ボウリング・フォー・コロンバイン(2002)

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原題も「BOWLING FOR COLUMBINE

アカデミー賞長編、ドキュメンタリー映画

フランスのセザール賞、最優秀外国映画賞

カンヌ映画祭では特別賞ほか多くの賞を受賞し

マイケル・ムーアを一躍有名にした作品


監督自らのインタビュー式のドキュメンタリー映画

ムーアはこの手法を原一男監督の「ゆきゆきて、神軍(1987)

ヒントにしたと答えています

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タイトルはコロラド州ジェファーソン郡コロンバインの郡立コロンバイン高校で

19994月に同校の生徒、エリック・ハリスとディラン・クレボルドが

銃を乱射した「コロンバイン高校銃乱射事件 」から

12名の生徒と1名の教師を射殺、重軽傷者24名を出した後両名は自殺しますが

ふたりが事件を起こす前、変わった様子はなく

ボウリングをしていたことがわかっています

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そしてコロンバイン高校の近くにはロッキード社のミサイル工場があり

生徒の両親の多くもこの工場で働いているいること

事件当日はアメリカ軍がコソボ紛争中のコソボへ最大の爆撃を行い

ビル・クリントンによる爆撃作戦の成功の会見を開いたわずか1時間後

銃乱射事件について会見を開いたこと

この事件から10日後、全米ライフル協会は近くのコロラド州デンバー

銃所持の権利を主張する集会を開いたことなどを

時にユーモラスに取材していきます

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この地域では銀行で口座を開設すればタダで銃がもらえ

スーパーマーケットで簡単に弾が買える

誰もが銃を持っている銃社会だから、事件が起きると考えますが


カナダではアメリカ以上の銃所持国で

スーパーでは自分のような外国人でもいくらでも弾も買えるにもかかわらず

銃による殺人事件が起こることはなく、黒人も安全に暮らせる

貧乏が原因かといえば、アメリカよりカナダのほうが失業率が高い

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流血の歴史が銃犯罪を生むのかといえば

ドイツにも、日本にも、イギリスにも、ロシアにも

虐殺の歴史はあるけれど銃犯罪はほとんどない


ならば過激なロックが若者に悪影響を与えていると人々は言う

実際にマリリン・マンソンの曲が原因で乱射事件がおきたと

申し立てがなされたそうで

マリリン・マンソン本人がインタビューに答えています

(マンソンが一番マトモで、ナイーブに見えるわ 笑)

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そして武装する権利の擁護」 全米ライフル協会会長

チャールトン・ヘストンにインタビューを申し込み

それがもう映画の中に出てくるようなスゴイ豪邸(映画の中だけど 笑)

ヘストンはムーアを快く迎え

彼の映画のポスターが飾ってある部屋に案内します

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そこでムーアは2000年に(ムーアの故郷)ミシガン州のフリントの小学校で

6歳の男児6歳の女児を射殺してしまった加害者が最年少の

銃による殺人事件についてどう思うかヘストンに尋ねます

ヘストンは答えられず部屋を出て行ってしまう

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これを見るとヘストンは間違いなく悪い人じゃない

彼は全米ライフル協会にちやほやされ

広告塔として元スターの知名度を利用されているだけ


しかも1923年生まれのおじいちゃん

子どもが銃を持つことは自分の意図することではなく

コロンバイン高校銃乱射事件 」もフリントの小学校で起きた事件も

本当に知らなかったのでしょう

まして暴力に命を奪われた人々に手向ける言葉が

すぐに思い浮かぶ人なんて、そういない

(撮影の翌年アルツハイマーを理由に会長を引退)

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一方でムーアのアメリカをいい国にしたいという熱い思いは伝わるけど

アメリカの銃社会や、人種差別や、政治問題を

こんなに堂々と批判してよく殺されないものだと思う

他の映画監督が、ここまでワスプやKKKNRAを非難したら

宿泊先のホテルに少なくても銃弾3発は撃ち込まれているはず(笑)


それだけアメリカ政府さえ手出しできない

ムーアにはビッグな後ろ盾があるということなのでしょう

ムーアと、ムーアのアメリカへの反逆ネタの映画を利用し

莫大な利益を得ている、なにか大きな存在が動いている(気がする 笑)

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最後にムーアは事件の被害にあった少年ふたりを伴って

大手スーパーマーケット、Kマート本社を訪れ

全ての店舗で銃弾の販売をやめさせることに成功、幕を閉じます

(だからKマートは経営破綻したのか)

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アメリカは変わらない

それどころかこの映画が製作された18年前より

さらに状況は悪くなっている

よその国を爆撃し、自国では銃乱射事件が起き続ける

 

昔見た時は、重いテーマながら

ありえない突撃インタビューに笑えたのですが(笑)

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トランプの大統領選とか、ミリシアとか

最近ではアメリカのリアルな姿を見れるようになり

この映画が伝えるアメリカの問題を

以前より真剣に考えるようになった気がします

 

 

【解説】allcinema より

 カメラとユーモアを武器に世の中の不合理に鋭く迫る異端のジャーナリスト、マイケル・ムーアが、全米に大きな衝撃を与えたコロンバイン高校銃乱射事件を足掛かりに、アメリ銃社会の矛盾を強烈に斬りまくった傑作ドキュメンタリー。全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストンにお得意のアポなし取材を敢行するなどまさに命を張った渾身の一作。ドキュメンタリーとして46年ぶりにコンペに出品されたカンヌ国際映画祭では、その圧倒的人気に急遽<55周年記念特別賞>を新設してその功績を称えた。
 1999420日、アメリカ・コロラド州の小さな町リトルトン。2人の少年は朝の6時からボウリングに興じていた。いつもと変わらぬ1日の始まり…のはずが、この後2人の少年は銃を手に彼らの通う学校、コロンバイン高校へと向かった。そして、手にしていた銃を乱射、12人の生徒と1人の教師を射殺し23人を負傷させた後、自殺した。マイケル・ムーアは問う、“なぜアメリカはこんなにも銃犯罪が多いのか”と。その疑問を解消するため、マイケル・ムーアはカメラとマイクを手に様々なところへアポなし突撃取材を始めるのだった。