原題は「Der amerikanische Freund」
原作はパトリシア・ハイスミスの「太陽がいっぱい」の続編「Ripley's Game」
映画「太陽がいっぱい」でアラン・ドロンが演じたトム・リプリーのその後を
デニス・ホッパーが演じています
はい、見た目だけの問題ではなく(笑)
まったく同じ原作とは思えません
マフィア殺しをさせられてしまう貧しい額縁屋
リプリーの悪魔的な魅力が消えてしまっています
しかも殺すほうは、素人ならではのドタバタ
殺されるマフィアたちもマヌケ
とはいえ、ヴィム・ヴェンダース・マジック(笑)
どのシーンを切り取っても名シーンにしか見えない
かっこよすぎる
映像も綺麗で、さすが4Kレストア版という感じ
赤いコート、オレンジのビートル、黄色のレインコート・・
配色センスが冴えまくっています
カメラはロビー・ミューラー
ドイツに住むアメリカ人のトム・リプリーは
(数年前に死んだことになっている)老画家(ニコラス・レイ)の作品を
ヨーロッパのオークションで売りさばいています
オークション会場を見学していた額縁職人ヨナタンが
「贋作だ、青が違う」と呟くと
居合わせた男が「テキサスでは売れるさ」と答えるのを
聞き逃さなかったリプリー
更にリプリーが握手を求めると「噂はかねがね」と
ヨナタンはそれを拒みます
美術商はヨナタンの失礼な態度を
彼は腕のいい額縁職人であるが
重い血液の病気(のせいで機嫌が悪い)だと教えてくれます
そしてこの一連の短い会話には
有名画家の作品だというだけで(確かめもせず)大金を払い
戦争には負けたけど、真の審美眼はドイツ人のほうにある
という皮肉が含まれているのですね
フランスから知人の殺し屋、ミノを呼びます
ミノは敵対するマフィアのボスを始末するため
足のつかない素人を探していたのです
ヨナタンに友人からの「病気が悪化したと聞いた」という手紙を届け不安を煽り
ミノは「奥さんと子どもにお金が残せる」と殺しを依頼し
パリの血液学の権威の診察を受けれるよう手配
他人のねつ造した検査結果を見せて、仕事を引き受けさせるのです
パリの地下鉄でターゲットを尾行するものの
旅や検査で疲れてしまい(笑)
途中ウトウトしたり、なかなか決行できないヨナタン
やっと人気のないエスカレーターで射殺したものの
防犯カメラに映りまくり
家に帰れば奥さんに行動を怪しまれ
さらにミノから2度目の殺しを依頼されます
彼を殺しのゲームに巻き込んだことを後悔していました
ミュンヘン発の列車内
トイレで拳銃にサイレンサーを付けているところを用心棒に見つかり
(鍵は閉めようよ 笑)格闘になると、突然リプリーが助けに来て
用心棒を殺し、次にやってきたターゲットの男も列車の扉から放り出します
ボス(サミュエル・フラー)に見つかるものの逃げ切り
家に帰ると発作を起こしてしまうヨナタン
しかしミノがマンションが爆破された
マフィアに嗅ぎつけられたと知らせに来きます
ふたりはマフィアからの襲撃を迎え撃つことにします
ふたりは殺し屋を始末し、ボスは階段から転落して死亡
(マフィアの復讐なのに人数少なすぎる問題 笑)
停まっている救急車
列車から突き落とした包帯だらけの男と、その愛人
瀕死のミノが乗っている
に死体を積んでいると
ヨナタンの妻がビートルでやってきます
救急車とビートルは人気のない浜辺に行き
リプリーが救急車を炎上させると
ヨナタンは助手席に妻を乗せ、トムを置き去りにして車を出します
走ってビートルを追うリプリー
そこでヨナタンの意識は朦朧とし
大きく車線をはずれ、車は路肩を飛び越えていきます
妻がサイドブレーキをかけて車を停止させると
ヨナタンはすでに息絶えていました
ヨナタンの「噂はかねがね」のひと言への復讐のため
リプリーが始めたお遊びは
マフィアとの血みどろの銃撃戦と
ヨナタンの死で幕を閉じたのでした
【解説】映画.COMより
ドイツの名匠ビム・ベンダースが、アメリカの作家パトリシア・ハイスミスによる小説「トム・リプリー」シリーズの第3作「アメリカの友人」を原作に描いたクライムサスペンス。贋作を売りさばいているアメリカ人の画商リプリーは、オークション会場で額縁職人のヨナタンと出会う。ヨナタンが病で余命わずかだと知ったリプリーは、彼に一度きりの殺人の仕事を紹介する。ヨナタンは多額の報酬を妻子に残すため殺人を引き受けるが……。主人公リプリーを「イージー★ライダー」のデニス・ホッパー、額縁職人ヨナタンを「ベルリン・天使の詩」のブルーノ・ガンツが演じ、ニコラス・レイ、サミュエル・フラーらベンダース監督が敬愛する映画監督たちも出演した。
1977年製作/126分/G/西ドイツ・フランス合作
原題:Der amerikanische Freund
配給:東北新社
日本初公開:1987年6月27日