チロルの挽歌(1992)

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1990年に開業された北海道芦別市のテーマパーク

「カナディアンワールド」がモデル

当時は第三セクターによる地方観光開発が盛んで

地元の人間も時代の流れに乗って盛り上がったのでしょうが

今となってはお金の無駄使いと、浅はかとしか思えない計画


ドラマとしては前編がよく作り込まれており

後編は登場人物それぞれの自分勝手な主張に

かなり”イラッ”ときます(笑)


フランスならともかく、北海道の田舎で中年男女の三角関係なんて

好奇の目で見られて陰口言われるのが現実

しかも「人の噂も75日」どころか、何年もの間

死んだ後まで言い伝えられますから

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かって炭鉱で賑わい、現在は過疎に悩む北海道納布加野敷(ぬぷかのしけ)市

再び活気を取り戻そうとテーマパーク「チロリアンワールド」の建設に力を注ぐ

市長の山縣(河原崎長一郎

そこに資本参加を証明する東京の関東電鉄から

技術部長立石(高倉健が新たな責任者として赴任してきます


街で洋品店を営む菊川(杉浦直樹

東京から立石がやって来ることを知り気が気でありません

4年半前菊川は志津江(大原麗子と駆け落ちしてこの街にやってきました

志津江は(戸籍上は今も)立石の妻だったのです

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偶然が偶然を重ね、時を待たずに立石と志津江は再会

さらに志津江の父親がやって来て、短大生の娘の亜紀までやってくる

そこに占いが得意でカメラ店を営む商店会長、橘(金子信雄

自分の持つ農地の買収を頑なに拒む半田(岡田英次が絡みます


トップ・オブ・イラッチくんは菊川くん

立石の赴任を知り逃げ隠れしてばかり

車が雪にハマり、偶然立石顔をあわせたときも何だこの偉そうな態度は!

しかも立石志津江が人で話し合うことを提案しても

どうしても立石と顔を合わせたくない

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本気で志津江が好きで一緒にいたいのなら

本来、志津江と立石に離婚してもらわないとどうにもならないのに

そういう”キチンとした決まり事”にこの男は適応できないのです

(そんな優柔不断だから、勤めていた会社からも利用されたんだよ)

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立石は立石で、仕事一徹で部下からの信頼は厚いかもしれないけど

家ではろくに口も利かず、責められれば口より先に手が出るような男

健さん=寡黙で男らしいというヒーローというより

怒鳴るし、殴るし、パチンコでストレス解消、泥酔して周りに迷惑

娘に甘く、おまけに女々しくタロットカードで恋占い(笑)

でも健さんだと、そのギャップがまた好く見えるから

やっぱりこの人の持ってるカリスマは凄い

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市長も、半田も、菊川も、志津江も、そして立石も

みんな自分に都合のいいよう、我儘ばかり

人間の裏表のない欲望と本音にむかつく

 

だけど彼らは誰ひとり悪い人間ではない

何より情に深いからそうなってしまうのです

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立石と志津江の年頃の娘が、こんな両親を罵らず反発もせず

素直で理解のある大人に育ってよかった(笑)

 

なんだかんだ折り合いをつけながら

ついに「チロリアンワールド」はオープンの日を迎え

開場ゲートの前には多くの人々が並ぶ姿がありました

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これもひとつのバブルの記録映画

でも懐かしいより、虚しい気持ちになるばかりでした



【解説】ウィキペディアより

NHK総合テレビで1992411日・18日に放送された山田太一脚本 高倉健大原麗子ダブル主演のドラマ。第29ギャラクシー賞奨励賞、前編は第32日本テレビ技術賞(録音)を受賞するなど高く評価された。

前編「再会」、後編「旅立ち」の2週連続(各回90分)で放送された。北海道芦別市(ドラマでは架空の納布加野敷市)が舞台。1991年の夏と1992年の冬に分けて撮影が行われた。高倉健のテレビドラマ出演は1977年以来。NHKドラマには初出演。