紀ノ川(1966)


 
 
作家有吉佐和子さんの自伝的小説の映画化。
 
長い作品でした。
物語が淡々と静かに流れて行くので
3時間強の作品がもっと長く感じましたが。
 
主人公の花(司葉子)は、日本人が理想中の理想とするような、
しとやかで強く美しい女性。
 
「女子として生を受けたる吾に他家へ嫁ぐは、これ人の道ぞかし。
家魂を担って、一旦嫁したる上は、身を灯明の油となして
この家の光を絶やさざらんこと、吾が務めならん」
 
この花の書いた論文の一説こそが
この作品のテーマなのではないかと感じました。
 
そんな花の長女文緒(岩下志麻)は母親の昔風の生き方に反発します。
そして女学校、大学では男女同権の新思想の運動などをしたりします。
二人はことごとく意見が対立しますが、文緒も結婚し、娘ができ、年を取り
やがて母娘はお互い解りあい思いやりあうようになります。
 
こういう母娘の対立・・
そして大人になってからの親子の和解というのはよくわかります。
結婚して子どもが出来きたりすると、かって母親から言われていたことの
意味を理解したり改めて感謝の気持ちが芽生えたりしあすよね。
こんな労働や苦労を文句も言わずにこなす母親稼業とは、
とても偉大なことなんだと。
 
その分、田村高廣丹波哲郎など、男性陣の影は少し薄かったです。
 
紀州旧家の大地主に嫁ぎ、明治、大正、昭和と生き抜いた女性の一生が、
とても美しく描かれていました。
 

【あらすじ】goo映画より
第一話・花の巻・明治三十二年、二十二歳の春を迎えた紀本花は紀州有功村六十谷の旧家真谷家に嫁いだ。夫敬策は二十四歳の若さで村長の要職にあった。婚儀は盛大なものだったが、花を好いていた敬策の弟浩策はうかぬ顔たった。翌年の春、ようやく真谷家の家風に慣れた花は妊った。そして花は、実家の祖母豊乃に教えられて慈尊院へ自分の乳房形を献上し、安産を祈った。紀ノ川が台風に荒れ狂う秋、長男政一郎が産れた。長男穣生の報に喜んだ敬策は紀ノ川氾濫を防ぐ大堤防工事を計画するのだった。日露戦争が始まった年、浩策は持山全部をもらって分家し、敬策は県会議員に打って出ようと和歌山市内に居を移した。やがて花は、日本海海戦大勝利の中で長女文緒を産んだ。 ◇第二話・文緒の巻・十七歳の文緒は和歌山高女に学び、新時代に敏感な少女に成長した。そして、新思想の教師が追放されると学校当局と派手に渡りあったりして花を嘆かせた。東京女子大に進学した後も、男女平等を標榜しカフェに出入りしたり、「女権」という同人雑誌の編集に参加したりして敬策や花を心配させた。文緒には真谷家という家門や昔風の美徳に生きる花に対する反撥があったのだ。卒業後文緒は同人仲間の晴海英二と結婚した。晴海は日本正金銀行の社員で家柄もよく、二人の結婚は花や敬策の望むものでもあった。昭和初年、真谷敬策は中央政界に進出した。一方、夫の転勤と共に上海に渡った文緒は生後間もない長男を失い、二度目の出産のため日本に帰った。文緒はすっかり変っていた。以前はことごとく花に反撥した彼女が、花とともに乳房形を作って慈尊院へ詣でるのだった。昭和七年、文緒は長女華子を生んだ。そして大戦が始まる少し前、長年政界にあった敬策が急逝した。