太陽の季節(1956)

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原作は石原慎太郎原作の同名小説

文壇的には反対派が多かったものの芥川賞受賞、翌年には映画化され

その後「処刑の部屋」「狂った果実」も映画化され大ヒット

太陽族」という流行語が生まれ、活字メディアより

映像メディアによって作家が有名なった最初のケース

 

太陽族」とは既成の秩序を無視して

無軌道な行動をするブルジョアの不良集団のこと

本作でも10代の高校生の飲酒、喫煙、ナンパ

処女撲滅作戦、婚前妊娠、無責任、中絶

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社会的タブーと、倫理性に欠けるテーマは非難と称賛を巻き起こし

この作品がきっかけで映画倫理管理委員会(新映倫が作られたそうです

(「太陽族映画」の影響を受けた若者が、強姦や暴行

 不健全性的行為などの事件を起こし社会問題になったため)

 

しかも石原裕次郎のデビュー作

主演の長門裕之南田洋子が結婚するきっかけなったことでも有名

南田さんめちゃくちゃ美人で、長門裕之のどこに惚れたの

って感じだけど(私なら岡田真澄を選ぶ 笑)

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名門高校のバスケ部の津川龍哉(長門裕之はボクシング部に転部し

仲間たちと金を出し合い、タバコ、酒、バクチ、女遊びに喧嘩をする日々

ある日3人の女の子をナンパし、ダンスホールに行きますが

そのなかのひとり英子(南田洋子)と意気投合します


やがて肉体関係を結び、英子は龍哉に惹かれていきますが

龍哉は英子に付きまとわれたり、仲間から冷やかされることに

嫌気がさしてきました

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ついには英子を気にいっている兄の道久(三島耕

彼女を5千円で売りつけるのです

それを知った英子は自腹で道久に5千円を金を送り返すという繰り返し

やがて龍哉は道久に2千円で英子を売り

英子からは今まで通り5千円貰おうと思いつきます

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さすがの道久も、そんなことを続けることに良心が咎め

英子がそこまでするのは、本気で龍哉のことが好きだからです

そしてもうひとつの理由がありました

英子は龍哉の子を身籠っていたのです


龍哉にふたりが海上のヨットで結ばれた日のことを語り

3ケ月になったと、「産みたい」と伝えます

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しかし龍哉はノー・リアクション

自分の気を引くための嘘だろうか

本当だとしても誰の子かわからない

相手はクラブのマスターじゃないのか


いやいや、女性は何月何日妊娠したかくらい、わかるものだよ男性諸君(笑)

しかも英子のような裕福な子女が、お金に困っているわけでもなし

男に妊娠したという嘘をついてどうする

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妊娠4ケ月目に入った英子は、何の音さたもない龍哉に

どうするのか詰め寄ります

だけど産むも産まないも好きにすればいい

龍哉はすべてを英子に丸投げ


その場で英子は中絶を決意し、女友達に病院まで送ってもらいますが

術後、腹膜炎で死んでしまったと訃報が入ります

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それでも龍哉は現実を受け入れられない

本物の葬式、本物の遺影 、親族

龍の心の声「何で死んだんだ!」


(男性)スポーツ選手の無道徳な生態は

今でもたびたびワイドショーを賑わせていますが(笑)

女性の気持ちや立場を全く考えず、映画と同じで自己中心

相手がどんなに傷ついたさえもわからない

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でもその代償はとても大きいもの

若くて有意義で賞賛された日々はすべて奪われ

どん底まで突き落とされてしまうのです


優柔不断男の描きかたは、溝口健二並みのサディズムさがありますが

映画としては、溝口作品のような傑作の香りや

石原慎太郎原作の「狂った果実(1956)インパクトはなく

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どうせなら、英子がお腹の胎児が大きくなり過ぎたことで

医者から中絶を断られ、首つりするか溺死するくらいが良い


そのほうが死んでも恨みが増すというものだし

ラストの主人公の曖昧な心情も解決されるというもの

 

オマエは一生呪われて生きるのよ



【解説】allcinema より

芥川賞を受賞した石原慎太郎の同名小説を、古川卓巳が脚色・監督した青春映画。慎太郎の実弟である石原裕次郎が本作でデビューを果たした。本作の後に公開された「処刑の部屋」「狂った果実」とあわせて「太陽族映画」と称された。
 高校生の津川竜哉はボクシングと酒と女と喧嘩に明け暮れる日々を送っていた。仲間たちと銀座に出た竜哉は武田英子と知り合い、二人は逗子にある竜哉の家で結ばれる。竜哉と英子はデートを重ね愛情を確かめ合うようになるが、英子が想いを募らせていくのと反対に、竜哉はだんだん英子のことが煩わしくなってきていた。竜哉は兄の道久に英子を五千円で売り飛ばす。英子は竜哉の子供を身ごもっていたが、竜哉に始末しろと言われてしまう。