ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022)

「幸福だった だからこんなに悲しいんだ」

 

原題も「Guillermo del Toro's Pinocchio

ピノ(Pino)とは松の木のこと

原作はイタリアのカルロ・コッローディの児童文学

Storia di un burattino」(あやつり人形の物語)

みんなが知ってる「ピノッキオ(ピノキオ)」

何度も映像化されている「ピノッキオ」

何を今さらストップモーション・アニメにする必要があると思ったのですが

これが意外と好かった(笑)

デル・トロお得意の異形への愛と

有害な「家父長制度」や

ファシストに対する批判

解釈的にも見事で、しっくりくる

第二次世界大戦中のイタリア

おもちゃ職人で大工のゼペットは10歳になる息子

カルロをハンガリー軍の誤爆で亡くしてしまいます

優しくて賢かったカルロ

 

ゼペットは立ち直ることができず

仕事もせず酒に溺れるようになります

 

それから何年かして、カルロの墓のそばに植えた松ぼっくりが育つと

ゼペットはその松の木を切り、カルロの代わりになる木の人形を作りました

酔っぱらって作った人形(笑)

釘は曲がり、左右はバラバラ

だけど「木の青い精霊」はゼペットの願いを叶え人形に命を与え

木の穴に住んでいたコオロギのクリケットに教育係を命じます

 

が、ピノッキオは何をやっても失敗ばかり

とんでもない乱暴者の破壊者で町の人々を怖がらせてしまいます

ゼペットといい子になり学校に通うことを約束したピノッキオ

しかし自由に動き喋る木の人形を発見した

ショーマンのヴォルペ伯爵と猿スパッツァトゥーラは

彼らのサーカスでピノッキオを働かせるため

嘘の甘い言葉でピノッキオを騙すのでした

ピノッキオのショーは話題となり、なんとムッソリーニまでやって来ます

しかしスパッツァトゥーラからヴォルペ伯爵が

お金を全部だまし取っていることを聞いたピノッキオは

ヴォルペ伯爵に復讐するためムッソリーニの前で

屈辱的な「うんち」「鼻くそ」の歌を歌います

銃で処刑されてしまうピノッキオ

 

その頃ピノッキオを探す旅に出たゼペットとクリケット

巨大な海の怪物に飲み込まれていました

「死の青い精霊」(木の精霊の姉)によって復活したピノッキオが到着したのは

少年が戦争で戦うための(ファシストによる)訓練校でした

そこで軍の高官ポデスタの息子、キャンドルウィックと友達になります

キャンドルウィックははじめて父親に反抗し

ポデスタは敵機に爆撃され死に、ピノッキオは爆風で飛ばされてしまいます

そこでヴォルペ伯爵に捕まり

改心したスパザトゥーラの助けで3人は崖から転落、ヴォルペは死に

ピノッキオとスパッツァトゥーラは海の怪物に飲み込まれ

ゼペットと再会するのでした

ピノッキオは怪物から脱出するため嘘をついて鼻を伸ばし

自らが犠牲となって魚雷を怪物に飲み込ませ爆発させることに成功

いつの間にこんなに賢くなったんだ(笑)

ピノッキオは海に投げ出されたゼペットを救うため

今すぐ生き返させてくれと「死の精霊」に頼みます

そうすれば永遠の命を失う、ゼペットは助かってもお前は死ぬという精霊に

それでも「パパを助けたい」と砂時計を壊すピノッキオ

 

ピノッキオは海底に沈んでいくゼペットを助け

クリケットとスパッツァトゥーラも無事浜辺に打ち上げられました

しかしピノッキオの意識は戻らず、そこにあるのはただの木の人形でした

クリケットは、木の精霊との

ピノッキオをいい子に導く役目を果たしたら、願いを一つ叶える」

という約束を思い出し「ピノッキオを生き返らせて」と願います

(オマエが導いたのはピノッキオでなくゼペットだったがな 笑)

そうして蘇ったピノッキオはゼペットと家に帰り

クリケットとスパッツァトゥーラと共に暮らします

やがてゼペットも、クリケットも、スパッツァトゥーラも、老いて死に

新たな旅に出る決意をしたピノッキオ

(キャンドルウィックと再会できるといいね)

人間になるとは、成長とは

失敗から学ぶこと

肉体ではなく、心(精神)が大人になること

家族を愛し、平和を愛するということ

外見的にも性質的にも違う人間をどう受け入れるかということ

 

ピノッキオは木の造形のままでした

でも最後には、不完全だからこそ愛おしいことに気付くのです

 

自分だって完璧じゃない

ちなみに原作ではピノッキオがいい子になることはなく(笑)

ゼペット爺さんを見捨て、コオロギは金槌で殺し、精霊を裏切る

ラストは詐欺師の狐と猫に木に吊るされ、ナイフで刺され放置

何日も叫びながら死ぬという

さすがイタリア、児童文学までマフィアの抗争(笑)

 

さすがに残酷すぎると批判が殺到し

「改心して妖精に本物の人間に変えてもらう」という

ラストに書き換えられたそうです

 

 

 

【解説】allcinema より

カルロ・コロディの名作童話を「パンズ・ラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督がストップモーション・アニメで映画化したファンタジー・ドラマ。孤独なおもちゃ職人のゼペットじいさんによって作られ、命を宿した木製の人形“ピノッキオ”が、人間になることを夢見ながらゼペットじいさんと繰り広げる愛と葛藤の大冒険を、ダークかつファンタジックなヴィジュアルで切なくもハートウォーミングに描き出していく。声の出演はピノッキオ役に新人のグレゴリー・マン、ゼペットじいさん役に「ハリー・ポッター」シリーズのデヴィッド・ブラッドリー、その他ユアン・マクレガーティルダ・スウィントンクリストフ・ヴァルツケイト・ブランシェットロン・パールマンら豪華俳優陣が名を連ねる。共同監督には「ファンタスティック Mr.FOX」でアニメーション監督を務めたマーク・グスタフソン。Netflixでの配信に先立ち、一部劇場でも上映。