ハッピーエンド(2017)

原題は「Happy End」

愛、アムール」から5年、ミヒャエル・ハネケ曰く

「そろそろ嫌な映画を撮る順番だ」(笑)

2005年、静岡県進学校に通う16歳の女子生徒が

母親に劇物タリウムを摂取させ

殺人未遂容疑で逮捕された事件がモチーフ

その様子はブログに綴られていたそうです

「I☆Japan」のTシャツにはウケた(笑)

「ハッピーエンド」というタイトルも素晴らしい

70歳を過ぎたハネケの、このハイセンスでブラックなユーモア

さすがでございます

冒頭、スマホで動画を撮影する縦画面
女性が洗面所で吐き、口をすすいで用を足す

次の映像では、ペットのハムスターに薬を盛り

死んでいく様子を撮影しています

撮影者がその様子をテロップしていく

「これなら使えそうかも」

次の映像で母親が倒れたことがわかります

「黙らせるのは簡単」

13歳の少女エヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)は

ペットのハムスターを殺したのと同じ薬物を母親に盛り

昏睡状態になった母親は入院

母が退院するまで、父親で医者のトマ(マシュー・カソビッツ)が

エヴを預かることになります

トマには、若い後妻のアナイス(ローラ・ファーリンデン)と

生まれたばかりの息子がいましたが

トマが女性とチャットやメールでやり取りをしているのに気付いたエヴは

父親の目を盗み卑猥な内容を覗き見ます

トマの姉であるアンヌ(イザベル・ユペール)と

その息子ピエール(フランツ・ロゴフスキ) は

祖父のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)が経営する

建設会社の重役で建設現場で起きた崩落事故の対応に追われています

さらにアンヌは弁護士で愛人のローレンス(トビー・ジョーンズ)と

父親の会社を自分のものにしようとしていました

アンヌにもピエールにもうんざりしていたジョルジュは

自殺するため衝突事故を起すものの死にきれず

車いすで街を徘徊し、金を渡すから銃を用意して欲しいと頼んでも

誰からも相手にされません

そんななか、ジョルジュの85歳の誕生パーティーが盛大に開かれます

そこにはトマの不倫相手がいたり(距離をおいているがそれとわかってしまう)

ピエールが使用人に差別的な発言をしたり

ジョルジュにとってはただの迷惑な場所

やがて母親が死に、正式にトマに預けられることになったエヴ

しかしトマが(母親のようにアナイスを捨て)愛人のもとに去ったら

施設に預けられてしまう

「パパが遠い」と、精神安定剤を大量に飲自殺を図るエヴ

困ったトマがジョルジュに相談すると

エヴに同じものを感じていたジョルジュは彼女から話を聞くことにし

妻が死んだのは、自分が窒息死させたからだと教えます

エブもいじめっ子の同級生を毒殺しようとしたけれど

罪にならなかったことを告白します

やがてアンヌとローレンスの婚約パーティーが開かれると

遅れてやって来たピエールが黒人グループを招き入れます

空気を読み、去ろうとする黒人たちですが

どうしてもパーティをぶち壊したいピエール

母親の過保護が原因と思われますが

ピエールの心情だけが読み取りにくい

ただ舞台ともなっている、フランス北部のカレーという地域は

ヨーロッパにおける「移民危機」呼ばれる都市のひとつで

深刻な貧困や失業問題を抱えているそうです

不器用で仕事もろくに出来ないピエールの

移民を友人に持つことで、母親や金持ちたちに反発しているのかも知れません

アンヌとピエールの喧嘩を見かねたジョルジュは

イヴに海まで車いすを押してくれるよう頼みます

水際で車いすブレーキをかけると、スマホで撮影を始めるイヴ

自ら車いすを動かし水没していくジョルジュ

父親がいないことに気付き

慌てて走ってきたトマとアンヌ海に飛び込んでいく

その様子をスマホで撮り続けるエヴ

生き続けることが幸せだと誰が決めたの

そんなことただの先入観

死んだほうがいい人間だって

死にたい人間だっているのに

【「タリウム少女の毒殺日記」(楽天日記ブログ)】

ハンドルネームは「岩本 亮平」(16歳の男子)

