「私は地上に平和ではなく
剣をもたらすために来た
人とその父を敵対させ
娘とその母を
嫁とその姑を
家の者がその人の敵となる
私より父母を愛する者
子を愛する者は
私にふさわしくない
命を得ている者は失い
私のために命を失うものはそれを得る」
原題は『マタイによる福音書』
ピエル・パオロ・パゾリーニ監督は無神論者で、同性愛者で、共産主義者
(未成年の青年への淫行の容疑で、共産党から除名)
そのせいか、無神論者の私が観ても面白い
キリストの偉大さをドラマチックに描いた大作よりも
飾り気がないこちらのイエスほうが魅力的に感じます
余計なものも、無駄も一切無い
イエスの言葉の羅列と、イエスのアップばかり
俳優が素人というのも絶妙で、かえって神秘的に思えました
しかも老いたマリアは監督の実の母親で
セリフはほぼ聖書の聖句だけ
だけど、人間の行為として聖書を読み解いているので
どんな見事な演出をした作品より真に迫っていて
逆にわかりやすいですね
「奇跡」を否定するのではなく、ひとつの現象として捉え
「神」が「奇跡」を行うのではなく
「奇跡」が「神」を創るのだ、という見かたをしているのです
現世を捨て、傲慢にも「神」になろうとするイエス
逆に、現世での人間としての救いを求めようとするユダ
逆に、現世での人間としての救いを求めようとするユダ
「その人の名は知らない」と3度言う
ペトロのエピソードは、ちょっと切ない
そして、自分の息子としてイエスを愛するマリア
それぞれがとても人間らしいのです
爽やかで可愛い、それがかえって恐ろしいから
最大の見せ場である「キリスト復活」は
「ここにはいないよ、あっちへ行ってごらん」って(笑)
しかし、この客観的なあっけなさが
かえって難解で、クドクドしくせず
良かったのかも知れません
これも間違いない、名作、傑作でしょう
ただ、イエスが十字架から外されるときに
遠くで悠々と車が走っているのには
さすがに笑ってしまいます(笑)
(スマホでTV映像を撮ったので粗さはごめんなさい)
【解説】allcinemaより