さあ帰ろう、ペダルをこいで(2008)




好い映画でした。

特に男性の方には見ていただきたい作品。
男性の素敵さは年齢や顔ではない
男らしさって強さだけでない、金持ちだからじゃない
やっぱり内面にあるのだなと思います。

バックギャモンというゲームを通じて
記憶喪失になってしまった孫との交流を描く物語。
バックギャモン、我が家にもボードゲームがありますが
世界で最も遊戯人口が多いゲームなのだそうです。
愛好家は3億人にも及ぶそう。

1983年ブルガリア
おじいちゃんのバイ・ダンはバックギャモンの名手で
仲間から好かれ尊敬されていました。

彼は若い頃ハンガリー動乱学生運動に身を投じ
スターリン像を爆破した罪で15年も刑に服していた過去がありました。
そのことで反体制派として秘密警察から目をつけられています。

戦後の共産党政権下のブルガリアでは
厳しく情報統制や思想統制されていたのですね。
砂糖などの食料品も手に入りにくい状況が描かれています。

娘婿はそんな義父と、家族を監視し
言動を報告するように上司から命じられてしまいます。
命令に背けば仕事も学位も奪われてしまう。
もしかしたら投獄されるかも知れない。
スパイに耐えられなくなった彼はついに
妻と子を連れてドイツに亡命する決心をします。

それから25年後、娘夫婦が事故死したという知らせが
バイ・ダンのもとに届きました。
バイ・ダンはひとり生き残った孫のアレックスを
ドイツの病院にまで迎えにきます。

いくら記憶がなくなっていても、遠くから逢いにきたおじいちゃんに
あんな冷たい態度はとらなくていいのにと最初は思ったのですが。
命がけの亡命、長い難民生活
様々な差別や苦労を長年味わってきたら
簡単に人を信じれなくなってしまうのもあたりまえなのかも知れません。

でも、たとえ記憶がなくなっても
くせや習慣など長年身体に沁みついたものは消えないのでしょう。
バックギャモンのサイコロを握る手の感触は覚えている。
この人は本当に自分のおじいちゃんなのかも知れない・・・
アレックスは少しづつ心を開いていきます。

そしてふたりはダンデム(2人乗り)自転車でブルガリアを目指します。
それはアレックスの記憶を呼び戻すためでもあり
バイ・ダンが25年間逢えなかった孫へ愛情を注ぐための旅でもありました。

アレックスの冷たく凍てついて何も感じなかった心が
少しづつ少しづつ暖められて融かされていきます。
そして最後は深い愛情で包まれていきます。

イタリアで訪れた難民収容所跡の後からはアレックスの一人旅。
そうです、自立する時が来たのです。
新しい人生のスタートです。

おばあちゃんへのお土産の黄色い花が泣かせますね。

出来すぎの優等生的なストリーではありますが。笑
故郷にたどり着くラストシーンにはやはり感動してしまいます。
そして、なんといってもバイ・ダンおじいちゃんがカッコイイ。

(たぶん)私にとってはじめてのブルガリア映画
お気に入りにしちゃいます!



【解説】allcinemaより
ブルガリアの歴史を背景に、共産党政権時代に離ればなれとなった祖父と孫が、タンデム自転車でヨーロッパ横断の旅をする中で喪失を乗り越えながら絆を取り戻していく姿を、ユーモアを織り交ぜ心温まるタッチで綴るヒューマン・ロード・ムービー。出演は祖父バイ・ダンに「アンダーグラウンド」のミキ・マノイロヴィッチ、孫のアレックスにカルロ・リューベック。監督はこれが長編2作目のステファン・コマンダレフ。
 1980年代、共産党政権下のブルガリア。田舎町に暮らす少年アレックスは、バックギャモンの名人である祖父バイ・ダンからそれを教わる。やがて両親はアレックスを連れてドイツへと亡命する。25年後のドイツ。一家はブルガリアへの帰郷の途上で事故に遭ってしまう。両親は命を落とし、病院のベッドで意識を取り戻したアレックスは記憶をなくしていた。そんな孫を心配して、バイ・ダンがブルガリアからドイツへやって来る。自分のことさえ覚えていない孫に再びバックギャモンを教えるバイ・ダン。やがて快復したアレックスをタンデム自転車の後ろに乗せると、これで生まれ故郷のブルガリアへ向かうと宣言し、力強くペダルをこぎ出すのだった。