コーダ あいのうた(2019)

原題も「CODA

2014年のフランス映画「エール!」のリメイクで

Codaとは「 Child of Deaf(ろう者) Adult」のこと

94アカデミー賞では作品賞、脚色賞、助演男優賞3部門で受賞

動画配信サービス(Apple TV+映画の受賞は初めて

 

ろう家族のなかでたったひとり健聴者に生まれた女子高校生

家族の耳代わりとなり、手話通訳する毎日を描いています

(今でいうヤング・ケアラー)

職業が酪農から漁業へ、きょうだいが弟から兄になりますが

プロットはほぼ同じ

ただオリジナルではデュエットの相方への恋心や

合唱の先生、女友達や選挙にもフォーカスしますが

こちらはあくまで家族がメインで、性的コメディはやや控えめ

(父親の下品な手話はこっちが上だけど 笑)

よかったところは選曲のセンスの良さ

デヴィッド・ボウイの「スターマン(Starman) 」

ジョニ・ミッチェル「青春の光と影Both Sides, Now)」

ザ・クラッシュ「「アイ・フォウト・ザ・ロウ I Fought the Law

誰でも一度は聞いたことがある名曲ですし

ヒロインの気持ちをあらわすのにマッチしていたと思います

 

マサチューセッツ州の港町でトロール船の漁業を営むロッシ一家

明け方の海、漁師の女の子ルビーの力強い歌声が響きます

ツカミはばっちり(笑)

でも釣った魚を売るためには

猟師の仕事のほぼすべてを手話通訳しなければいけません

新学期が始まりますが、学校の授業は居眠り

クラスメイトから馬鹿にされているのを肌で感じています

部活を決めなければならない日

気になっていたマイルズが合唱部に入ることを知り

自分も入部を決めるのでした

だけど過去に「言葉がヘン」と言われた経験から

恥ずかしくて人前で歌えない

ルビーの声の良さに気付いた顧問のV先生は

発表会に向けマイルズデュエットを組ませます

さらに(マイルズも目指しているボストンにある

バークリー音楽大学進学するよう勧めるのでした

お金がないというルビーに奨学金制度がある

さらにV先生の家で個人レッスンを受けることになります

家族は歌を勉強することを理解してくれません

ルビーがいなくなったら家族はどうなると責めます

だけど家族のために犠牲になりたくない

音楽を諦めたくない

 

兄のレオ はそんなルビーに嫉妬しています

兄貴なんだ、男なんだ

ルビーがいなくても魚を売れる、組合だって作れる

なのになぜ両親はルビーばかり頼りにするんだ

「お前が生まれるまで家族は平和だった」

家族の中でもろう者と健聴者の壁ってあるんですね

自分とは違う・・・

 

こんなこと、妹に言うなんて普通じゃ考えられませんが(笑)

健聴者のように曖昧な言い方や雰囲気で気持ちは伝わらない

正直でストレートな言葉で伝えることが大事

両親に反発しルビーがマイルズと崖のある湖に

(仲直りのため)遊びに行った日

政府から漁獲の調査にやってきた女性監視員が

ロッシ家の船に乗り込みます

そして父親と兄レオが耳が聞こえないことを知った女性監視員が通報

警告のサイレンに気付かなかった父親と兄は

海上警察に逮捕されてしまうのです

裁判で父親は漁の資格をはく奪され、多額の反則金を言い渡されます

しかし漁をしないと反則金は支払えない

裁判官は、健聴者を乗船させることを条件に特別に漁を許可します

 

それはルビーが進学を諦めた瞬間でした

私が船に乗るしか、家族を救う方法はない

そしてやって来た発表会、着席するロッシ一家

最初はまわりの空気を読まず、手話会話する両親ですが

次第にルビーの歌声に感動する観客の様子を感じます

レオの彼女も「上手」と褒める

 

クライマックスはルビーとマイルズのデュエットシーン

そこから音のない世界

音楽は知らない、でも手拍子、リズム、振動は感じる

笑顔、涙を流す人も

娘には自分の知らなかった才能があったんだ

これってサイレント映画ではないですけど

音がないからこそわかりあえる世界もあるんですね

 

V先生はルビーをバークリー音楽大学に推薦していました

(遅刻を許さないと言っていたのに謎 笑)

そして発表会の後(翌日が試験日)今からでも間に合うと伝えます

発表会から帰った夜、トラックの荷台にルビーと腰かけたお父さんは

歌ってくれと、ルビーの喉に指をあてます

翌朝、家族に突然起こされたルビーは

ボストンに行って試験を受けようと言われます

でもナビも聞こえない、なんとか試験会場まで辿り着いたものの遅刻

一応試験は受けさせてもらえることになったものの

楽譜を忘れたうえ、緊張して声がでない

だけどどちらもV先生の機転によって助けられます

ルビーは観覧席にいる(無断で入った)家族に気付き

そこからが手話歌、それは審査員の心にも響きます

見事名門校に合格したルビー

 

マイルズが不合格っていうのはリアルよね

親からの期待はわかるけど、普通過ぎて

才能や魅力を見せつけるシーンがない(笑)

ラスト、旅立ち

家族が遠くに行ってしまうときは

いくら幸せを願っていても辛いもの

ルビーは車の窓からI love youI really love you)」の

手話を送るのでした

アメリカ手話には、日本手話と共通するものもいくつかあって

I love youI really love you)」は

日本でも(写真で撮る時のピースサインのように)使われているそうです

 

最強のふたり(2011)もですけど

元がフランス映画だからでしょうか

障害を描いているけど、コミカル

過剰な演出はないけど、感動する

「お涙頂戴」じゃないのに、泣きそうになる

 

誰にでもおススメできる感動作

ただし、PG12指定には間違いないのでご注意を(笑)



【解説】allcinema より

2014年のフランス映画「エール!」を、舞台をアメリカに移してリメイクした感動の家族ドラマ。家族の中でただ一人耳が聞こえるために家族と健聴者の“通訳”係として欠かせない存在だった主人公が、自らの夢と家族のはざまで揺れる葛藤の行方をユーモラスかつ心温まるタッチで綴る。主演はTV「ロック&キー」のエミリア・ジョーンズ。共演に「シング・ストリート 未来へのうた」のフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。また主人公の家族は「愛は静けさの中に」のオスカー女優マーリー・マトリンはじめ実際に聴覚に障がいのある俳優たちが演じている。監督は「タルーラ ~彼女たちの事情~」のシアン・ヘダー。
 マサチューセッツ州の海辺の町に暮らす高校生のルビー。両親も兄も耳が聞こえず、家族の中で健聴者は彼女だけ。そのため、手話の通訳や家業である漁業の手伝いなど、家族が日常生活を送るうえでルビーのサポートは不可欠となっていた。そんな中、高校の新学期に合唱クラブに入部したルビー。そこで顧問の先生に歌の才能を見出され、名門音楽大学を目指すよう熱心に勧められる。ルビー自身も歌うことの喜びを知り、初めて夢を抱くようになるのだったが…。