「俺が顔をあげると君がいる 君が顔をあげると俺がいる」
原題も「FAR FROM THE MADDING CROWD」(狂った群衆から遠く)
3時間近い長尺
余計長くなるからインターミッションいらないわ(笑)
ストーリーは単純で、田舎にはふさわしくない美女
バスシバ(ジュリー・クリスティ)が
実直な仕事人、ガブリエル(アラン・ベイツ)
堅物の金持ち、ウイリアム(ピーター・フィンチ)
遊び人のイケメン、フランク(テレンス・スタンプ)の三人に求婚され
迷いもなくイケメンと結婚した話
こういう交際を申し込まれてもハッキリ返事をしない女性を
「もったいぶり女子」と呼びますが
男からはモテるが、女からは嫌われる存在(笑)
しかも恋愛に対して計算できない分、男性まで深く傷つけてしまう
実際に数々の女優と浮名を流してきたことで有名な
テレンス・スタンプはこの役にぴったりでしたね
サイテー男をうまく演じていました
剣をブンブン振り回す求愛行動は、コメディにしか見えなかったけど(笑)
【ここからあらすじネタバレ】
19世紀、イングランド西部の田舎で羊飼いをするガブリエルは
農家の娘バスシバに結婚を申し込みに行きます
彼女は自分の容姿が優れていることを知っているんですね(笑)
ガブリエルに気のあるふりをしておきながら、プロポーズは断ります
しかも大嵐の夜、牧羊犬が羊たちを崖から落としてしまい
ガブリエルは全財産を失ってしまいます
もはや牧場に未練はなく、新しい仕事を探しに旅立ことにしました
(犬の射殺はショッキング)
一方バスシバは叔父から大きな農場を相続しますが
経営を任せていた会計係の汚職を知り、自ら農場を経営することにします
ガブリエルは偶然バスシバの農場に雇われることになり
彼のおかげで農場の仕事は軌道に乗り始めます
バスシバは、屋敷で見つけたロマンチックなバレンタインカードを
隣に住む裕福な地主、ウィリアム・ボールドウッドに
「Marry me(結婚して)」のメッセージを添えて贈ります
バスシバの心無い悪戯を、本気にしてしまったウィリアム
若く美しいバスシバに、結婚を申し込むわけですが
もともと結婚する気などなかったバスシバは返事をはぐらかします
そのころ騎兵部隊の士官、フランク・トロイは自由な遊び人でしたが
純真な田舎娘と町で結婚式を挙げようとしていました
しかし娘が式を挙げる教会を間違えてしまい、時間になっても現れず
恥をかいたフランクは、婚約者を捨ててしまいます
田舎に帰ったフランクは農場の後継者、バスシバと出会い
バスシバはすぐにフランクに夢中になります
ふたりの結婚式の夜、大荒れの天気にもかかわらず
フランクと牧童たちは酒を浴びるように飲み、踊り歌います
ガブリエルはひとり、農場の牧草をシートで雨風から守ろうとする
それを見たバスシバは嵐の中ガブリエルの作業を手伝い
真実の愛に目覚めるのかと思うのですが、そうではなく(笑)
結婚後は、全く働かず農場の金を闘鶏に使い込むフランク
当然のように言い争い、夫婦の仲は良いわけではありませんでしたが
フランクを愛しているバスシバは金を渡します
ある夜、具合の悪そうな女がフランクに会いに来ます
彼女はフランクが捨てた婚約者ファニーで臨月でした
フランクは明日お金を持っていくから救護施設で待て、とファニーに言いますが
ファニーはそこで死産し死んでしまいます
翌日遺体を運ぶ役目の男が、酒を誘われ酔っぱらってしまい
遺体は一晩バスシバの農場に預けられることになりました
不審に思ったバスシバが棺桶の蓋を開けると
そこには若い女と、生まれたばかりの赤ちゃんの遺体
しかも赤ちゃんがフランクの子だということは
農場の誰もが知っていることでした
ファニーの苦難を知り、本当に愛していたのはファニーだと
フランクはバスシバの元を去り裸で海に身を投じ、行方不明になります
バスシバへの愛を捨て切れないウィリアムは
フランクがいなくなったバスシバに、再び結婚を申し込みます
しかもフランクの作った借金をすべて肩代わりするというのです
困惑したバスシバは、夫が法的に死んだと宣告されるまで
7年間待って欲しいと返事をします
しかしフランクは生きていて、バスシバから隠れ
サーカスの団員として身銭を稼いでいました
やがて月日が経ち、ウイリアムとバスシバの婚約発表パーティーの日
あろうことか雲隠れしていたフランクが帰ってきたのです
しかもウイリアムが借金を払って救った農場売ってしまえと言う
ファニーの死で改心したかと思ったら、結局同じチャラ男(笑)
血迷ったウイリアムはその場でフランクを射殺してしまいます
ウィリアムは牢獄に送られ
フランクはファニーと我が子と共に葬られる
ガブリエルは人生をやり直すためアメリカに行くと言います
ガブリエルがいなければ、農場をやっていけないと気付いたバスシバ
(羊の治療のときに気付けよ)
農場に残って欲しいと懇願するバスシバに
ガブリエルは再び最初と同じ求婚をします
【あらすじネタバレ終了】
原作ではバスシバは、頭がいい自立した女性として描かれたそうですが
これでは全く逆、男の気持ちを弄ぶただの鈍い女(笑)
死んだファニーもお気の毒だけど
一番貧乏くじを引いたのは、謹厳実直なウイリアム
そんな彼を牢屋にいれたまま、自分だけ幸せになって平気なのが
バスシバという女だよ(笑)
このヒロインに共感できる人間がいるのでしょうか
それでも3時間見れたのは、映画としては悪くなかったということ
一応、ジョン・シュレシンジャーだし
ニコラス・ローグだし(笑)
【解説】allcinemaより
『テス』のT・ハーディの大河ロマンを、「ドクトル・ジバゴ」のクリスティの主演で映画化した、英国エセックスのロケ効果も美しい、女の運命のサーガ。伯父から受け継いだ農場を切り盛りしている若き女主人バスシーバは、羊飼いのゲイブリエル(ベイツ)から求婚されるが、それを断り、女中の恋人だった軍曹トロイ(スタンプ)と結婚する。が、既に彼の子を孕んでいた女中が赤ん坊を生むと同時に死んで、ショックを受けたトロイは土地を去っていった。やがて、隣人のボールウッドが熱心にバスシーバに求婚。彼女もそれにほだされるが、その披露宴の夜にトロイが帰ってきて、ボールウッドに撃ち殺されてしまう。そして新郎は獄につながれ、トロイの墓に参る彼女の前に現われた真実の相手はゲイブリエルだった。典型的メロドラマを、シュレシンジャー演出は骨太かつ丁寧に組み立てて見応えのあるものにしている。こういう役は十八番のクリスティの熱演も光っていた。