男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982)




シリーズ30作目
夢はブルックリンのジュリーにジゴロの寅
マドンナは田中裕子さん。

ストリー同様に沢田研二、田中裕子夫妻の
馴れ初めとなった記念作だそうです。

冒頭でオバちゃんが御前様からもらった松茸を前に
「寅ちゃん帰ってこないかなあ」というセリフは思いやりがありますね。
寅さんにも美味しい松茸料理を食べさせてあげたいのです。
でもその松茸が騒動になるんですけど。笑

湯平温泉の馴染みの宿に来た寅さん。
生前そこで母親が働いていたという青年、三郎と出逢います。
じゃあ母親の供養をしなきゃという寅さん。
たまたま観光で宿泊していた蛍子ちゃんとゆかりちゃんも
一緒にお参りすることに。
だけど寅さんがお焼香のときに
間違って火種のほうをつかんだものだから大騒ぎの大笑い。

一見、清楚なふうなんですけれど色っぽいですよね。田中裕子さん。
顔も、しぐさも、喋り方も、ちょっとバランスに欠けているところに
妙に女性の色香があるのです。

そう考えるとMMが左右の靴の高さを変えることで
男性を魅了するセクシーな歩き方を生み出したのも納得いきます。

田中裕子さんには天性のそういう
男性が手を差し出したくなるようなバランスの悪さがある。
真似してできるものではありません。

甘くて儚げ、シリーズの中では
一番男心をくすぐるマドンナでしょう。

「ほら、変な色気があるでしょ、この子?」
山田監督にここまでの台詞も書かせちゃうんですから。笑
もし渥美清さんが生きていて、49作目が公開されたなら
マドンナ役は再び田中裕子さんの予定だったそうです。

三郎青年は可愛い蛍子ちゃんに一目惚れ。
どうにか寅さんに仲を取り持ってほしいと懇願します。
動物園に勤めている彼はあまり人間の相手はしたことがないらしい。
寅さんは蛍子ちゃんと待ち合わせ、お酒を飲みながらそのことを伝えるけれど
でも蛍子ちゃんかから、三郎青年は「あんまり2枚目だから」と
断られてしまいます。

ちょっと嬉しい寅さん。
それでも三郎青年のため、とらやでふたりが再会できるよう
セッティングしてあげるのです。

三郎青年と蛍子ちゃんの恋物語のほうはちょっとヨワかったですね。
どちらかというと、さくらちゃんと博さんの
結婚までのなれそめのほうに物語の重点がおかれていました。

それから寅さんの、ひとり恋愛妄想物語。
実は毎回、案外とてもいいこと言うんですよね。笑

作品全体は少し物足りない感じもありましたが
田中裕子さんに女性の色気を学ぶことは出来ました。笑



【解説】allcinemaより
フーテンの寅こと車寅次郎の活躍を描いたシリーズ30作目。脚本は前作「寅次郎あじさいの恋」と同じく山田洋次朝間義隆の共同執筆、監督は山田洋次、撮影は高羽哲夫がそれぞれ担当。青年と娘の恋の仲立ちをする寅次郎の姿を描く。今回のゲスト出演者は田中裕子と沢田研二
 寅次郎は大分の湯平温泉で三郎という青年に出会う。寅は、亡くなった母の遺骨を埋めに来たという三郎をいたく気に入る。寅は供養の席を設けるのだが、そこに同じ温泉宿の客である螢子という娘もいた。ほどなくして、三郎は螢子に求婚するのだが…。一途な三郎と、二枚目過ぎると乗り気ではない螢子。寅次郎は二人を結びつけるために画策する。