ゼイリブ(1988)

原題は「They Live」(彼らは生存し活動している)

原作はレイ・ネルソンの 「Eight O’clock in the Morning」(1963)

影響を与えたのはヘンリー・ロリンズによる雑誌「Nada」ということ

はっきり言って、見るからにB級で低予算なのですが

(クリーチャーといってもマスクを被っているだけ 笑)

ジョン・カーペンターの先進的というか、先見の明を感じます

80年代アメリカ、 競争原理によって富裕層と貧困層が二極化

特権階級や金持ちだけが有利になる政策や税制が可決され

福祉や医療予算は削減

人々は特定の物資の消費に走るよう、マスメディアに踊らされている

なぜ、人々は私欲のために金を使い込む政治家や

ネットや、胡散臭い宗教祖の言葉を信じ

摂取されてしまうのか

レプティリアン陰謀論

彼らは(They)人間ではなく、人間社会に紛れ込んだエイリアン

またはエイリアンに操られている人間、という主張

主人公は人間とエイリアンを見分けることができ

様々な媒体の裏に隠されたメッセージも見えるサングラスを手にいれます

もし私たちがこのサングラスで国会中継や、各国の指導者を見たら

おぞましい姿のエイリアンしか映ってないかも知れません(笑)

ベトナム帰還兵のネイダはデンバー10年務めたものの失業し

セカンドチャンスを求めてLAにやって来ます

建設現場で知り合ったフランクに教えられ

自由教会の空き地に設けられた、ホームレスのためのキャンプに寝泊まりします

そこでの娯楽は1台のテレビだけでした

テレビはたびたび電波ジャックに襲われ、画面に現れた男が

「我々の世界は、「彼ら」の発信する信号により

仮眠状態にさせられ支配されています

彼らの目的は我々を欲に狂わせ「奴隷」にすること・・」と演説

ネイダは教会の讃美歌が始まると

キャンプの住民のギルバートが教会へ入っていくことと

その時決まって電波ジャックが起こることに気付きました

ギルバートを追い教会に忍び込むと、なにやら会議が行われ

(会話の声を隠すための)賛美歌は録音テープによるもので

壁には「THEY LIVE WE SLEEP(彼らは生き、われわれは眠る)」の文字

そして密封された大量の段ボールを発見します

盲目の牧師に見つかり逃げるネイダ

それから間もなくして、教会警官隊に襲撃され宣教師たち逮捕

テントやバラック壊され、ホームレスたち追い出されてしまいます

ネイダは誰もいない教会で段ボールに入った大量のサングラスの中のひとつを

何気なくかけて街を歩いていると

obey(従え)

MARRY AND REPRODUCE(結婚して繁殖しろ」

CONSUME(消費しろ)」の

広告看板や、雑誌や、新聞記事の文字

裕福で親切そうな人のほどんどは、おぞましい髑髏のような顔

思わずスーパーにいた髑髏顔の老女に「ひどい顔だな」と話しかけると

老女は「見分けることの出来る」男がいると警察に通報

ネイダはやってきた髑髏顔の警官から銃を奪い、警官を射殺し

さらに髑髏顔の人間を手当たり次第殺していきます

怖いのは、この時点でネイダはまだ陰謀に気付いていないんですね

異形のもの、ただ見た目が気持ち悪いというだけで

殺すことに高揚を感じ、それが正義だと信じているんです

ネイダは偶然出会ったホリーという女性を銃で脅し

彼女の自宅(BMWに乗り高級住宅に住む)かくまってもらいます

地元のテーブルテレビ局に勤めているというホリーに

電波ジャックや、サングラスのことを説明すると

隙を見せたとたん、背後から殴られ警察に通報されます

ネイダは窓ガラスを破って逃げ

フランクに会うため建設現場を訪ねます

騒ぎを知り「関わりたくない」というフランク(本業はプロレスラー)に

真実を知るため「サングラスをかけてみろ」「かけない」

「かけろ」「かけない」で大喧嘩、というより本格的なプロレス

ジョン・カーペンターは相当プロレスが好きなんだな 笑)

結局サングラスをかけさせられたフランクは驚き

「サングラスを作った同志がいるはずだ」

翌日、なぜか都合よくギルバートが現れ(笑)

同志が集っているという場所を書いたメモを渡していきます

ギルバートは「グール(屍食鬼)」に対抗するレジスタンスのリーダーで

電波ジャックやサングラス製造も彼らによるものでした

ネイダとフランクは、コンタクトレンズ型の透視装置と

(グール から盗んだ)通信とワープが出来る腕時計を渡されます

レジスタンスたちは、ケーブルテレビ局が

洗脳信号の発信源ではないかと議論していると

仲間のひとり、ホリーが

「テレビ局は潔白です 社員である私が保証します」と

ネイダに「知らずに通報してしまった」と謝ります

そこに突然警官隊が乱入し

ギルバートらレジスタンスたちは射殺されてしまいます

腕時計の機能で脱出したネイダとフランク

ワープホールの先はグールの秘密基地でした

そこではパーティが行われ

「2025年までに完全に地球を支配下に置く計画」が発表されています

かってホームレス仲間だった男と再会すると

彼はグールへの協力と引き換えに出世し金持ちになっていました

ネイダとフランクは自分たちも協力者だと思わせ

男に基地を案内してもらうと、ケーブルテレビ局への入口があります

スタジオではグールが、骸骨の姿を人間の姿にカモフラージュさせ

特殊な信号を世界中に送っていました

グールを殺したネイダとフランクが信号の発信源を探していると

ホリーを見つけ、彼女は送信アンテナは屋上にあると言います

(いいかげん彼女がグールの仲間なの気付けや 笑)

3人が屋上に向かうと、ホリーはフランクを射殺

屋上にたどり着いたネイダに銃を向け

同時にやってきた警察のヘリも機銃でネイダを狙います

ネイダは袖に隠し持っていた銃でホリーを殺し

警察の機銃に撃たれながら、アンテナを破壊

ネイダは倒れアンテナに中指を立てるのでした

擬態信号がなくなり、テレビのニュースキャスター、評論家、俳優

街の人々など、グールたちの姿が露わになり世界中で大パニック

ホテルでは男と女が愛し合っていましたが

女が振り向くと彼女もグールでした

でも本当に怖いのは、グールなのか

富や名声のためにグールにまとわりつく人間なのか

考えさせられますね

そしてこの映画が出来た80年代よりも

その問題が今はもっと深刻化しているということ

 

ただしあくまでB級、ツッコミどころも満載で

真面目に見る映画ではございません(笑)



 

【解説】映画.COMより

「ハロウィン」「遊星からの物体X」の鬼才ジョン・カーペンターが1988年に手がけ、異星人による姿なき侵略を描いてカルト的人気を誇るSFサスペンススリラー。仕事を求めて町に流れ着いたネイダは、ホームレスのためのキャンプで寝泊りするようになったのち、教会でサングラスを発見。そのサングラスを通して見えたものは、人間になりすまし、町を支配していた奇怪な侵略者の姿と、至るところに隠され、人間を操っていた洗脳標識だった。恐るべき真実を知ったネイダは侵略者と戦うことになるが……。主演は80年代の全米人気プロレスラーのロディ・パイパー。日本では89年に劇場初公開。2018年9月、30周年を記念してHDリマスター版でリバイバル上映。2022年1月には「ジョン・カーペンター レトロスペクティブ 2022」にて、4Kレストア版をリバイバル上映。

1988年製作/94分/G/アメリ
原題:They Live
配給:ロングライド
日本初公開:1989年1月28日