クラッシュ(1996)

オープニングのクレジットがカッコいい

原題も「Crash」

 

お互いの浮気を認めている倦怠期の夫婦が

交通事故をきっかけに性的興奮を覚えるようになり

同じ嗜好を持つ仲間とアンモラルなセックスに目覚めていくというもの

運転中の車の中、事故車の中、愛や性別や相手に関係なく発情し

衝突を起こした瞬間絶頂に達するパラフィリア(性的倒錯)

こんな(精神疾患とされる)変態カーマニアそうはいないでしょうが

玉突き事故に出くわした登場人物が

事故車や怪我人の写真を次々撮るシーンがあるんですね

でもたとえノーマルな人間であっても、身近に事件や事故があると

現場に集まりスマホで撮影する

無意識に気分は高揚し、もっと詳しく見たい

(撮影した動画を)誰かに見せたいという気持ちになってしまう

不幸な事件や事故を見て、実は快悦しているかも知れない

誰にでもそういう部分はあると思うんですね

さらにクローネンバーグの凄いのは

5分に1回くらいセックスシーンがあるにもかかわらず(笑)

ほとんどセクシュアリティを感じない

登場人物が興奮しているにもかかわらず、見ているほうは置いてけぼり

観客を共感させないように(演出)作られているのです

カメラはピーター・サシツキー

今見返しても、異形の傑作ですが

不満をあげるとすれば(時代的に)女性たちが受け身すぎること

男性優位主義を感じます

映画製作者のジェームズ(ジェームズ・スペイダー)は映画クルーと

妻のキャサリンデボラ・カーラ・アンガー)は男と飛行場でセックス

家に帰るとお互いのセックスについて話し(お互い満足しなかった)

キャサリンは「に期待ね」とジェームズと抱き合います

ある日、ジェームズの運転する車が正面衝突

相手の運転手は死亡し、その妻ヘレン(ホリー・ハンター)は

胸をはだけてジェームズに見せます

ジェームズは入院した病院で、ヘレンと再会

ヴォーン医師(イライアス・コディーズ)から

死んだヘレンの夫の事故写真を見られ

さらに退院したジェームズが、事故車を見に行くと修理されておらず

ジェームズが浮気した女たちの写真がばら撒かれていました

そこにヘレンが現れ、ジェームズは新車でヘレンを送ることにし

途中事故を起こしかけたジェームズは、ヘレンに欲情

ふたりは駐車場でセックスをします

その後もジェームズはヘレンと関係を持ち

ふたりはヴァーンが主催する「カー・クラッシュ・マニアの会」に参加します

ジェームズ・ディーンが死んだ時の交通事故を再現するため

ヴァーンとスタントマンが車を激突させます

(「理由なき反抗」の赤い革ジャンを着てディーンを演じるおっさん 笑)

取り締まりにやって来てた警察から

ジェームズ、ヘレン、ヴァーン、スタントマン4人が車で森へ逃げると

ヴァーンとヘレンがお互い興奮

到着した家には交通事故で下半身が不随になった

ガブリエル(ロザンナ・アークエット)という女性がおり

ヴァーンはジェームズに、有名人やガブリエルの交通事故写真や

ヘレンの夫の死亡写真を見せます

ジェームズがヴァーンになぜ交通事故に関心があるか理由を訊ねると

「自動車事故は破壊的ではなく 生産的出来事 性的エネルギーの解放

事故で強烈な死に方をした人間の性的エネルギーと同じ

自分自身もそれを経験するということ それが俺の本当のテーマだ」

(破壊こそ再生、という意味だと思う)と答えます

次にジェームズとヴァーンはキャサリンの車を危険走行で追いかけ

ヴァーンに興味を持ったキャサリンは、ジェームズとセックスしているとき

「ヴァーンとセックスしたら?」と提案します

「カー・クラッシュ・マニアの会」のビデオ鑑賞会の日

事故のビデオを見ながら、メンバーは興奮していきます

(ブラジャーをしているおっさんが強烈)

