快楽の漸進的横滑り(1974)

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「美しい死体を作りたいだけ」
原題は「Glissements progressifs du」(快楽の斬新的な変化)

「フレンズ ポールとミッシェル」(1970)と「続フレンズ」(1973)
私は小学生の頃テレビの吹替でみたきりで
14歳の女の子が妊娠出産、ラストで引き裂かれ続編で再会という
おおまかなあらすじしか記憶にないのですが
映画のヒットと共にヒロインのアニセー・アルピナは日本でも人気爆発
映画雑誌の人気投票では常に上位だったそうです

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しかし本作は過激なサドマゾヒズム
ネクロフィリア(死体愛好)を思わせる描写のため各国で上映禁止
もちろん日本でも未公開
でももし当時、日本の映画配給会社による
ヘタクソな「ボカシ」で見ていたら魅力は半減していたと思います

 

【ここからネタバレあらすじ】

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アリス(アニセー・アルビナ)のルームメイト、ノラが
ベッドに縛り付けられ、ハサミで胸を刺された状態で見つかります
刑事(ジャン=ルイ・トランティニアン)が駆け付け捜査しますが
アリスは譫言(うわごと)しか言いません

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アリスは修道女が管理している女子感化院に入れられ
真相を解明しようとする判事(マイケル・ロンズデール)や
修道女や神父までもを、魔力的な美貌と不可解な言動で惑わしていきます

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プロットは殺人事件の捜査というミステリーですが
どうやらアリスは人間の血に執着しているようです
拷問にかけられた血まみれのマネキン人形
断崖から転落した女教師の死体のブラウスを引き裂き、乳房と口を愛撫する
赤い飲み物、赤いペンキ

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美少女の皮を被ったサイコパス感がたまらない
素晴らしいファムファタール振り

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ついには女弁護士(叶恭子そっくり)を実況見分中に殺してしまう
ところがノラを殺したのは自分の作り上げた妄想で
最初の供述通り、実は別に犯人がいたというオチ
「最初から全部やり直しだ」と刑事がつぶやく

 

【ネタバレあらすじ終了】

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大胆で残酷で異常な世界観、数々の禁断のテーマと美しさの同居
その中にちょっとコメディを入れてくるセンス

可笑しいのが、女弁護士がアリスに対して言うセリフで
「あなた少し遊びすぎよ、類似、繰り返し、置き換え、模倣、もう沢山」
ロブ=グリエ、自分でもそう思っていたんだ(笑)

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あまり難しいことは考えず、ビジュアルで
可愛い女の子たちとSMプレイを見る映画
これは現実でないのです

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【解説】映画.comより
第2次大戦後のフランスで生まれた文学界の潮流「ヌーヴォー・ロマン」の代表的作家として知られるアラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、そのセンセーショナルな内容からヨーロッパ各地で上映禁止となった問題作。ルームメイト殺害の容疑で逮捕された美女アリス。心臓にハサミが突き刺さった被害者の体には、描きかけの聖女の殉教の絵が残されており……。出演は「フレンズ ポールとミシェル」のアニセー・アルビナ、「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン、「007 ムーンレイカー」のマイケル・ロンズデール、「ピアニスト」のイザベル・ユペール。日本では、特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」(18年11月23日~、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。