シェイプ・オブ・ウォーター(2017)





ギレルモ・デル・トロ監督のダーク・ファンタジー

&ロマンス、&ミュージカル


第90回アカデミー賞では作品賞を含む4部門
第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞


正直、いきなり入浴シーンでの自慰行為は
私の好みのエロティックではありませんでしたが()

社会的批判をファンタジーにしてしまうセンスには

拍手を贈りたいと思います


この作品にもやはり、アメリカ南部に存在する人種差別
障碍者、同性愛者、そしてアカ(共産主義)に対する
強烈な差別や、パワハラ、セクハラには
考えさせられるものがあります





舞台1962年の、ワシントンDCのすぐ下に位置するメリーランド州

当時は白人(ワスプ)以外に、まだ人権はない時代でした

マイノリティの人々を「TheOther」(他の)と呼び

人間だと思っていません
Otherは、リンチして殺しても、いい存在だったのです


口のきけない(推定年齢40歳)イライザサリー・ホーキンス)や

アフリカ系である同僚のゼルダオクタヴィア・スペンサー)が

政府の極秘施設で掃除婦として働けるのも彼女らが「人間でない」から

もし何かの秘密を洩らすことでもあれば

リンチと死だけしか待っていないのです


その極秘施設に、ある日アマゾンで捕獲されたという
半魚人が運ばれてきます

ふたりには初めてあった時から、心は通じ合うものがありました

しかし半魚人はストリックランド(マイケル・シャノン)によって
酷い拷問を受け
ソ連との科学研究対決のために解剖し
水陸両用の人間を作ろうとされていたのです





イライザは、何とか半魚人を助けようと、親友のイラストレータ

ジャイルズ(リチャード・ジェンキンズ)に協力を求めます


この、勝つことこそが全て、暴力は正義と考えるサディスティックな悪玉

ストリックランドの愛読書こそ、当時ベストセラーだった

ThePower of Positive Thinking(積極的考え方の力)

なんと、トランプ氏が唯一信じているのも、その本なのです

それはストリックランドの家族像もアメリカ白人の理想の生活
( =ローマン・ロックウェル風 = ジャイルズが描いたイラスト)
良き時代、アメリ中流家庭


だけどストリックランドの実の姿は、内面モンスター

自分の地位を守るためにエスカレートしていく行動 





                                                                                
                                                                                      一方、ソ連のスパイである科学者、ボブは可哀そうな存在でした

イライザと半魚人との愛の知り、半魚人を助けようと途力しますが

祖国ソ連からはアメリカの研究を阻止するため半魚人を殺せと命令されます

イライザに協力し、半魚人を逃がすボブ

そのことは両国から命を狙われることになるのです


ジャイルズストリックランド新車、キャデラックぶっ壊シーン

ちょっと気分がいいです(笑)

(イライザの手話のファッ・・・ ”くたばれ”も)





そんなジャイルズは、隠れゲイ

好きな男性が働くパイのチェーン店に通い

けなげにも不味いパイを買う純情ラブ

だけど、「ゲイかも」と思われた瞬間の冷たい態度

理由がなく会社をクビになったのも、仕事をもらえないのも

たぶんそれが原因でしょう







水に決まった形(シェイプ)がないように、人間にも決まった形があるわけでないのです

水が温かくなったり、冷たく凍り固まったりするのと同じように

人の心も愛に満ち、温かくなったり、やさしく相手に尽くします

だけれど時には残酷になって、冷酷に突き放し

暴力により従わせ、気に食わないと簡単に殺してしまう

これが人間のありのままの姿


ラストはその後の人魚姫でしょうか

声を失った(アンデルセンの)ヒロインが大人になり

本物の愛を知り、海の王子様によって故郷に帰される


正直、私好みのラブ・ロマンスでもありませんでしたが

半魚人に、頭「なでなでして~」もらいたい願望は、芽生えました(笑)



だけど・・・


アマゾン奥地の水は、たぶん淡水だと思います(苦笑)





解説】allcinemaより
パンズ・ラビリンス」「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ監督が米ソ冷戦下を舞台に、政府に捕られた半魚人と、掃除婦として働く口の利けない孤独なヒロインの切なくもピュアな愛の物語を描き数々の映画賞に輝いた感動のファンタジー・ラブストーリー。主演は「ハッピー・ゴー・ラッキー」「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンスと、「ヘルボーイ」のエイブ・サピエンをはじめ数々の異形キャラクターを演じてきたモンスター役俳優の第一人者ダグ・ジョーンズ。共演にマイケル・シャノンオクタヴィア・スペンサーリチャード・ジェンキンス
 1962年、アメリカ。口の利けない孤独な女性イライザは、政府の極秘研究所で掃除婦として働いていた。ある日彼女は、研究所の水槽に閉じ込められていた不思議な生きものと出会う。アマゾンの奥地で原住民に神と崇められていたという“彼”に心奪われ、人目を忍んで“彼”のもとへと通うようになる。やがて、ふたりが秘かに愛を育んでいく中、研究を主導する冷血で高圧的なエリート軍人ストリックランドは、ついに“彼”の生体解剖を実行に移そうとするのだったが…。