自主映画界初の16mm時代劇として知られ
マニアなファンもいるという「蠢動」(1982)
それから30年、三上康雄監督が三代続いた家業の会社を売り払い
再び自主製作したということ
時代劇はやはり製作費が高騰してしまうということで
スポンサーがつかず敬遠されがちなのだそうです
しかも観客数も見込めるかどうかもわからない
それでも製作に踏み切ったのは、ストイックというべきか
時代劇愛というべきか、それとも馬鹿なのか(笑)
「モノクロ?」と思わせる程、色が落とされている映像
特にワンカット目の極端に彩度の低い風景には惚れ惚れします
ベルイマンを彷彿とさせるような清々しい陰影
ただし内容は地味(笑)
肝心の斬り合いも迫力に欠け、血も見せません
しかしこれが三上監督の美意識なのかも知れません
時代劇をベイルマン作品のように芸術の域に極めたい
願望があるのかも知れない、そうも感じました
木村一浩(花田昇太朗)に剣を教えていました
近く木村に嫁入りする予定でした
用人(主君の側で仕え、出納・雑事を担当する人)
舟瀬太悟(中原丈雄)が
持ってきます
なんと松宮は藩の失政を幕府に報告していたスパイだったのです
荒木は策を思いめぐらせ、原田に松宮を斬らせて
それをまだ若く血気盛んな香川の仕業にしようと考えます
実行犯は原田、子どもの頃から可愛がっていた相手を
藩からの命令で斬らなければなりません
性格の真っ直ぐさが災いとなり、その陰謀の犯人にされる香川
香川は仲間に追われ、襲われ、狼狽しながらも
雪深い山中で死闘を展開することになります
よくある権力者が保身のために、身代わりを立て
簡単に若い命を犠牲にするというもの
そしてこのことは、いつの時代でも
単純な、善と悪の対立ではないのです
誰にでも、己の守るべき正義がある
そして何より自分が生きるため、戦わなければならない
「武士道とは、いったい何なのか」
これは時代劇ファンのアマチュア監督が
素人でもここまでできると証明した
プロの映画製作者に突き付けた挑戦状
その熱意は高く評価したいと思います
【解説】allcinemaより
1982年に自主映画の16mm時代劇として話題を呼んだ「蠢動」を手がけた後、映画界から離れていた三上康雄監督が、30余年の時を経て再び自らの製作で撮り上げた本格時代劇。それぞれの立場で義を貫こうとする者たちの激突をリアリズムと迫力の殺陣で描き出していく。主演は「一命」の平岳大、共演に若林豪、目黒祐樹。享保の大飢饉より3年。居合の達人、原田大八郎が剣術師範を務める因幡藩も少しずつ落ち着きを取り戻してきていた。しかし、幕府から遣わされた剣術指南役の松宮十三が藩の内情を密かに探っていた。その動きを察知した城代家老の荒木源義はやがて、藩を守るために、ある決断を下すのだったが…。