パラダイスの夕暮れ(1986)

デートは映画に限る その後酒だ」


原題は「Varjoja paratiisissa」(楽園の影)

アキ・カウリスマキの「労働者三部作」の1作目

お金もないし、若くもないし、美男美女でもない

出会った男女がくっついたり離れたりするだけ

こんな盛り上がらない恋愛映画見たことない

ふかす煙草、バンドの演奏、ダンスシーン、7インチのレコード

殺風景な部屋、コーヒーカップ、ダイニング

職業や身なりでの差別(ホテルやレストランの入店拒否)

理不尽に対する怒りが淡々と描かれていくだけ

 

けど、よかった

そんな貧しくて、なにもない毎日だから

小さな幸せが輝いて見える

人の親切が、誰かを好きになることが

大切なことだとわかる

仕事をクビになり、住むところもなくなったヒロインにとって

自分を好いていていて、何かと助けてくれる男は

最初は都合のいいだけの男でした

もう少し要領がよくて、いい職業で

結婚してもいい暮しが出来る男が現れるまでの繋ぎ

だけどラスト、ロマンスの欠片もない

その冴えなくて不器用な男を選ぶんですね

彼の無償のやさしさに気付いたから

この先も決して生活が豊かになることはないし

喧嘩ばかりするかも知れない

だけど本音で向き合える

 

それが結婚

1986年のフィンランドヘルシンキ

ごみ収集車の運転手のニカンデル(マッティ・ペロンパー)は

同僚に独立して会社を立ち上げようと誘われ

その気になり外国語教室にまで通いますが

作業中突然の心臓発作で同僚が死んでしまいます

ニカンデルは酒に酔い暴れ、気が付くと留置所

同じ留置所にいたメラルティンという男が失業中だと聞き

同僚の代わりに働らかないかと誘い

メラルティンはニカンデルと収集車に乗ることになります

ある日、スーパーのゴミの集積をしていると

以前ニカンデルの怪我を手当てしてくれたレジ係の女性

イロナが裏口で煙草を吸っていました

イニカンデルは運命を感じイロナをデートに誘います

部屋を整え、ワインを用意し、一張羅のスーツ

面倒臭いくさいメラルティンが邪魔に入るものの(笑)
花束を手にイロナを迎えに行きます

ところがニカンデルがデートに選んだのはビンゴ会場

飽きれたイロナは花束を置いて帰ってしまいます

なぜフラれたのかわからないニカンデルは

ひとり部屋に戻り

彼女のために準備したテーブルを払ってしまいます

(「タクシー・ドライバー」(1976)の影響を感じる)

やがてイロナが仕事をクビになり

腹いせに店長の小さな金庫を盗み職場から逃げると偶然

給油中のニカンデルを見つけました

イロナはニカンデルに遠くへ行こうと誘います

突然のことで手持ちのないニカンデルは

メラルティンにお金を借りに行くことにします
メラルティンは(幼い娘の貯金箱から拝借した)お金を快く渡す

やってることは(女性から見たら)困ったもんだけど(笑)

仕事を紹介してくれた、ニカンデルへの恩は決して忘れない

メラルティンのことがだんだん好きになる

ニカンデルとイロナは海辺のホテルに泊まりますが

律儀にも部屋は別

翌朝、イロナが金庫を盗んだ事を知ったニカンデルは

返した方がいい、俺に任せろとヘルシンキに戻ると

スーパーの事務所に忍び込み金庫を戻します

おかげでイロナは警察に連行され聴取されますが

金庫が戻ったことで釈放

さらにイロナは同僚と住んでいた部屋を出ることになり (会社の寮?)

ニカンデルの部屋に転がり込んできました

(そこでもメラルティンが気を利かせてニカンデルを早退させ)

ニカンデルとイロナは結ばれ、一緒に暮らすようになります

やがてイロナは高級洋服店での仕事を見つけ

お祝いにニカンデルが高級レストランに予約すると

入店を断られ、結局屋台の軽食を食べるハメになります

 

その高級洋服店のオーナーに見染められたイロナ

食事に誘われたのは、ニカンデルと入店できなかった高級レストラン

気取ったレストランも、オーナーもなぜか居心地が悪い

店を出てニカンデルの部屋で帰りを待つイロナ

その頃、ニカンデルはチンピラに襲われてしました

翌朝仕事に来たメラルティンが倒れたニカンデルを発見

救急病院に運び、意識を取り戻したニカンデルに

イロナに正直な気持ちを伝えろと説得します

 

メラルティンの教えに従い。イロナの店に行ったニカンデルは

いきなり「新婚旅行に行こう」の告白(笑)

「食べていけるの?」

「毎日イモだ」

「いいわ」

ふたりをメラルティンが収集車で埠頭まで送っていきます

新婚旅行先は(エストニアの)タリン

(船に旧ソビエトのマークが描かれている)

メラルティンは出航した船を笑顔で見送るのでした

 

もしかしたら、アキのなかで一番好きかも

ほかの作品を見るのは、これからなんだけど(笑)



【解説】映画.COMより

仲間の死によって独立の道を断たれた、ゴミ収集車の運転手ニカンデル。スーパーのレジ係イロナに恋をした彼は、彼女をデートに誘ったものの、ビンゴ会場に連れて行ってしまい大失敗。ところが、仕事をクビになったイロナが彼のもとに転がり込んでくる。2人の関係はうまくいったかのように見えたが……。アキ・カウリスマキ監督の長編第3作。主演は、カウリスマキ作品には欠かせない
マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネン。

1986年製作/80分/フィンランド
原題:Varjoja paratiisissa