エール!(2014)

原題は「La famille Belier」(ベリエ家の人々)で

2022年アカデミー作品賞、助演男優賞受賞、脚本賞を受賞した

「コーダ あいのうた」(2021)のオリジナル版ということ



私も少しは手話を覚えておこうかと

YouTubeで手話動画を見ることがあるのですが

聾唖者にとっては口の動きや顔の表情も文法のうち

表現はストレートで、同じ言葉や文章は

その仕草やスピードから意味をくみ取ります

(作品内の手話は適当らしいが 笑)

そのため健聴者のように”たとえ話”や遠回しな言い方は通じにくい

それが聾唖者ばかりの家族だと余計そうなってしまうでしょう

しかもフランス映画なので

セックスにようなタブーな話題についても自由で、考え方がおおらかですね

フランスの村で酪農家とチーズの製造販売をしているベリエ家

両親と弟は聾唖者

なので長女で高校生のポーラが獣医とのやりとりから

肥料の買い付けなど農協との取り引き、チーズの販売

家族の手話通訳を全て引き受けていています

なので授業中寝てしまうことも

村長選挙が近づいたある日

現村長が農地を開発しようとしているのに怒った父親は

村長に立候補することにします

聾唖者は村長になれないというポーラに

「耳が聞こえないのは個性だ」とやる気満々の父親

同じ頃、課外授業を決めなければならなかったポーラは

ちょっと気になる男の子、ガブリエルがコーラス部に入ることを知り

コーラス部に入部することを決めます

そこでポーラの声を気に入ったトマソン先生は

ガブリエルと発表会でデュエット曲を歌わせることにします

さらにパリの音楽学校のオーディションを受けてみないかという

しかも先生が選んだデュエット曲は娼婦への愛を囁く官能的な歌(笑)

ポーラの家に歌を練習にやってきたガブリエル

ふたりのムードが盛り上がったそのとき、ポーラに初潮が来てしまいます

 

そのことを母親が大喜び

(娘に生理がこないことを心配していたのだろう)

血のシミの付いたズボンを父親にも、弟にも

ガブリエルにまで見せつけるのです

しかも父親は「娘とヤッのか」とガブリエルに詰め寄る

ガブリエルは逃げるように帰り

翌日ポーラは学食で、ガブリエルのガールフレンドから

「シミ女」と陰口を言われてしまいます

確かにうちの両親も悪いけど、女の子の秘密を学校でバラすなんて

怒ったポーラはガブリエルにビンタをくらわせます(ウィル・スミスか!)

聾唖の家族と、父親の選挙と

母親の音楽学校のあるパリ行きに反対のせいで

ポーラは音楽学校の受験を辞退し、ガブリエルとの仲も宙ぶらりん

悪意があるわけでも、非常識なわけでもないけど

ハンディによって他の人と違うことをしてしまう両親と自分との溝

そんな深刻な場面でも「じゃあポーラの部屋をくれ」と言ったり

ポーラの親友のマチルドに手話を教えるとイイ感じになったり

弟クンだけはマイペース

ゴムアレルギーはお気の毒だけど(笑)

 

やがて父親は父親なりに、娘を解放しようと考えるようになります

農場には使用人を雇おう、知り合いを手話通訳に頼もう

もっと早くするべきだったんだ



そしてポーラが発表会でガブリエルと歌ったデュエット曲

もちろん家族には聞こえない

だけど皆が感動しているのは伝わります

娘には才能がある

その夜父親は娘の歌を喉の振動で感じます

そしてついにポーラに受験させる決意をするのです

時間がない、パリへ急げ



それを知ったガブリエルは、トマソン先生とポーラを追いかける

そしてオーディション、わざとピアノ間違えてポーラを助ける先生

昇給にも昇進にも繋がらない、なにひとつ自分のためじゃない

だけど神様はちゃんと褒美をくれました

トマソン先生に思いを寄せる同僚の美人教師

ポーラが手話付きで歌うシーンは感動的

自分があるのは、パパとママがあってこそ

でも別れは終わりじゃない、新たな始まり



エンドロールで描かれる「その後」

父親は村長になったようです



トマソン先生は美人教師とゴールイン

弟とマチルドは交際を続け

ポーラもガブリエルと無事に付き合ったようです

前半は下ネタありのコメディなので

ファミリー向けと呼ぶのには難しいですが(笑)

ラストは全員ハッピーエンドなので、後味はとてもいい



これでデュエット曲やオーディションの曲が

(フランスでは有名かもしれないけど)

もう少し馴染みのある曲だと、日本でもヒットしたかも





【解説】映画.COMより

聴覚障害を持つ家族の中でただひとり耳の聞こえる少女が、歌手になる夢を家族に理解してもらおうと奮闘する姿を描いたフランス製ヒューマンドラマ。フランスの田舎町に暮らすベリエ家は、高校生の長女ポーラ以外の全員が聴覚障害者だったが、「家族はひとつ」 を合い言葉に明るく幸せな毎日を送っていた。ある日、ポーラは音楽教師からパリの音楽学校への進学を勧められる。しかしポーラの歌声を聴くことのできない家族は、彼女の才能を信じることができない。家族から猛反対を受けたポーラは、進学を諦めようとするが……。人気オーディション番組で注目された新人女優ルアンヌ・エメラが主人公ポーラ役で歌声を披露。共演は「しあわせの雨傘」のカリン・ビアール、「タンゴ・リブレ 君を想う」のフランソワ・ダミアン、「ゲンスブールと女たち」のエリック・エルモスニーノ。「ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者」のエリック・ラルティゴが監督・脚本を手がけた。フランス映画祭2015で観客賞を受賞。