムでしたが

トムの家でもスザンナは悪魔のような言動を繰り返します

医師に相談すると、今度はアルコールの禁断症状だと言い

トムとローサは娘を入院させるまで帰らないと居座ることにします

入院したスザンナは暴れないよう拘束され

見舞いに来ティーブンに泣きながら怖い訴えます

最初はチャラいと思っていたスティーブンですが(笑)

彼だけは変わらずスザンナに優しいし

必ず治ると信じてる、いいやつなんですね

やがてトムもスティーブンを認めるようになります

次に医師たちが出した診断は、総合失調症と双極性障害

(実際に病気になる3年前から双極性障害を患っていた)

スザンナは精神病院に転院されることが決まります

しかしカーン医師だけは、スザンナの白血球数が高いことから

(白血球数の増加は脳の腫れを意味する)他に原因があることを疑い

大学で教鞭をとり、神経病理学者の第一人者である

ナジャー博士に助けを求めます

 

カーン医師の熱意に動かされ、スザンナを診ることになったナジャー博士は

強度の強硬症体を動かすことができなくなったスザンナに

時計の文字盤を描く「時計テスト」を行います

スザンナは時計の右半分にしか文字盤を書くことができず

脳の片側に損傷がある可能性があり

脳生検の結果、「抗NMDA受容体脳炎」であることが判明

この病気と診断された217人目の患者となり

ステロイド血漿(けっしょう)交換療法など、さまざまな治療によって

脳損傷を負うことなく回復することに成功したのです

 

元気な姿を取り戻したスザンナに

編集長は「自分の体験を記事にしないか」と提案するのでした

この病気を知ってほしいという思いと

医者が原因を特定出来ないと、安易にストレスや、寝不足

やってもいないクスリやアルコールのせいにしたり

精神病と診断する危険性への啓蒙

 

本の発売後、病気とその症状への理解が深まり

正しい診断と治療がより行われるようになり

今では日本でも若い女性を中心に

年間推計約1000人以上の発症がわかっているそうです




【解説】映画.COMより

キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツが主演を務め、原因不明の難病に冒された女性記者スザンナ・キャラハンの闘病記「脳に棲む魔物」を映画化した人間ドラマ。ニューヨーク・ポスト紙で働く21歳のスザンナは、プライベートではミュージシャンのスティーブンと付き合いはじめ、公私ともに充実した毎日を送っていた。そんなある日、突如として物忘れがひどくなり、大事な取材で大失態を犯してしまう。さらに幻覚や幻聴にも悩まされるようになり、ついには全身が痙攣する発作を起こして入院することに。検査しても異常は見つからず、医師たちは会話すら出来なくなったスザンナに精神科への転院を勧める。しかし両親やスティーブンは、彼女の瞳の奥の叫びを感じ取っていた。共演に「キングコング 髑髏島の巨神」のトーマス・マン、「マトリックス」シリーズのキャリー=アン・モス、「ホビット」シリーズのリチャード・アーミテージ。女優シャーリーズ・セロンが製作で参加。

2016年製作/89分/G/カナダ・アイルランド合作
原題:Brain on Fire
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2017年12月16日