バラバ(1962)




「主よ、わたしのすべてをゆだねます
 私はバラバです」


「奇跡の丘」(1964)の続編ではないけれど、続編

BSプレミアムのラインアップはいつも感心させられます

私とオフ会してください(笑)


新約聖書の盗賊バラバの物語

キリスト教は理解が難しいものですが

これは主人公がキリストを信じたくても、信じれない

信仰心のない男なので、同じ目線で見ることができます


イエスの奇跡ローマ大火

をなんとなく知っていれば

ついていけるというわかりやすさもいい




ひとりの罪人を裁いたら、ひとりの罪人に恩赦を与える

そんなユダヤの慣習に「イエスかバラバか」と問われて

民衆は盗賊バラバ(アンソニー・クイン)を選びます

バラバは釈放され、磔となり死んでしまうキリスト


バラバは牢からから戻ったものの

愛する女ラケルはキリストの教えに取りつかれ

彼の復活を信じていました

そして石投げの刑で殺されてしまいます


「愛し合うんだろ?」

キリストが正しいなら、なぜ憎しみがあり

痛みしか残らないのか




ラケルの死で荒れてしまったバラバは

再び捕らえられますが、またもや死刑を免れ

硫黄鉱山に送られてしまいます

そこで20年もの間奴隷労働をしても死にません

落盤事故が起こり、皆が死んでも自分だけは生き長られます


やがて「死にたくても死ねない」伝説の男になり

剣闘士になるべくローマに連れていかれます


このコロセウムの描写が凄い

グラディエーター」(2000)もこの影響を受けているのでしょう

しかもライオンやゾウは本物

最上階まで埋め尽くされたエキストラ

冒頭での皆既日蝕も、実際のものを撮影したそうです




ジャック・パランスとの対決は迫力満点

パランスはこういう残忍さを押し出した悪役が実に似合う(笑)

勝利したバラバは、ついに自由を手に入れることができました


しかしペトロの言葉を誤解してしまい

ローマに放火するという狂信的な行動を起こしまうので

またもや捕まって、今度こそ磔にされてしまいます


死なない男が、ついに死ぬ瞬間

それはバラバがやっとキリストを信じることができた時でした

バラバは殉教できたのです


しかしこの磔刑死体の群れは、殉教の荘厳さを越えていますね

猛烈に感じる死臭は、これから先も次々と死体を作り出していく

キリスト教の行く末を暗示するようにも見えます




原作はノーベル文学賞を受賞しているだけあって

スペクタルだけでない、奥深いものがありました

やはり傑作だと思います


それでも私はこれから先も信仰をもつことはないでしょう

「~しなさい」という決めごとが、根本的に苦手なので(笑)



【解説】allcinemaより

ラウレンティス製作による、ユダヤ人の盗賊バラバの波瀾に満ちた半生を描いた歴史スペクタクル大作。スウェーデンノーベル賞作家ペール・ラーゲルクヴィストの原作で、実に内省的ムードの濃い、フライシャーの正攻かつ心理描写のダイナミズム光る傑作。
 凶悪な盗賊の親玉バラバは罪人として獄中の身にあった。そんな彼はある日、罪人を一人裁く代わりにもう一人の罪人を釈放する、という年に一度のユダヤ民衆の慣習によってイエスが刑に処されたことから、幸運にも釈放されることになった。棲み家に戻ると愛人(出番は少ないが印象的なマンガーノ)は既に信仰に目覚め、彼に改心するよう悟すが、受けつけぬバラバはキリストを罵る。やがて、奴隷戦士としてかき集められ、ローマの貴族を前に闘いを強いられたバラバは、戦士の中の信徒を殺せない。そして重労働を課された鉱山で火山の大爆発(この場面の迫力も凄まじい)に遭うが、奇跡的に助かる。自分にまといつく運命の崇高な力に徐々に気づき始めるバラバだが、生来の反骨者ゆえ、“選ばれし者”という真実を認めようとしない…。
 まるで「道」のザンパノを思わす、直情的な肉体派で自己本位の人物の、深い懊悩を全身で表現して、クインが見事