ナイト・オン・ザ・プラネット(1991)

原題は「Night on Earth」(地球上の夜)

深夜食堂」ならぬ「深夜タクシー」にまつわる5本のオムニバス

深夜食堂」で真夜中の背徳飯が食べたくなるように

夜遊びしたあとのタクシー帰りが懐かしい(笑)

タクシーに乗っている時間だけで

それぞれの人生が垣間見れて「その後どうなったの?」と気になる

クスッとできて、洒落ているけどちょっと皮肉

しかも制作費のほとんどが出演者のギャラという低予算(笑)

始まりはロサンゼルス空港、午後7時7分

客はキャスティング会社に勤めるビクトリア(ジーナ・ローランズ)

運転手は自動車整備士を目指すコーキー(ウィノナ・ライダー)

コーキーを気に入ったビクトリアは「映画に出ないか」と誘いますが

彼女はあっさり断るのでした

へビ―スモーカーでガムクチャクチャ

口もマナーも悪いけど、実はしっかり周りが見えいる

だんだんとウィノナが好きになる(笑)

ニューヨーク午後10時7分

客は寒さに耐えきれずタクシーに乗り込むヨーヨー(ジャンカルロ・エスポジート)

運転手は東ドイツからニューヨークに来たばかりの移民でしかも勤務初日

元サーカスのピエロ、ヘルムート(アーミン・ミューラー=スタール)

早く家に帰りたいヨーヨーはヘルムートに代わり運転することにします

そこにヨーヨーの義理の妹乱入

ろくに英語を話せないヘルムートに負けない

訳わかんないスラングで喧嘩が始まる(笑)

ヨーヨーを送り届けた後

ヘルムートは無事にニューヨークに戻れたのでしょうか(笑)

パリ午前4時7分

客は大使館に行くというエリート外交官ふたり

運転手はコートジボワール出身のイザーク(イザーク・ド・バンコレ)

(自分たちも黒人なのに)黒人差別発言するふたりを

頭にきたイザークは途中で降ろしてしまいます

差別している人間に、差別されている側の人間の、ちっちゃい復讐(笑)

次に乗せた客は盲目の女性(ベアトリス・ダル)

目が見えないにもかかわらず道を指図しイザークの出身地も当てる

料金をサービスしようとすると「施しは受けない」と正規の料金を支払う

女性を降ろした次の瞬間イザークは事故を起こしてしまい

「目が見えないのか!」と暴言を吐かれ、女性に笑われるのでした

ローマ午前4時7分

客は心臓の悪い神父(パウロ・ボナチェッリ)

運転手はお喋りなジー(ロベルト・ベリーニ)

ジーノは神父にいきなり懺悔を始めると

それがまた、カボチャや羊とヤッたとか(羊売られるとこが笑)

兄の妻と関係を持ったとか、下ねたばかり

神父は気分が悪くなってしまい

しかも運転が荒いため、薬を飲むことが出来ず死んでしまいます

動揺したジーノは神父を公園のベンチにおきざりにするのでした

こんなしょうもないネタが、本物(アドリブ)に見えるのは

ベリーニとウディ・アレンだけ(笑)

ヘルシンキ午前5時7分

客は酔っ払いの労働者の男性3人

運転手はミカ(マッティ・ペロンパ)

男たち(ひとりは眠ってる)は会社をクビになり離婚を突きつけられ

人生最大の不幸に見舞われたと嘆き、ミカにも不幸話を促します

そこでミカが「子どが未熟児で生まれ、長く生きられないと告げられたが

頑張って生きてこれからという時に死んだ」と話すと

いの醒めてきた客は涙を流しミカを慰めるのでした

やがて目的地に着きふたりが眠ているアキを起こし

「ここはどこだか分かるか」と訊くと

アキは「ヘルシンキだろ」と金を払い下車するのでした

まさかのカウリスマキ兄弟ネタ?(笑)

ちなみにジャームッシュとアキは親交が深いそうです

「おはよう!アキ」ラストは爽やか

この映画が魅力的なのは

(ローマ版は好みが分かれるところ 笑)

登場人物は皆、貧しかったり、差別されていたり

なにかしらの問題を抱えているのだけど

正直に明るく生きている姿だと思うんですね

今こうしている間にも、世界中で様々なドラマが生まれている

コロナの制限もなくなったし

さて、旅に出ましょうか

 

【解説】映画.COMより

ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5つの都市で同時刻に走るタクシーで起きる物語をオムニバスで描く、ジム・ジャームッシュ監督作品。大物エージェントを乗せる若い運転手、英語の通じない運転手、盲目の女性客と口論する運転手、神父相手に話し出したら止まらない運転手、酔っ払い客に翻弄される運転手。地球という同じ星の、同じ夜空の下で繰り広げられる、それぞれ異なるストーリーを描く。ウィノナ・ライダージーナ・ローランズロベルト・ベニーニら豪華キャストが集結。

1991年製作/129分/アメリ
原題:Night on Earth
配給:フランス映画社