おいしい生活(2000)




原題は「SMALL TIME CROOKS」
(セコイ悪党)

中盤までは初期のアレン映画のようなコメディ路線でした
前科者で泥棒な亭主レイ(アレン)が、仲間と一緒に銀行強盗するため
店を借り、地下に銀行の金庫まで穴を掘ろうとするのです
妻のフレンチー(トレイシー・ウルマン)はその店で得意のクッキーを売ります
店員に雇った従姉妹のエレイン・メイが最高(笑)

そのクッキーが美味しいと評判になり店は大繁盛
頓馬な経緯で銀行強盗は失敗しますが、偶然にも大金持ちになります





後半は階級差がテーマで、ちょっと教訓めいていましたね
どうにか上流社会入りをしたい妻のフレンチー
しかしいくら大金をもっていて、上流階級に紛れ込んでも
セレブが庶民を仲間と認めることはないのです

成り上がりで悪趣味、しょせんインフラと軽蔑し陰で悪口を言う
フレンチーは奮闘し、どうにか教養を身に着けようと
若くハンサムな画商デビッド(ヒュー・グラント)に入れ込んでしまいます
(ヒュー・グランドはこういうずる賢い役も似合います)


芸能人でも、スポーツ選手でも、宝くじの高額当選者でも
ある日突然、庶民が成功して大金を手にしたら
こんな結末を迎えるのが世の常なのでしょう
金額の大きさ=幸せの大きさ、と勘違いしてしまうのです

ゴテゴテと家の中に高級家具を置き
ワケノワカラン絵画をいいと思い
クラッシックやオペラを聴き
年代物のワインが美味しいと決めつけ
ウンチクを語ろうとする

自他ともに認めるインテリのアレンが
インテリも、金を持った庶民も皮肉る






これには本当に自分のやりたいこと、好きなこと
満足することはなにかを考えさせられます
いくら高価でも、好きでもない家具や
絵画に囲まれて暮らしても、幸せにはなれないのです


結局騙されて、一文無しになったフレンチー
最後にそばにいてくれたのは、夫だけでした


また、もとの泥棒に戻るオチはいただけないけれど(笑)
自分の身分にあった人と付き合い
身の丈にあった生活をするのがいちばんなのです

それでもいいから、いちどはセレブの生活を味わってみたい
そんな願いを捨てきれないのもまた、人間の性ですけれど



【解説】allcinemaより
ドリームワークス製作によるウディ・アレン監督・主演作品で、久々にドタバタ色の強い痛快コメディ。今度のパートナーは、TVシリーズ「アリーmyラブ」での過激なセラピスト役で新たなファンも獲得している歌手でコメディアンヌのトレイシー・ウルマン。
 元ギャングで一応(?)銀行強盗の経験もあるレイ・ウィンクラー。彼はある日、完璧な計画を思いつく。それは“銀行の近くの空き家を借り、そこから地下にトンネルを掘って金庫に到達する”というもの。が、その借りた空き家でカムフラージュにと妻のフレンチーが始めたクッキー屋が大繁盛する一方、肝心のトンネルは全然進まず……。