RUN/ラン(2020)

原題も「RUN」(走る)

何の前情報もなく鑑賞したのがよかった(笑)

短い尺の中に2度ほど大きな盛り上がりがあり

オチも効いている

監督のアニーシュ・チャガンティはインド系アメリカ人で

ハリウッド映画とはどこか一線を画しているのが面白い

ヒロインを演じたキーラ・アレンも実際に車椅子生活をおくる

コロンビア大学の学生ということ

困った顔のたれ目で可愛いうえ、作中でも賢いところが魅力的

 

ただ車椅子の女の子が立った!走った!という

母娘の感動モノでは決してなく(笑)

あくまでネタバレ禁止系なので、未見の方は

この先このレビューは読まないことをおススメします(笑)

ワシントン州パスコ

ダイアンは低体重児の娘クロエを出産(早産と思われる)

クロエは糖尿病、喘息、皮膚病、筋疾患など多くの疾患を抱え

車椅子生活をしながらも素直で明るく成長

ワシントン大学の合格発表を待つ日々

ダイアンは障害児を抱える親の会で、クロエが大学に進学したら

デートをしたり自分の時間を楽しみたいと話します

父親は誰か、なぜいないのかは一切語られません

母親が幼少時に親から虐待にあっていたというエピソードも

全てカットされたそうです

 

クロエは自宅で勉強してるんですね

自分で背中に薬を塗ることもできず、マッサージなど介助も必要

通学するためには慈善団体やボランティアの協力がいりますが

そのようなサービスは受けていません

母と娘の閉ざされた空間

でもクロエは拗ねることなく

ダイアンも優しく献身的にクロエを育ててきました

 

そんなある日、大好物のチョコを盗もうと

(血糖値のコントロールのため制限されている)

ダイアンの目を盗みスーパーの買いもの袋を漁っていると

ダイアンの名前の書いた薬瓶を見つけます

ママは何か病気なのかと心配するクロエ

だけどその緑色のカプセルを「新しい薬に代わった」と

クロエに飲ませようとするダイアン

薬瓶にママの名前が書いていたと言うと

レシートが巻きついていただけ、とはぐらかされてしまいます

 

不安になったクロエがもう一度薬瓶を確認すると

確かにクロエの名前で「トリゴクシン」という薬名が書いていました

しかしラベルの裏には、剥がされたシールの跡にダイアンという文字

クロエは「トリゴクシン」を検索しようとしますがネットが繋がらない

薬局に電話をかけると番号で問い合わせたことがバレてしまう

ついには全く知らない男性に電話をかけて調べてもらうと

「トリゴクシン」が心疾患の薬だとわかりましたが

カプセルは赤色の1種類だけだというのです

 

クロエはカプセルを吐き出し保管するようになります

そしてダイアンに映画を見に行くことを提案します

映画館は薬局のすぐそば

トイレに行くと嘘をつき薬局に向かうクロエ

薬剤師に緑のカプセルを見せると

それは「ライドケイン」という犬用の筋弛緩剤だと教えられます

もし健康な人間が飲んだとしたら、歩けなくなると

 

そこに現れたダイアン

新しい薬のせいで妄想がおこるのよと言い訳し

クロエを無理やり連れ戻し部屋に閉じこめてしまいます

でもたとえ歪んだ愛情でも、愛していることに違いないんですね

その証拠に食事はちゃんと用意している

(脱出をはかる前のクロエちゃんの食べっぷりが可愛い)

ただ娘を独占したい

障害児を立派に育てている母親だと認められたい

窓から抜け出し(シーツはそのために使うのか)屋根を這い

違う部屋から自分の部屋に向かい車椅子に乗る

今度は階段エレベーターのコンセントが壊され

やむなく階段を転げ落ちるクロエ

車椅子だし、歩けないし、喘息だし

アベンジャーズと真逆で、超ゆったりなのにハラハラする(笑)

動きが遅い分、いつ捕まるかもしれないという恐怖

偶然通りかかった知り合いの配達員トムに助けを求めると

「警察か、病院か」と訊ねられ「警察」と答える

しかしそこにダイアンが戻ってきて、トムの首にインスリンを打ち

クロエを地下室に閉じ込め、トムを殺害するのでした

(トム、めっちゃいい人だったのに)

地下室でクロエが見たのは大学の合格通知と

幼少期の自分が立っている姿の写真

クロエという名の赤ちゃんの死亡証明書

病院から新生児が誘拐されたという新聞記事の切り抜き

 

私はママの子じゃなかった

しかも病気でも何でもなく、健康で歩けた

ママが毒を盛って私をこんな身体にしたんだ

代理ミュンヒハウゼン症候群

2015年にアメリミズーリ―州で実際に起った

ディー・ディー・ブランチャード事件を思い浮かべます

 

クロエはいちかばちか、ダイアンの目の前で

地下室に保管していた劇薬有機リン酸塩」を飲みこみます

すぐに胃を洗浄しなければクロエは死んでしまう

やむなくクロエを病院に運ぶダイアン

一命を取りとめたクロエは、看護師に危険を知らせようとしますが

声が出せず、紙に「MOM」と書くのがやっと

その時ナースコールがなり看護師が出ていくと

ダイアンはクロエを車椅子に乗せ病院を出ようとしますが



看護師の知らせを受けた警備員に見つかり

銃を取り出したダイアンは肩を撃たれ

その衝撃で階段から落ちてしまいます

7年後

医療刑務所に入院しているダイアンの見舞いに来たクロエ

同じ障害をもつ子どもたちを助ける仕事をしていて

(結婚して)娘は両親に懐いていると話します

そして「おくすりの時間よ」と口の中から

ラップに包まれた緑色のカプセルを出すのでした

 

17年間ずっと愛していた、信じていた

そのぶん恨みも大きい

失った時間は永遠に取り戻せないのだから

ディー・ディー・ブランチャードの娘ジプシー・ローズも

母親を殺し、刑務所でやっと自由になれたと語ったそうです

 

 

【解説】allcinema より

search/サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が車椅子の娘を溺愛する母親の狂気の暴走を描いたサイコ・スリラー。献身的に支えてくれる母への疑念が芽生え始めた車椅子の少女が、やがて恐るべき真実に近づき、必死の逃亡を図る恐怖の行方をスリリングに描く。出演は母親役に「キャロル」「ミスター・ガラス」のサラ・ポールソン、その娘役で新人のキーラ・アレン。
 郊外の一軒家に暮らすシングルマザーのダイアンと娘のクロエ。生まれつき体が弱く、車椅子生活を余儀なくされていた娘をダイアンは溺愛し、献身的に世話してきた。一方クロエは車椅子のハンデにも常に前向きで、大学へ進学し自立しようと勉学に励んでいた。そんな中、母親が新たに用意してくれた薬に疑問を抱き、自分で調べようとするクロエだったが…。