その後ジェームズとヴァーンは売春婦を買い

ジェームズの運転する後部座席でヴァーンが売春婦とセックス

別の日にはジェームズヴァーンとキャサリン3人でドライブ

ラジオで事故のニュースを知り現場に向かうと

ヴァーンは事故車や犠牲者の写真を撮り始めます

金髪のかつらを見つけたヴァーンは

事故を起こしたのは「カー・クラッシュ・マニアの会」のひとりで

ジェーン・マンスフィールドの事故を再現したのだと知ります

次に3人は車についた血を洗い流すため、洗車に向かいます

ヴァーンはキャサリンと激しくセックスを交わし

(洗車シーンと濡れ場の一体化)

家に帰るとヴァーンとのセックスでキャサリンに出来たあざを見て

興奮するジェームズ

新車を買いに行くガブリエルに付き合うジェームズ

ロザンナ・アークエットが可愛いな)

試乗するのを手伝うディーラーが

悩ましい身体障碍者に戸惑っている(普通の人間の反応)

駐車場でガブリエルとセックスを始めるジェームズ

ガブリエルの足の装具や傷跡に興奮したジェームズに

「(傷口に)入れてみる?」

ヴァーンから電話で呼び出されたジェームズ

ヴァーンタトゥーを入れていて、ジェームズにもタトゥーを入れさせます

車の中でお互いのタトゥーを舐め合い、キスをする

しかしこの中途半端なホモ行為のせいで

ヴァーンとジェームズは、より強い刺激を求めるため

交通事故へのフェチズムをますますエスカレートさせていきます

ヴァーンと、ジェームズは危険走行を繰り返すようになり

ヴァーンは事故を誘発するかのように

ジェームズとキャサリンの乗る車を追いかけ激突しようとします

しかしヴァーンは車を制御できなくなりバスに激突して死亡

ヘレンとガブリエルは廃車置き場に向かい

ヴァーンが事故死した車の中でセックスします

ジェームズはヴァーンがしたのと同じようにキャサリン車を追いかけ

後方から衝突キャサリンの車は崖から転落してしまい

ジェームズはキャサリンところに行き

倒れているキャサリンとセックスをします

サリンは満足しなかったのか

「次こそはきっと…」と繰り返すのでした

それにしても、このレビューだけで

私は何回セックスと言ったのでしょう(笑)

ちなみに4K無修正版といっても、ぼかしあり

ヘア解禁ではございませんでした

(気になる方がいるかも知れないので 笑)




【解説】映画.COMより

ザ・フライ」「裸のランチ」などで知られるカナダの鬼才デビッド・クローネンバーグ監督がイギリスのSF作家J・G・バラードの小説を映画化し、第49回カンヌ国際映画祭で審査委員特別賞を受賞した作品。自動車事故をきっかけに倒錯的セックスにのめりこむようになった男女の姿を描き、過激な性描写などで賛否両論を巻き起こした。倦怠期にあったジェームズと妻キャサリンはハイウェイで衝突事故を起こす。やがてジェームズはその事故で夫を亡くしたヘレンと再会。事故の瞬間にエクスタシーを感じ、それを忘れられなかったジェームズはヘレンとセックスをし、さらに自動車事故で性的快感を得た者たちによる集会に参加することに。その指導者的存在の男ボーンはジェームズとキャサリンをさらなる官能の世界に導いていくが……。主人公ジェームズ役に「セックスと嘘とビデオテープ」のジェームズ・スペイダー、ヘレン役に「ピアノ・レッスン」のホリー・ハンター。96年製作、日本では97年に劇場公開。製作25年を迎える2021年、「4K無修正版」でリバイバル公開。

1996年製作/100分/R18+/カナダ
原題:Crash
配給:アンプラグド
日本初公開:1997年1月25日