20054
劇物ビスを薬局で化学部の実験というだけで、いとも簡単に入手。
化学に関する専門的かつ理論的な解釈を時折、記す。
6月27日

日記を書き始めようと思います。学校の人はこの事を知らないので、嫌な事とかも全て書くつもりです。
6月28日
今日は暑かったです。昨日も真夏のようでした。昨日は水泳の授業がありました。憂鬱な体育の授業です。
7月2日
久しぶりに買い物に行ってきました。買ったものは、以下の通りです。瓶500ml・・・5瓶、瓶750ml・・・2瓶、8/4スプレー・・・1缶、チャッカマンミニ・・・1
7月3日
今日は本の紹介します。 グレアム・ヤング毒殺日記 尊敬する人の伝記、彼は14歳で人を殺した。酒石酸アンチモンカリウムで、毒殺した。
7月7日
晴れのち雨そして快晴、この間買った酔い止め薬の通常使用量の8倍の量を飲み干しました。なんか浮かんでいる気がします。ふわふわして地に足が着いてない感じがします。
7月11日
頭が痛いです。エフェ錠の副作用でしょうか?周りで女子の甲高い声が響いているのが聞こえます、其の音が耳に入る度に、後頭部に鈍い痛みが走ります。
7月14日
道を歩いていた野良犬を蹴ったら、キャンキャン喚きながら、地べたを這いずり回った。あはは、まるで本当の犬みたい。
7月16日
今日は図書館に行って本を借りてきました。「死体を語ろう」や「日本列島毒殺事件簿」、「薬物乱用の科学」、「有機科学入門」等を借りました。
7月18日
お昼頃、買い物をしに歩いていたら道端に血まみれの猫の死体が落ちていました。頭が潰れていて、中から脳髄がはみ出していました。
7月19日
ネット上の性別は、戸籍上のものとは違うものが使われることが多いのでしょうか?だとしたら、僕の罪も少しは許されると思います。
7月23日
そんな事は在りえないけれども、もし、一度だけ生まれ変われるとしたら、僕は植物になりたい。大きな喜びは無いけれど、代わりに深い悲しみも無い。
7月26日
暗闇の大木に揺ら揺らと紅い光を馳せて蝉が光る茶色く干乾びた其の体に命の残り火を燻らせニイと啼く木々の沈黙の中其の声は雨の様に僕の下へと降り注ぐ
7月28日
僕の中に居る彼女の存在を感じなくなりました。消えてしまったのでしょうか。とても寂しいです。
7月30日
唐突だけど、僕は酒鬼薔薇少年が好きではありません。自作の詩だという「懲役13年」は、神曲等の有名な詩を切り貼りしただけの代物ですし。
8月5日
テトラヒドロゾリン―目の充血、鼻づまり改善薬『ABC点鼻スプレー』『ナーベル点鼻・点眼』『リン酸コデイン―鎮咳剤』『コデイン』『リンコデ』『リン酸コデイン
8月6日
西友は薬品の品数が少なくて、思った様には行きませんでしたが、テトラヒドロゾリンを5mg/10mlで含んでいる物として、バイシン1箱を手に入れました。早速飲んでみました。
同日
今まで様々な生物を僕は殺戮してきた。彼等で遊ぶのは楽しかったが、同時にとても疲れた。何故なら、残った肉塊の処理だけでも数時間は優に要したから。
同日
僕の周りの、僕以外の全ての人にオキシトシンを嗅がせたい。
8月9日
もしも人間が悪魔であるなら・・・種族そのものが邪悪な存在であるなら・・・その対極にあるべき『善』とは何だ?
8月10日
赤いマントで興奮するのは、牛じゃなくて観衆。牛は色が見えない。
8月14日
Benzene Hexachloride―
ベンゼンヘキサクロライド―を昨日合成しました。 別名ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)とも呼ばれる、有機塩素系の殺虫剤の一つ。
8月19日
薬局から電話がありました。問屋が“酢酸タリウム”と“酢酸カリウム”を間違えたらしいです。直ぐに取り替えるそうですが、待ち侘びています。
8月24日
酢酸タリウムが届きました。薬局のおじさんは「医薬用外劇物」の表示に気付かず、必要な書類を通す事無く僕に其れを渡してきました。
8月25日
変な夢を見ました。僕が彼女を食べる夢です。僕は彼女を手、足、胴体、頭の順に食べました。細い腕は魚みたいに痙攣していて、引きちぎれても未だ動きました。
同日
昨日から母の具合が悪いです。全身に発疹が起こり、特に顔面に症状が強く出ています。今日は皮膚科へ行きましたが、医者もただ首を傾げるばかりで原因は分からないそうです。

