ホテル・ルワンダ(2004)

 
 
 
フツ族ツチ族はどう違うんだい?」
「定義ではツチ族の方が長身で上品、ベルギ-の入植者が決めた」
「どうやって?」
「鼻の細さや皮膚の色の薄さでね、鼻の幅を測ったんだ。
 (植民地支配をするために)ツチ族に統治させたが、退却後権力はフツ族へ。
 フツ族は長年の恨みでツチ族に復讐した」
 
 
すごい映画でした・・
 
1994年、ルワンダで勃発した「ルワンダ虐殺」を
実話ベースで描いた物語。
映画の中の「ホテルの1キロ先で撮った」虐殺映像は
本物をそのまま使ってるそうです。
 
今もEUのシリアからの難民受け入れの問題が報道されています。
命がけで祖国から逃げてくる難民を作り出す状況とはどのようなものなのか
どんな恐ろしいことが起こっているのか、どうやったら彼らを救えるのか
考えてしまう作品でしょう。
 
ルワンダの首都ギガリにある4つ星ホテル「オテル・デ・ミル・コリン」は
要人や外国人観光客をもてなす高級ホテルなのでしょう。
紛争のためヨーロッパ人の従業員は避難し
フツ族であるポール・ルセサバギナが総支配人として指揮していました。
ホテルには国連軍が駐在しており
欧米の記者や赤十字の職員などが宿泊しています。
 
ツチ族フツ族の間では平和協定が結ばれ
この紛争も落ち着くだろうとポールはそう思っていました。
しかしツチ族に首相が暗殺されたというラジオ放送をきっかけに
フツ族によるツチ族の虐殺がはじまります。
それは子どもまでナタで斬殺するという残忍なものでした。
若い女性は裸同然で檻に入れられます。
 
ポールの妻はツチ族でした。
そのため親類や友人にはツチ族が多かったのでしょう。
最初は家族や知人だけを助けるつもりだったポール。
しかし成り行きでホテルに押し寄せたフツ族ツチ族
すべてを受け入れてしまいます。
 
そして彼らの命を救うために、賄賂
お金、人脈、あらゆるコネを使います。
 
この作品を見て知ったのは
国連軍を10人も殺せば、国連軍が撤退するということを
過激派たちが知っているということです。
そして国連軍も多国籍軍も欧米人しか救わないということでした。
 
せめて食料だけでもと思うのですが
支給されたのはわずかな医薬品のみ。
親を殺されたたった20人の孤児さえ
受け入れてくれる国を見つけるのは難しいというのです。
 
本当に難民の行く場所などないのです。
 
それでもあきらめないポール。
そして無力ながらも彼の力になろうとする国連軍のオリバー大佐。
ついに1200人以上の人々を避難させたのです。
 
映画としての構成、見せ場も良くできていました。
最後まで続く緊迫感。
ドン・チドールの演技もよかったですね。
虐殺を見た後にネクタイを結べなくなったポールの姿には
誰でも震えてしまうでしょう。
 
そして妻に、もしホテルが襲われたら子どもと屋上から飛び降りろと
懇願する気持ちもわかります。
妻と子どもが暴行されるなんて、切り刻まれるなんて耐えられない。
 
しかしホアキン・フェニックスが呟く言葉もまた事実なのです。
「世界中はニュースで映像を見て「怖いね」と言うだけで
 ディナーを続けるだろう・・」
 
映画はルワンダ虐殺が忘れ去られないよう制作されたそうです。
お気に入りで。
 

 
【解説】allcinemaより
1994年、アフリカのルワンダで民族対立が原因の大量虐殺事件が発生、欧米諸国や国連の無策が被害を拡大させる中、1200人もの人々をホテルに匿い、持ち前の機転と交渉力でその命を守り抜いた一人のホテルマンの奇跡の逸話を映画化。主演は「青いドレスの女」「オーシャンズ11」のドン・チードル。監督は「父の祈りを」の脚本で知られるテリー・ジョージ。日本では長らく公開のメドが立たずにいた本作は、有志による熱心な署名活動が実を結び晴れて公開実現の運びとなったことでも話題に。
 1994年、ルワンダの首都キガリ。多数派のフツ族と少数派のツチ族の内戦はようやく和平交渉がまとまるかに見えたが、街では依然としてフツ族派ラジオ局が煽動的なプロパガンダを繰り返し不穏な空気に包まれていた。ベルギー系の高級ホテル“ミル・コリン”で働く有能な支配人ポール。ある晩帰宅した彼は、暗闇に妻子や近所の人たちが身を潜めているのを目にする。フツ族大統領が何者かに殺され、これを契機にフツ族の人々がツチ族の市民を襲撃し始めたのだ。ポール自身はフツ族だったが、妻がツチ族だったことから一行はフツ族の襲撃を逃れミル・コリンに緊急避難する。外国資本のミル・コリンはフツ族民兵たちもうかつには手を出せなかった。そのため、命からがら逃げ延びてきた人々が続々と集まってくるのだが…。