8月26日
お腹が痛いです。原因は解っています。タリウムです。昨日、それの水溶液を誤って指に付けてしまったのです。直ぐに手を洗ったのですが、指先は白く濁ったままです。
8月27日
寝ても起きても気持ち悪いし、指先とか脚とかが痺れてきたので、解毒剤を作りました。タリウム中毒の治療はプルシアンブルーと塩化カリウムの経口投与によって行なわれます。

8月31日
暗い部屋で、蝋燭の炎を見る。ゆらゆら、ゆらゆら、おもしろいよ・・・
9月4日
生き物を殺すという事、何かにナイフを突き立てる瞬間、柔らかな肉を引き裂く感触生暖かい血の温度。漏れる吐息。すべてが僕を慰めてくれる。
9月12日
今日も母の調子は悪いです。2,3日前から脚の不調を訴えていたけど、遂に殆ど動けなくなってしまいました。二階にある僕の部屋まで来る事も出来なくなりました。
9月13日
今日は体育の補修で500mを泳ぎました。カフェ錠を飲んでいたので、比較的楽しく泳ぐ事ができました。
同日
アトロピンの抽出朝鮮朝顔の根もしくは葉を熱湯で湯掻き、炉液をケン化させる。アルカロイドが沈殿するため此れを濾過し、希硫酸を加え硫酸アトロピンとする。
9月19日
現実の方が大変になってきてしまったので、暫くブログの更新を停止します。すいません。

9月26日
明日、母は入院します。未だ原因は不明のままです。残念な事に母は余り良い保険に加入していないため、生活は少しばかり苦しくなるでしょう。
9月27日
隠れる事は喜びでありながら、見つけられない事は苦痛である。見つけられることは危険である。しかし其の逆に、自分が存在していることを確認するためには、誰かに見つけられるしかない。
9月28日
母はよく泣くようになった。僕に“毒を造って欲しい”“誤って飲んだ事にして貰いたい”とぼやく。自殺衝動が出始めたようだ。
10月2日
母は入院した。父が呼んだ救急車で連れて行かれた。入院先は近くの病院、布製の担架で運ばれて行った。父も同伴した。少し悲しそうな顔をしていた。
同日
銀色のベルを揺らせば涼しげな音が鳴るだろう銀色の刃物の先で命が震えている此れはどんな音色を奏でているのか。母の顔を暖かいタオルで拭いてあげた。
10月3日
今日は病院へ行ってきた。祖父母と兄と僕とで母の見舞いに訪れたのだ。先客として叔母さんが居た。まあ、呼ばれて行ったのだから当たり前ではある。
10月某日
今日は調子が良い。何でも新しい薬を貰ってきたという。病名も分かった、ストレスによる多発性神経炎だそうだ。検査で何も出なかったからそう判断したらしい。
10月某日
星が空から落ちる。兔たちはオーブンの中で草むらの記憶すらも硬化させる。500mgに増やしたステロイドの影響だろうか、顔の腫れが目立っていた。
10月某日
人は輪になって踊る。丘の上で死体を数え、微笑みながら飲み交わす。撃ち殺された男の匂い、引き裂かれた女の匂い。
10月某日
部屋が変わっていた。4階のB棟、3人部屋だ。
10月某日
血圧は上が115、下が85であった。殆ど戻ってきたところだ。しかし病状は悪化している。日直の先生も異常を察し、集中治療室へ連れて行った。
10月某日
特に変化なし、今日も昨日と同じように写真を撮って帰った。長男に目つきが怖いと言われた。寒気がするって、僕は“毎日この顔を洗面台の前で見ているんだぜ。
10月16日
叔母が言うところによると、母は幻覚を見始めたらしい。居もしない虫や、ドアの傍の白い陰に悩まされていると言う。
同日
今日の朝、先生に筆記用具を借りた。其の時泣きながら母の話しをして、同情を得た。人って案外簡単に騙されるものなんだと思った。
同日
蒼ざめた馬の通る道に、規則は存在しない。暗闇を進む足跡は草木を枯らし、死を招く。其処に生命は宿らない。在るのは寂しい同じ形。